ロンドン、ハスカー・ストリート(ロンソンの家のある場所)。
今朝のロンソンは調子が良く、鎮痛剤も消炎剤も飲まずにすんでいる。
そんな状態が今日で2日目。今も癌回復プログラムには通っていて、
奴の中では何か変化が起きている。
ロンソンが家にガスストーブを欲しいと言うので、“
Kenny ” ハイ・ストリート(ケンジントンの事か?)
のガスオフィスに行く事になった。
俺が思うに、英国から多くの人々が国外に移住していくのは、
この国のガス、電気、電話のシステムのせいじゃないだろうか。
奴らは国民の健康を危険にさらしている。奴らのやり方に、
皆心臓(とサイフ)がひっくり返り、泣かされるはめになるんだ。
「ご注文いただければお取り付けいたしますが、他の方が
先にお買い求めになってしまいますと、次の入荷までお待ち
いただきます。その場合でも、料金は全額先払いでお願い致します。
皆様ご不満をおっしゃいますが、決まりですので、私どもには
何ともいたしかねます...。」
オフィスの男は言い終わるとにっこり微笑んだが、ロンソンは
鼻を膨らませていた。奴が怒ったときはいつも鼻を膨らませる。
こうなると俺もどうしようもない。
疲れ果てて外に出た。ロンソンには、マギー(妹)に電話する
ように言った。明日だって間に合うだろう。
ジョン・プライスに会いに行くつもりだったが、ガスの一件で
すっかり疲れてしまった。
この件に関しては、実は半分も書いていない。「暖炉の形が
合いません。あれはできません。これはできません。」
ハスカー・ストリートの住人達は右往左往。まるでチャリング・
クロスだ。
ロンソンは全く痛みを感じず、珍しく夜中まで起きていた。