Bobby Watson

 on JAZZCRITIC VOL.68

ボビー・ワトソンのグルーヴ感溢れるベルギーでのライヴを収録した佳作。
Bobby Watson / In The Groove
(BEL:Challenge CHR 70095)
Recorded live at The Gouvy Festival,Belgium on 7 Aug.1999
Bobby Watson(as)
Dado Moroni(p)
Hein Van De Geyn(b)
Hans Van Oosterhout(ds)
1/CONFIRMATION(Charlie Parker)
2/ALL BLUES(Miles Davis)
3/THE SHADOW OF YOUR SMILE(Johnny Mandel)
4/CHEROKEE(Ray Noble)
5/BLUES FOR CLAUDE(Bobby Watson)
6/THE THEME(Miles Davis)
ボビー・ワトソンというサックス奏者は、過小に評価をされているというか
大衆的な人気を得ることのない逸材のひとり。
ジャズ・メッセンジャーズ出身の所謂エリートであり、メインストリームだ
けではなく、 29 Street Saxophone Quartetでの展開など、その才能を否定
する人は少なくない。

80年代にイタリアのREDレーベルに残した諸作は、 何れも優れた作品とし
て記憶に残っているし、その成果が注目されたことにより1988年の"No Que-
stion About It(Blue Note)"にはじまるメジャー・レーベルの活動が可能に
なったのだろう。

Blue NoteとSony MUsicにおいてワトソンは立て続けに作品を発表する。
1988年"No Question About I (Blue Note)"
1989年"The Inventor (Blue Note)"
1991年"Present Tense (Columbia)"
1992年"Tailor Made (Columbia)"
1993年"Midwest Shuffle (Columbia)"
当時の閉塞したマーケットのなかで、これだけの作品数をメジャーから発表
出来たアーティストが何人いただろう。
しかし、残念なことに何れもが商業的に成功することはなかった。

その原因は、はっきりしている。
メジャーの過剰なプロデュース主義がワトソンのテクニックだけを浮き彫り
にして、濃厚な個性を殺してしまったのだ。
Redレーベルのように、 「好きにやらせて、行き当たりばったり。うまくい
けば願ったり適ったり」的なプロダクションのほうが、ワトソンの表現者と
しての体質に合っていたのだろう。

このボビー・ワトソンの新作は、1999年ベルギーの小さな村で開催されたジ
ャズ・フェスティバルでのライヴ。
ダド・モロニと地元ミュージシャンをバックにしたワンホーン・カルテット
編成で、実にお気楽なプレイをしているのだが、意外に充実した作品となっ
ている。ストレート・アヘッド派の方でも楽しく聴くことが出来るだろう。
もちろん、 ジョン・ヒックスとのRED盤をお聴きになったことがある方には
物足りないかもしれない。というより、あなた。ダド・モロニに期待しては
いけない。

<3>など、 テーマ部だけを聴いたらヴィーナス・レコード作品かと錯覚しそ
うになるのだが、インプロ部では、アルトの鳴り具合、グルーヴ感ともにジ
ャズ的な興奮に満ちている。その他にも、チャーリー・パーカーの <1>やマ
イルズ・ディヴィスの<2>、<6>などジャズ・クラシックスと言われる名曲ば
かりを採り上げており、アマチュア・ミュージシャンがフレーズを盗むにも
最適の一枚と言っておこうか。

 <21/Mar./2001>

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