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JAZZ LIFE 1993年6月号ジャズライフ読者参加企画

嵐導雅道場入門記

「ランドゥーガ道場」で音楽の悦びを体険!

佐藤允彦の新しい音楽世界「ランドゥーガ」を体験するワークショップ「嵐導雅道場(ランドゥーガ道場)」が、ジャズライフ主催で開催された。本誌の呼びかけに全国各地がら入門志望者が集まった。道場(日本クラウン第1スタジオ)での真剣な稽古(セッション)の後めでたく全員の入門が許可された。

 

本誌で「ランドゥーガ道場」のお知らせを掲載した後、編集部には全国からたくさんの入門希望者が殺到した。過去数回にわたり、佐藤允彦の「ランドゥーガ」を紹介してきた編集部にとってこれは大きな喜びであった。佐藤師範はこの道場のために新曲を書き下ろし、万全の準備を整えてくれた。

 
■入門心得
4月10日の道場開きに先立ち、入門志望者には佐藤師範から入門心得とも言える譜面が送付された。内容はこうだ。
【主題5音の説朋】
C‐D‐F‐G‐B♭の5音が基本
【進行譜】
以下のパートのスコア。それぞれ「順次ソロ」「集積ソロ」などの指示がキュー・ナンバーと共に記されている。
●声属:ヴォイス、ヴォーカル
●高音属:フルート、ピアニカ
●管属:トランペット、サックス、トロンボーン
●打物:パーカッション類
●アコースティック・ギター
●工レクトリック・ギター
【パート譜】
管楽器のためにBフラットとEフラットの移調譜も用意された。すべて師範の手書きである。ありがたや。
●序の譜:14パターンの音形。どれをどんな長さで演書してもよい。全体でひとつの音を響かせるための素材。
●旋の譜:4小節のメロディ。「表」と「裏」の2パートで追いかけの形になっている。
●展の譜:前に上げた5つの音の中で「旋」を変化させていく変奏の例。これをもとにインプロヴァイズしていく。
●支の譜:管楽器のためのリズム・パターン。ソロのバックでのリフ。これも「表」「裏」の2パートがある。3小節の繰り返し。
●拍の譜:ギター、ベース、ピアニ力、パーカッションのためのリズム譜。平打ちパターンとキメのパターンがあるが、演奏中はどちらにいってもよい。
●どの譜もオグターヴの移動は自由。

参加楽器はサックス、トランぺットからヴォイス、篠笛、リコーダ、ディジャリドゥまで幅広い。パーカッションは一人1セットのみ、電気楽器間係は一人ライン一本のみという条件付きだ。ベースが3人いても、ギターが6本あっても「ランドゥーガ」コンセプトは変わらない。師範は今までカタカナで書いていた「ランドゥーガ」を、今同「嵐導雅」と表記した。ランドゥーガとは嵐を雅に導くことだったのだ(?)。

さて道場たが、まず最初は佐藤師範からの講義である。「ランドゥーガ」に対する考え方や、演奏進行のキメごとなど、師範の音楽論を直接聞けるチャンスなどめったにあるものではない。音楽演奏の基本的構成を3次元グラフて説いてくださった。ああ、ありがたや。そして2班に分かれスタジオにてセッション。打ち物の人数が少ないため、待機中の班から有志が灰皿、トライアングルなとで参加することになった。

電気楽器はアンプは使用せず、直接ダイレクト・ボックスにシールドを接続する。モニターはへッドホンかイヤホン。全員がそれらをつけてのセッションとなった。各班パートごとに簡単な通しリハの後、レコーディング。チューニングは厳密には行なわれていない。「違っていたらそれはそれでおもしろい」と師範は語る。エンジニアの「テープ回ってます」の声に緊張が走る。師範はその緊張をほぐすべくジョークをとばしてくれたりする。ありがたや。そしてマルチトラックによる録音。なんという賛沢だろうか。場面転換はすべて師範のキューで動くので、全員の視線はスタジオ中央の師範から離れない。

「序」の全体の響きから始まり、混沌の中から「旋」に移り、いつしがそれが「展」に展開されていく、サックス・セクションが「支」のリフを吹き始め、それにのってアトリブが順次回される。各パートのソロに移り、全員にソロ・スペースが与えられる。

キューにより音楽がどんどん次の局面に移っていく。そして「集積」ソロ。こんなに大人数のコレクティウ・インプロヴィゼイションは師範も経験したことがないという。・混沌の美しさ。モニターがヘットホンなのでちょっとつらい面もあったが、両班ともに終わった時は全員が満面の笑顔で、音楽を作り出す喜びと一体感を感じることができたようだ。

そして試聴会。稽古の無事終了を祝っての乾杯の後、大音量で演奏を試聴。「ランドゥーガ」を体験した後の耳には、もうソロのフレイズがどうのこうのという感覚はない。全員でひとつの響きを作り出すことの喜びを理解しているから、響きに身をゆだねている。帥範もビールを片手に「おもしろい」を連発し、改めて「ランドゥーガ」のおもしろさを認識したようだった。

 

そして認定証の援与。幸いひとりの脱落者もなく全員が師範から「偏奏術参級」に認定していだだくことができた。師範からひとりひとりに認定証が手渡された。なんという喜び。当然「次は弐級」との向上心かムクムクと出てくるわけだが、すかさず師範は「すぐまた次をやろう」というありがだいお言葉。

 

折しも4月26日には六本木ピットインでランドウーガのバイマンスリー・ライヴが開催される。師範からは4月26日のピットインでは今回の曲をやるからみんな楽器を持っでおいでよ。みんなでやろう!」というさらにありがだいお言葉。全員が大いに盛り上がっだのは言うまてもない。4月26日のライヴがどうなったかは次号でお伝えしよう。

 

 

次回「嵐導雅道場」開催は未定だが、参級の人は弐級へのステップ・アップ、これからの人は参級への認定を目指し、今のうちから『KAN‐NABI/佐藤允彦』(日本クラウン)を聴いたり、ライヴに足を運んで準備していて欲しい。灰皿パーカッションでも、どんな楽器でも「嵐導雅道場」は受け入れてくれる。音楽を楽しむ心さえあれば誰でも楽しめるのだ。ゆくゆくは免許皆伝され「嵐導雅○○派」か現われることを師範は期待しているという。

佐藤允彦帥範は語る

「おもしろかった。一度にこれだけの人数をコンダクトするのはぼくにとってはまったく初めての経験だった。出演者はプロではないし、インプロヴィゼイションの経験もみんな達うんだろうけど、そんなことはまったく気にならなかった。おもしろさは決して技術的じゃないところにあるんだね。ぼく自身にもいい体験だった。今回の道場で、ランドゥーガとはまた違ったインプロヴィゼイションの方法論の糸口が見えてきましたね。次回も必ずやります!
 次やる時はギターとベースの扱い方を変えてみようとも思ってる。枠を取り払ってひとつの楽器としてみるのもいいかもしれない。ぼくも楽しみにしています」

  【楽器編成】
─A班─
ソプラノ・サックス:1
アルト・サックス:3
テナー・サックス:3
トランペット:1
トロンボーン:1
シンセサイザー:2
エレクトリック・ギター:6
工レクトリック・ベース:3
ピアニカ:1
篠笛:1EWl:1
ヴォイス:1
シンセ・バッド:1
ピッコロ・スネア:1
鳴りものいろいろ:B班の人たち多数 
  【楽器編成】
─B班─
ソプラノ・サックス:2
アルト・サックス:3
テナー・サックス:3
トランペット:2
トロンボーン:1
シンセサイザー:1
工レクトリック・ギター:6
アコースティック・ギター:2
エレクトリック・べース:2
アコーステイック・べース:1
ピアニカ:1
リコーダー:1
ヴォイス:笛・ヴォイス・カズー:1
マリンバ・ヴォイス・カズー:1
スネア:1
ディジェリドゥ:1
コンガ:1
タムタム:1
鳴りものいろいろ:A斑の人たち多数
   
(撮影:富坂一人)
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