Lee Konitz/Martial Solal
 on JAZZCRITIC VOL.65

幻のCampi盤CD復刻!流れ者リー・コニッツの貴重な68年ローマ録音
KONITZ-SOLAL / EUROPEAN EPISODE
(I:Campi→A CAM/CAM 498375-2)
Recorded 12 Oct.1968,Rome
Lee Konitz(as)
Martial Solal(p)
Henry Textier(b)
Danniel Humair(ds)
1/COLLAGE ON STANDARDS
2/DUET FOR SAXOPHONE AND DRUMS, AND PIANO
3/ANTHROPOLOGY (I ver)
4/LOVER MAN (II ver)
5/ROMAN BLUES (I ver)

KONITZ-SOLAL / IMPRESSIVE ROME
(I:Campi→A CAM/CAM 498376-2)
Recorded 12 Oct.1968,Rome
Lee Konitz(as)
Martial Solal(p)
Henry Textier(b)
Danniel Humair(ds)
1/ANTHROPOLOGY (II ver)
2/IMPRESSIVE ROME
3/LOVER MAN (I ver)
4/STELLA BY STARLIGHT
5/ROMAN BLUES (II ver)
リー・コニッツは売れないらしい。
その理由は、日本人が大好きな演歌的泣き節とは無縁なインプロバイザーと
してのスタンスにあるのだという。さらに、トリスターノ・スクールの一番
弟子として、常に実験精神を喪失しなかったコンセプチュアルな革新性にも
要因を求める事が出来るのだろう。

マイルスとの蜜月期やスタン・ケントン楽団のソロイストとしての活動など
を書き記すまでもなく、50年代までは常にメインストリートを歩き、アト
ランティックやヴァーブに貴重な記録を残してきたコニッツも、60年代以
降は不遇を囲っていた。メディア上に名前が刻まれない時期もあったという
から驚きだ。

そのコニッツが60年代後半からヨーロッパの複数のレーヴェルにレーコー
ディングを行うことになる。これは、彼に限ったことではなく、ジャズのマ
ーケットが極端に縮小し、その小さなパイを大衆的認知度の高いビッグネー
ムが喰い争っていた閉塞状況から、多くのアメリカ国籍を持つジャズ・ミュ
ージシャンがヨーロッパに活路を見いだしたに過ぎない。予断ながら、21
世紀を迎える現時点でも状況に変化はない。

前置きが長くなったが、コニッツがCampiに残した2作品は、独逸SABAの"Z-
0-K0-MA"や"ZO-KO-S0"と並ぶ秀逸な作品である。
マーシャル・ソラルという天才的なパウエル派ピアニストのバッキングを得
て自由自在にプレイするコニッツの歓喜のアドリヴは、ジャズという音楽の
理想的なスタイルを提示している。それは、採譜することを拒否する「瞬間
の共同体音」として完成されているということでもある。

単純なリスナーとして聴くと、面白くも可笑しくもないかもしれない。
音色やフレージングを楽しむタイプのジャズではないからだ。しかし、イン
プロヴァイズド・ミュージックとして捉え、赤心の耳を傾ければ、その価値
の大きさに驚愕することだろう。そして、チャーリー・パーカーへの憧憬を
忘れることなく、その高峰を越えようとする意志にも心揺さぶられるのだ。
<5/Nov./2000>

GENERAL INDEX
RECOMMENDS TOP