VON FREEMAN

 ON JAZZCRITIC VOL.54
 
KOCH JAZZ part1

ローランド・カークの友情によって生まれたヴォン・フリーマンの名作!
"Von Freeman / Doin' It Right Now"
(US:KOC-CD-8536)
Recorded at NYC,1972
<Atlantic SD 1628>
Von Freeman(ts)
John Young(p)
Sam Jones(b)
Jimmy Cobb(ds)
1/The First Time Ever I Saw Your Face
2/White Sand
3/Lost In A Fog
4/Portrait of John Young
5/Doin' It Right Now
6/Catnap
7/Sweet And Lady
8/Brother George
Atlanticレーベルの復刻作業が複数の企業によって行われていることは、皆様
も御存知だろうと思います。
ジョン・コルトレーンやチャーリー・ミンガス、オーネット・オールマンなど
のビッグネームはRhino、 ローランド・カークやデイヴィッド・ニューマンな
どを押さえる32Jazz、脈略ありそでなさそな"2in1"復刻作業のCollectables、
そして、HDCD技術によって高音質(?)リマスターを目指すKochの4社が、そ
れぞれに棲み分けているようです。
しかし、Rhinoは、収益に貢献しないジャズから遠のいて久しく(Bethlehemの
復刻等の作業は続いている)、32JazzもMuseへとシフトを移し、Collectables
は"ドンキホーテ"的安売王「復刻」に徹しています。そのなかで、Kochだけが
復刻に対する自己原則を持った、実に生真面目な作業をコツコツと進めており
好感が持てます。
KOCH JAZZは、 KOCH INTERNATIONALという多国籍巨大ディストリビューター傘
下のジャズ部門。復刻に関しては、米ColumbiaとAtlanticの両レーベルが中心
ですが、新録にも取り組んでいます。
KOCH JAZZ を評価したいのは、歴史的な価値があるにも係わらず、「商売」に
ならないものは復刻しないという日本のレコード会社の体質とは真逆に、ビジ
ネスとは別の思考回路で過去の作品の価値を捉え直すという姿勢です。
リイッシュー・プロデュサーである Donald Elfman、Naomi Yoshii両氏に敬意
を表して、その復刻作品を紹介させていただきます。

さて、その嬉しい復刻の極みとでもいう一枚が、これ。
ヴォン・フリーマンなどと言ってもご存知ない方が多いはず。
1940年代からプレイしてきたにも係わらず、その活動をシカゴに留めていたた
め、チコ・フリーマンの父親という呼称だけで片づけられていた。
そんな彼に手を差し伸べたのがローランド・カーク。彼のプロデュースによっ
て1972年に発表された本作は、ロバータ・フラックのヒット曲を冒頭に持って
くるというローランド・カークらしいギミックがあるものの、アーシーで極太
のトーン、レコーディング時に50歳だったとは思えないハードなフレージン
グは魅力的。
そして、シカゴ人脈のなかでもジョン・ヤングの「いなたい」ピアノを聴くこ
とのできるというオマケまで付いている。

ロックでもレイド・バックしたカプリコーン・レーベルをディストリビュート
していた偉大なアトランティック。その土着性への指向と愛情が美しく開花し
た個人的にも愛聴盤の一枚。

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