LENNIE TRSTANO AND WARNE MARSH

 on JAZZCRITIC VOL.63

ウォーン・マーシュの名盤とレニー・トリスターノ貴重録音との2in1
"LENNIE TRISTANO & WARNE MARSH / INTUITION"
(US:CAPITOL JAZZ CDP 7243 8 52771 2 2)
Recorded 3 Oct.<#1-4,9,10>,11 Oct.<#5-8,11,12>1956,in LA
     4 Mar.<#13-14>,14 Mar.<#15>,16 May 1949,in NYC
Warne Marsh(ts)
Lennie Tristano(p on #13-19)
Ted Brown(ts on #1-12)
Lee Konitz(as on #13-19)
Ronnie Ball(p on #1-12)
Billy Bauer(g on #13-19)
George Tucker(b on #1-12)
Arnold Fishkin(b pn #13-19)
Jeff Morton(ds on #1-12)
Harold Granowsky(ds on #13-15)
Donzil Best(ds on #16-19)
1/Smog Eyes
2/Ear Conditioning
3/Lover Man
4/Quintessence
5/Jazz Of Two Cities
6/Dixie's Dilemma
7/Tchaikovsky's Opus #42,Third Movement
8/I Never Knew
9/Ear Conditioning(MONO MASTER)
10/Lover Man(MONO MASTER)
11/JAZZ OF TWO CITIES(MONO TAKE)
12/I NEVER Knew(MONO TAKE)
13/Wow
14/Crosscurrent
15/Yesterdays
16/Marionette
17/Sax Of A Kind
18/Intution
19/Digression

レニー・トリスターノという人は、尊敬に値する。
「音楽を楽しもうよ」というミュージシャンには煙たい存在だったらしいが
楽理的な側面を追及しながら、ストイックなまでに己を限界へと追い込んで
しまう<自虐的>なミュージシャンにとっては、神の如き存在であったとい
う。

そして、性格は当然偏屈だった。
リー・コニッツなど、一番弟子にも拘わらず、チャーリー・パーカーへ傾倒
したというだけで破門されるという有り様。師匠であるトリスターノも絶賛
し、一緒に録音まで残しているんだから、そりゃあ傾倒しようというもの。
後年、リー・コニッツの参加した音源に対して、コニッツのソロだけを削除
した支離滅裂なテープを造り、自画自賛したというから、偏屈もここまでく
ると天晴れ!だよなあ。

しかし、教えを乞う者には、来る人拒まずで、しかも安い授業料しか受け取
らなかったという高潔な人柄であり、終生貧乏暮らしを甘受したという。
メディアからスポットライトを浴びることもなかったが、彼の偉大さはジャ
ズの歴史のなかに深く刻まれている。

このディスクは、ウォーン・マーシュの"Jazz Of Two Cities(Inperial LP 
9027)"と1949年のレニー・トリスターノの伝説的なセッションを中心にカッ
プリングした作品。

前者は、幾つかの入門書に選ばれていることもあり、御存知の方もいらっし
ゃるかと思います。クール派といえども、糠に釘打つようなノンベンダラリ
とした音の塊が行き交い、「射精しきれないセックス」のような苛立ちを覚
えるか、興奮を感じるかは個人的な資質の問題。クール派の音盤としては名
作として評価されることに意義無しと言ったところでしょうか。

注目すべきは、1949年の音源です。
これは"LENNIE TRISTANO/BUDDY DEFRANCO / COOL QUIET(Capitol)"のタイト
ルで発売されていた作品からトリスターノの音源だけを集めたもの。
<13>〜<18>は変調を繰り返すトリスターノ・スタイルの典型的なサウンドな
のですが、録音当日には予定がなかった最後の2曲が問題作というか、非常
に魅力的なのです。

その日、予定していた曲を収録し終えたトリスターノは、録音テープが残っ
ていたため「テーマもキーもテンポも関係なかけんね、自由にやりなっしゃ
い」とフリー・インプロをミュージシャンに指示したのです。
慌てふためきながらも、なんとかメロディ・ラインを重ねようと悪戦苦闘す
る、まさにフリー・インプロの醍醐味が記録されているのよ。1949年だよ。
皆々様方よおう。

この時点で、こうしたアイディアを録音しようとする「意志」の力にはリス
ペクトするしかない。確かに、その成果は歴史を刻むような磁場を持ってい
ない。しかし、こうした音源を無視する奴等が多いことを俺は嘆くよ。
<28/Sep./2000>

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