John Lennon / Mind Games <1973> |
おすすめ度★★★★ |
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NYの一流ミュージシャンを集めて製作した73年発表のJohnの4作目。 前作「Sometime In New York City」が余りに政治色の強い作品で全く売れなかった為か、本人も「政治家からミュージシャンに戻る為に作ったアルバム」と認めている通り、Johnの作品の中でも飛び切りミュージシャン指数の高い作品となっている。 内容はAOR開花前夜のブルーアイドソウルの肌触りやレゲェ、トロピカルミュージックのリズムをも取り入れた非常に意欲的な作品で、そのどれもがとてもポップに響いている点が何とも素晴らしく、最近個人的にはJohnの作品ではダントツのお気に入りだ。 彼のミュージシャンとしてのセンスと先見性が久々に爆発していると言っていいでしょう。 しかしその中でもアーティスチックに自らの主張を唄に委ね、タイトル曲の1や非常にYokoらしい6といったパフォーマンスも収録している部分は見逃せない。(僕は敢えて見逃す) 冒頭で紹介したように参加しているミュージシャンにも注目で、特に随所で素晴らしい音色を奏でるBassのGoden Edwardsの貢献度は抜群。他にもPaulのRed Rose Speedwayにも参加しているギターのDave Spinozzaなどが終始安定したサウンドを提供している。 Yokoのコメントでは「PaulとRingoの作品とクラッシュして注目されなかったのが残念」とあるがPaulの73年と言えばJohnもその素晴らしさを素直に褒めたBand On The Run。そりゃ〜相手が悪かった。Pual&Wingsの全盛期突入の影に本作が隠れてしまったのは歴史上の不幸か。。。彼のミュージシャンとしての才能が満点に含まれた作品だっただけに非常に悔やまれるところだ。 しかし実は僕自身も高校生の頃から聴いていたこのアルバムの印象は非常に地味なモノで、近年リマスター盤が登場したので何気にCDを買ってみたら物凄く良いから驚いた。 音もかなり改善されているらしいが、前に何を聞いていたのか自分で信じられないくらいだった。以前に軽く触れていたアルバムに改めて向かい合える、こういうリィシュー作業はこれからも確実に進めていって欲しいです。 ちなみにこの作品を発表した頃のJohnは当時のニクソン大統領から「危険人物」とされ国外退去を要求されたり元Beatlesとの訴訟問題などに頭を悩ませており、そのフラストレーションが仇となったかYokoとの関係にも亀裂が発生する結果となってしまう。 アルバム発表後、YokoはJohnとの別居を要求。独身となったJohnはL.Aの夜を飲み歩くヘベレケ生活を始める事となる。
オープニングのMind Gamesは自らのImagineをより具体的に表現したかのようなメッセージソングで本作からの唯一のシングルカットとなった作品。浮遊感を漂わすストリングのアレンジが印象的で、その後ろで奏でられるレゲェ的リズムにも注目。 冒頭からいきなりGodenのベースが美しいラインを奏でる。このセッションのストリング導入前のラフバージョンとか、聴いてみたい。凄くRockっぽい骨太ポップだと思うな。印象的だけどちょっとジャマなストリングが憎い。 タイトル通りのタイトなブギーナンバーに仕上げたTight A$はJohnの独特の粘っこい歌い回しが見事にハマった作品。Dave Spinozzaのスワンピーなソロもカッコイイ。この曲なんて前のミックスだと団子状態で何が何だか全然分からなかった。 謝罪ソングのAisumasen (I'm Sorry)はしっとりした仕上がり。途中から美しい歌声を上げだすGodonのベースラインはココでも光っている。本当に素晴らしい演奏。 黒っぽいコーラスと可愛らしいJohnのハイトーンヴォーカルの共演が楽しめるOne Days (At A Time)も素晴らしい出来上がり。サビの部分でコーラスとユニオンになる部分は非常にポップ。珍しくYokoのコーラスも自然に溶け込んでおり、丁寧に作られた名曲と言える。 終始鳴り響くスライドギターの後ろで密かに全体を包み込むレゲェ的リズムがとても心地良いBring On The Lucie (Freda Peeple)もお気に入りで、ココでも断然素晴らしいGordonのベースラインから耳が離れない。実はこのベースラインが聴こえてなかったのか?とか思ってみたりして。前のミックス。 「メンバーにレゲェを説明するのに苦労した」とはJohnの弁だが、ClaptonのI Shot The Sherffも翌74年にヒットする状況だった事を考えると確かにまだミュージシャンの間でもマニアックなジャンルだったというのは納得できる。 Johnの新しい音楽への先見の素晴らしさを物語るエピソードだ。 本アルバムのハイライトは断然Intutionで、トロピカルリズムに乗って終始ご機嫌に展開する極上ポップソングに仕上がっている。「俺の直感ってスげぇんだよねー」とノンキに歌い上げるそのヴォーカルもアルバム中最高の出来だし、やはりココでもリズム隊の素晴らしさが際立つ。大好き! こちらも丁寧な作りこみがされているOut The Blueも好印象。途中盛り上げるElvis風女性コーラス隊も転がるピアノも素晴らしい。Johnの力強いヴォーカルも○です。 終始楽し気に歌われるOnly Peopleもポップなナンバー。前曲に続いてフューチャーされた女性コーラスと飾り気の無いJohnのヴォーカル、ポップなバックメンバーの演奏振りとなかなかの秀作です。 おセンチなI Know (I Know)もじっくり作り込まれた作品。ここでも丁寧なバック演奏が光まくる。やはりココでも僕の耳はGodonのベースに行くな、素晴らしい。Paulバリの歌うベースライン。本作は彼のベースラインに尽きるかもしれない。 美しいラヴソングYou Are Hereも名曲。トロピカルともボサノヴァとも感じられるアレンジに美しいアコギのカッティングと控え目な女性コーラスが花を添える。間奏のギターの音色も素晴らしい。名曲ですねぇ、ウットリですよ。 リマスター盤にはHomeデモを数曲収録している。既にこの段階で最終形が見えているかのようなJohnの素晴らしい演奏が聴ける貴重モノとなっている。
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1. Mind Games 〜Bonus Tracks〜
ヌートピア♪ 世界平和を唱えた二人がこの後別居。
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(2004.7.17更新)
順路はこちら(工事中)
John & Yoko / Double Fantcyへ
〜関連アーティスト/アルバムへのリンク〜
Paul McCartney / Red Rose Speedway
Dave Spinozzaが参加したPaulの作品。こちらでも素晴らしいソロが聴けます
Paul McCartney / Band On The Run
Johnの秀作のヒット阻んだPaulの歴史的名作!