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吉平元治様より2005/10/29に行われたワークショップの感想をいただきましたので、ここに掲載します。


ランドゥーガ体験記

2005/11/7 吉平元治

 そもそもランドゥーガってナニよ?即興?といった具合で何やらまったくつかめない状況だった。もちろん事前に経験者から情報を入手したりしてたんだけど、 イマイチ理解できてないというか、自分の中に映像が見えないカンジ。

 自分が弾けるテクニックを出し尽くしたその後、ネタ切れで何もできないけど何か弾かなければならない、そしてヘンな音を出しちゃったり…そのヘンな音を求められ たりする、なんていう証言もあった。どうも話によると音程はどうでもいいらしい。っつか普通に考えると音楽ぢゃないらしい。さらに楽器ぢゃなくても全然OKっぽ い。んーむ、なんだかわからんので行ってみないとなぁ。

 しかし僕のケツは重かった。デブだし。番頭さん(先生とは別にこのイベントを主催してる人ね)から直々にお誘いを受けていたのだが、かなり躊躇しまくり。興味はあ るんだけどなんせ長時間に渡るのでつまんなかったらどうしようってのが気になってね。

 もともと僕はいわゆる音楽理論…西洋音楽理論やジャズ理論、倍音や周波数みたいな物理や数学っぽい理論やらミキシングの理論など、そういうのをいっぱい学習して きたのだ。自分にセンスがないと知った時に、そういった理論たちをよりどころにするようになったのかな。今回はそれらの理論は禁止らしい。ちなみにこれらの理論で 一番お世話になったのは、多分このランドゥーガを立ち上げた先生(=ランドゥーガ界で一番エラい人)だ。つまりその先生に教わったコトを、今回は全否定ってワケ。 いいのか?

 で、今回。ようやく予定がうまく調整できて、参加できるコトになった。一発ネタの音の出るモノを大量に持参しようとも想ったのだが、それは一発しか使えないんだ よっていうあたりまえの指摘をされたので、無難にアナログシンセをいっこ持参。電池で動くしスピーカ内臓なのでこれだけで機能する上に、自分らしさを出すツールと して最低限の音は出る。音量は小さくてもまったく問題ないらしいってのは事前に知ってたしね。

 申し込むとメールが来るのだが、僕は激しく方向音痴。なので番頭さんと待ち合わせて現地入り。先生と番頭さん、撮影係と僕の4人でまずは会場準備。普通のリハ室 に円状にイスを並べる。これで参加者さん達の迎撃体制は整った。集合時間前後に人がぞろぞろやってくる。みなさん自分の楽器を持参して、ね。声の人は手ブラだった り。

 僕は待ち合わせた4人以外、知ってる人は誰もいなかった。すげぇ緊張するわ。アキバ系の人見知り野郎がこんな大勢に囲まれた閉鎖空間にいなければならんのだ。そ りゃ緊張するってモンだわな。みなさんが自分の楽器の準備をしていたので僕も準備しようとケースから楽器を出すのだが、僕の準備はそれで終了。電池で動くので電源 は切ったまま、あとは自分っぽい音がすぐ出るようにツマミをいぢっただけ。

 音出しとかそんなのはいらないし、電子楽器なので普通の楽器より準備がカンタンにできるようになっている。僕は初心者なので準備にてこずらないように、と想って なるべくカンタンに音が出るように持ってきたのだが、それがアダとなったわ。こりゃヒマだ。みなさんが準備してる間、僕はだいぶ手持ちブタ。普段ならおとなしく してりゃいいんだけど今回初めてで緊張もしてたので、とりあえずタバコブース(室内は禁煙なので)で一服してみたりジュースを買ってみたり。

 そうこうしてるウチに全員が揃った。あたりを見回す…あれ?電子楽器って僕だけぢゃん?もしかしてなんか僕ってば場違い?なんて想ったのだが、どうもそうではな いらしい。後でわかったのだが、電子ラッパを持ってきてる人もいて、すごいプレイを展開していた。んーむ、やはり面白けりゃ何でもアリってのはホントらしい。しか しジャンベ率高すぎ。こんなに大量のジャンベって普通見ないのでわ?

 そこで先生が講義を始める。まずはランドゥーガの主旨からだ。しかし張本人の先生の説明を聴いても事前に予習してきた内容と同じだ。やっぱりつかめない。一体こ れから何が始まるんだろうか。

 先生の指導のもと、最初にやったのは挨拶だった。挨拶といっても名前と職業と何かヒトコト、なんてモンぢゃない。自分がどんな人なのかをヒトコトでアピールす る。普通に日本語でしゃべってもヒトコトで自分を表現するのは難しいってのに、これを持参した楽器でやらねばならんのだ。

 ぶびっぶびびびっなんていうTbの音が聞こえたり、鍵盤を弾かずに息の音だけでピアニカを吹いてみたり、いろんな人がいる中、僕は僕の王道ともいえるレゾナンス発信の音を出してみた。一通りみなさんが挨拶すると先生からおホメの言葉。今日のメ ンツはレベルが高い、と。しかしみんなヘンな音を出してるだけ。何がどうレベルが高いんだかまったくもってわからんわい。

 最初にヒトコトだけ、つまり単語を表現するってのをやったのだが、次は文章だ。単語を組み合わせて文章にする。あ、ちなみに順番としては発音が集まって単語に なって、単語が集まって文章になるっていうカンジね。今回は時間が短かったようなのでちょいと端折った部分ってのがあったらしい。

 各自が勝手に考える「楽器による発音、文字、文章」で音を出したらそれでOKなのだが、僕はあんまりアタマがよろしくないので「ぢゃあ普通に会話するときのその音 を無理矢理楽器でリアルタイムに出してみよう」と想った。

 たとえば「バカ」ってな単語がある。バは濁音で強めの印象。カも強いのだが濁ってないのでちょいと雅なカンジ。このイメージをそのまま手元の楽器で鳴らす。最初 はこんなだった。ただそれだと言葉と楽器の違いってのがあって、言葉では短い単語だけど音で出すなら長くしたほうがそれっぽいとか、そういうのがあった。単純な例 を出すと「象」なんてのはやっぱ鼻っぽさを強調したいのでゾ(のイメージ音)とウ(のイメージ音)の間をなめらかににゅるりと繋いでやったほうがいいとか、そんな カンジ。

 それが正しいのかどうかはわからない、と想って先生や番頭さんに聞いてみると、それが正しいのかどうかは誰にもわからない、とのコト。やっぱり面白ければいいら しい。そんなカンジでみなさんの面白い音を堪能させていただきつつ自分も文章っぽい音を出した。

 文章が組み立てられれば会話はできる。というワケで1対1の会話だ。Aさんが何か文章を音で提示し、それに応じた返答をBさんが音で返す。最初だからyes/no程度の返答でもOK。返答の結果をまわりのみなさんが予想する、といった進行。

 …非常にびっくりした。案外通じるモンなのね。yes/noの返答で、わりと多くの人が返答者の思惑通りの答えを予想したりしていた。予想が5:5の時に返答者は「お前 のいいたいコトはわかるんだけど俺ならこうする」みたいなイメージで音を出していたり。かなり正確に判別できるコトがわかった。これか!これがランドゥーガの第一 歩か!

 さて、僕の出番だ。僕のとなりには若い女性がいた。そこで「はぢめましてっ!ランドゥーガは初めてで緊張してるけどよろしくね♪」ぐらいの気持ちをめいっぱい込めて音を出した。すると彼女はなにやら不穏な音を出す。会場のyes/noジャッジではnoの支持率が高い。彼女は「いや、あの…なんつか、『そのハナシはなかったコトに して…』っていうつもりで音を出しました」とのコト。これは僕としては大笑いだった。ああ、こういうカンジね。これって会話の面白さだよね。やっぱり僕が考える音 楽ってのとは切り離して考えていいんだな。

 その後も3人での会話、5人での会話、同種や異種での会話などを楽しみつつ学習。だいぶランドゥーガのノリってのがわかってきた。子供に楽器を与えるとむやみに音 を出したがるよね。それと同じでいいんだなってコト。ただ僕らはオトナなので相手の話もちゃんと聞く、と。そういえばテキストに「音を出していい時間は人数/総時 間しかない」ってなコトが書いてあったっけ。んむんむ。

 5人での会話(この会話のコトをランドゥーガではセッションと呼んでいるらしい)では1人につき1回だけ乱入OKっていうルールがあった。全体を通して自分の出番 以外でも1回だけ音を出していいってコトね。これがさ、やっぱできないのよ。僕も一番おいしいトコを狙って音を出そうとするんだけど、そこはやはり経験者には全然 勝てない。読んでる空気の情報量が全然違うので太刀打ちできないのよ。なんとかココだっ!って狙ったトコで音を出してみたものの、自己採点では30点ぐらいかな。

 一通りいろんな組み合わせでセッションしたら最後に45分間の長時間全員セッションだ。今まででやってきた内容を考えつつ全員で音を出す。この頃になると僕もすっ かり楽しめる状態になっていたので、45分という非常に長い時間が1瞬で過ぎ去った。毎日こればっかりだとつらいけどたまにこんなイベントがあると面白いね、と いったところ。

 この後撤収して打ち上げ。やはりこんなヘンなイベントに参加する人達なので打ち上げ中の会話もどこかマニアック。自分しか知らんだろうっていうネタが普通に通じ る。僕は今回初めてだったので、自分のプレイがどうだったのかをあちこちの人に聞いてまわったりした。全体を通して「音にはまだまだ無限の可能性がある」っていう 空気を感じた。このランドゥーガではこういうカタチでそれを模索してるのだろう。非常に充実した1日だった。

最終更新 2005/11/10

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