W0LFGANG ENGSTFELD

 on JAZZCRITIC VOL.63

ボブ・ディーゲンが参加したドイツのワンホーンで与太る愚痴るの巻
"W0LFGANG ENGSTFELD / SONGS AND BALLADS"
(GE:NABEL 4658)
Recorded May 1993,Dusseldorf
Wolfgang Engstfeld (ts)
Bob Degen(p)
Isla Eckinger(b)
Peter Weiss(ds)
1/Spring can really hang you up the most (Wolf) 6:54
2/For you (Engstfeld) 3:20
3/Ode to Sammy Davis jr. (Degen) 4:53
4/Bad girl (Eckinger) 6:39
5/Never ending nights (Engstfeld) 5:24
6/Blue ballad (Engstfeld) 5:20
7/Joy in a scene from sadness (Degen) 4:59
8/Early summer (Engstfeld) 7:37
9/Ballad (Engstfeld) 4:49
10/Parting (Degen) 2:34
11/Spring (Engstfeld) 3:04

凡庸なバラード集。しかし、何故か聴いてしまう。
やはり自作曲によって構成され、それ故に「何を表現しようか」という意志
が明確に伝わってくるからなのでしょう。

これが、無意味なスタンダードの羅列だったら飽きてしまうに違いない。
スタンダードをプレイして飽きさせないスキルというのは、一握りの天才に
しか不可能だ。その辺のアマチュア・ミュージシャンが、嬉しそうに「誰か
さん」のスタンダード解釈を得意げに、しかもヘタピーなプレイで仲間内に
聴かせているという図に出会うことがあるが、その度に金輪際ジャズを聴く
のをよそうかと考えてしまう。

いつからジャズは再生音楽に成り下がってしまったのだろう。
これじゃあ、クラシックのボンクラ共と変わらない。
日本の大手レコード会社が、海外のミュージシャンや日本人のプレイヤーの
作品を製作しているが、『何故、すべてがスタンダード大会なんだろう』と
疑問に思われたことはありませんか?

その答えは『スタンダードは売れて、オリジナルは売れない』という事に尽
きるようなのです。日本で小遣い稼ぎをしている海外のミュージシャンはビ
ジネスと割り切っていますから文句を付けても意味がないのですが、日本人
プレイヤーの情けない事。プロデューサーに言いくるめられて「とにかく、
アルバムを出したかった」という貧弱な意志しか示せない君。しかも、録音
費用など諸々持ち出しという君。CD-Rで焼いてでも自己表現を完結させよう
という気はないのかね。アケタのおっさんの爪の垢でも分けてもらってきな
さい。

日本のジャズ製作だって70年代までは、健康体だったと実感しています。し
かし、今の日本は"富樫雅彦/スピリチュアル・ネイチャー"を「情けないと
しか言えないジャズ」「気迫が完全に失われていた」「今では、誰も聴かな
い。中古屋のフュージョン・コーナーで500円でも売れない」 「ジャズはパ
ワーをなくしたら終り。そのいい教訓だ」などと、アウシュビッツはなかっ
た、南京大虐殺はなかったと同類の妄言を公にして憚らない寺島靖国(辛口
JAZZノート・講談社)のようなファシストが大手を振ってジャズの大家づら
をしているのです。プレイする側も、聴き手も、いつのまにか緊張感を無く
してしまったのでしょうか。

しかし、このディスクは、内容はともあれ、アーティストの強固な意志があ
ります。
さほど巧くないウルフガングのテナーですが、「俺の表現したい音楽は、俺
の曲でしか表現出来ないんだ。ボブ・ディーゲンの曲もいいから聴いてくれ
よ」という作品をつくりあげる上での正しい初期衝動のありかたに、心揺さ
ぶられるのです。それが、たとえ凡庸なバラード集であっても。

<MEMO>
などと愚痴っても、ガス抜きやってんのかとブーイングを受けそうだなあ。
最後に、このディスク結構いい感じです。店頭で見つけるのは無理かもしれ
ませんがLINKSからサイトへアクセスして購入することが可能です。
<4/Dec./2000>

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