「ライヴのそのままの流れで、
レコーディングに入れる環境が作れた」
――ついにアルバムのレコーディングに突入したわけだけど、現段階(取材日は3月29日)ではどこまで終わったの?
慎一郎 え〜っと、リズム録りも終わってて、ギターが今日で終わるとこ。あと、同期ものとかを後でちょっと入れるかな? っていう。それから歌入れ、と。
――結局、気になるレコーディング・メンバーは、どういう編成になってるの?
慎一郎 2月のライヴの時のままで、DEAN(B./AION)さんと愁(Dr./ex. AION)さん。ギターは俺と、ライヴで弾いたISAOにも弾いてもらってる。
――ギターを弾いた割合っていうのは?
慎一郎 8:2って感じ。
――8がISAOくん?
慎一郎 違うよ、基本的に俺(笑)。ISAOには、ちょこっと弾いてもらったの。
――それはそれは。申し訳ありませんでした(笑)。
慎一郎 (笑)。でもね、これが予想を覆してさ、昨日の夜中3時ぐらいにISAOが来て、ギター入れをやったんだけど仕事が早いんだよね。1時間あったら1曲終わっちゃうぐらいでさ。出来もすごくいいのよ。だから、全部やらせりゃよかったなって思ったりして(笑)。こんなに大変な思いをするなら。
――ホント、大変だよね。アルバム分のギターを弾いて、歌うとなると。
慎一郎 大変だった。今回初めてだから、そこまでやるのって。松田樹利亜のプロデュースをした時も、ベース弾いてギター弾いて……ってやってたけどさ。でも、(自分で)歌も歌ってギターを弾いて、全部やるっていうのはね。それで客観的に見て、プロデュースしなきゃいけないわけじゃん? 自分のことだから特に。キてるね〜、労力的に。
──そりゃそうでしょう(笑)。歌詞も書かないといけないし、えらい労力だね。
慎一郎 まぁ、それでも初めてだから気持ちいいよ。あと、ハッキリしてるじゃない? もう全部、自分が責任取ってジャッジするわけだから、良くなろうが悪くなろうが自分のもんだから、誰のせいにもできないし。だから、そういう風にするのを望んでたからね、ずっと……。
──レコーディング・メンバーの話に戻るけど、どうしてライヴのメンバーでレコーディングに入ろうって思ったの?
慎一郎 もちろん、流れっていうのもすごくあるんだけどさ。あと、ライヴのそのままの流れでレコーディングに入れる環境が作れたからっていうのも大きい。あの短期間の中でね。正直、あのリズム隊(DEANと愁)にはやられたからね、俺。比較論とかではまったくない別のところで、単純に“あぁ、すげぇ”って思っちゃったから。ただ、今、俺がやってる音楽で、DEANさんと愁さんはすごく楽しんでやってくれてるし、一番ピッタリくるなっていうのがあったから。
──いやぁ、それはよかったよかった。“代えたい”って言われたらどうしようか? って思ってたし(笑)。
慎一郎 アハハハ(笑)。いやいや、すごい人達ですよ、実際。紹介してくれてありがとうございます。
──いい流れでよかったよ。それで、収録曲に関してはどういう感じで決めたの?
慎一郎 ライヴでやった曲が4〜5曲あるのかな? あとは書き下ろしじゃないけど、やってない曲を。
──シングル「LOST」の曲も入れないといけないんでしょ?
慎一郎 うん、2曲入れることにしてさ。入れるのは「LOST」と「RED GANG」。
──激しめの曲だね?
慎一郎 そう。当初はね、最低限ミックスし直して収録しようと思ってたんだけど……。
──録り直しちゃった?(笑)
慎一郎 (ニッコリと頷きながら)今のラインナップでやったほうが100%カッコいいから。ホントにそうだよ。前よりもカッコよくなるなって思ったから、録り直したんだし。そうしたら、ホントにカッコよくなったから。
──2000年11月に聴かせてくれたデモでは「FLY AWAY」(DEAL時代の曲)も、リアレンジしたりもしてたけど、それは入ってたりする?
慎一郎 いや。……ん? でも、音源にはなってないけど、DEALをやってる頃に作った曲は1曲入ってる……かな?(笑) 収録されるのは全部で11曲……、いや、10.5って感じ(※注:最終的に全12曲収録と決定)。
──なんだか中途ハンパな表現だね。
慎一郎 (笑)。曲なんだけど、すぐ終わっちゃうんだよね、30秒ぐらいで(笑)。
──それって、デモにも入ってた「Get up!」のこと?
慎一郎 そうそう。あれを入れることにした。
──レコーディングは、どんな感じで進んでるの?
慎一郎 まだ仮歌が入ってない曲とかもあってさ、今、エンジニアの人はメロディもわからないから、“これってどういう曲なんだろう?”っていう状態でやってる曲もあるのね。オケだけあって、“ここにギター入れま〜す”とか言ってやってたり(笑)。
──けっこうラフな感じで進んでるんだね(笑)。ま、慎一郎くんの頭の中にすべて入ってる、と。
慎一郎 そういうこと(笑)。でも、リハはやったけどね、1回だけだけどさ(笑)。
「(アルバムは)すげぇいい(笑)。
ハードだけど、全体的にすごくポップだよ」
──今はギター録りの段階で語ってもらうのも何だけど、仕上がりの予想としてはどんな感じ?
慎一郎 すげぇいい(笑)。ハードだけど、う〜ん……、全体的にすごくポップだよ。ポップっていう言葉の捕らえ方も価値観も人それぞれだけどさ。
──俺の中での捕らえ方っていうのは、本来の意味であるポピュラリティ(大衆性)かな。一般的に浸透してる、明暗の明というイメージではなく。
慎一郎 そうだね。でも、大衆を意識してるわけじゃないんだよね、ぜんぜん。素直にポンッと聴いて、いいメロディだったりとか。
──歌詞やタイトルなんかは?
慎一郎 これから。レコーディングにちょっと時間の空きが出るから、そこで歌詞も詰めたりするから。タイトルも今の時点では、ほとんど仮だからさ。もっと煮詰めないと……。
──歌詞も煮詰め直すの? ……っていうとヘンだけどさ(笑)。「情魂」とかもデモの時と変わってなかったし……。
慎一郎 「情魂」とかは変わってないけどね。今回も詰めるって言っても、語尾とかさ、その程度かもしれないけど。一回、ちゃんと書きだしてみて……。今回はもう全部、すごくストイックにやりたいんだよね。パッケージとしてさ。もちろん、ライヴも好きだから、ライヴを想定して……、ライヴでやれることを前提に、自然に作ってるけど、アルバムとしていいものを……ね?
──作品としてキッチリ聴けるものを作りたい、と?
慎一郎 そう。世の中には、ライヴに興味がなくてもCDを買う人っていっぱいいるじゃない? その人達にも納得してもらいたいんだよね。車の中で聴くのに最高なミュージックとして聴かせたいしさ。かたや、ライヴに行って楽しむためにCDを聴く人達にも、ライヴの熱さも想像させたいしね。ま、俺の中で、カラオケはその中の対象に入ってないことは確かだけどね(笑)。
──ロックであることは一貫してるっていうのは持ちつつで?
慎一郎 うん。だけど、すごいポップ。下世話なポップじゃないよ。下心見え見えなポップじゃなくて、もうホントにそのまま出してるからさ。だから、ホント計算してない。計算してないのが計算、みたいなテーマだね、今回は。
──その下世話なポップっていうのは、一番嫌うパターンだもんね?
慎一郎 (キッパリと)嫌いだね。でも、わかんないじゃん? 人によっては、俺が自然に出したものがすごいメジャー感のある曲でね……、例えば「INSIDE
OF MIND」みたいなさ。ああいうのがさ、“なんか下心見えるな”って言う人もいるだろうから、わかんないけど。でも、ホント、ウソつかないで“やりたいことはこれです”っていうポップさが出てると思う。
──個人的には、ライヴとかでも“泣き”があると、ヴァラエティ豊かになっていいかなぁとも思ったんだけど。
慎一郎 あぁ、バランスって意味でもね。でも今回は、意識的にそれはちょっと排除した。どうしてか? っていうとね、今回、アルバムを全部自分でやってさ、曲も決めれたし、やりたい曲をやってるでしょ? それで、バラード……、ホントに“泣き”じゃないけどさ、そういったニュアンスのものもすごい得意だったりするから、そういったものを入れるかどうかすっごい最後の最後まで迷ってたのね。でも、今回は疾走感重視っていうかさ、あんまり湿っぽいことは今回はいいやって。無理やりでもその部分は押し殺して、ポジティヴに攻撃的に……。
──もうガッツンガッツン行ってる、と?(笑)
慎一郎 そう(笑)。ガッツリ行こうよっていう気持ちでいるの。それはやっぱり、今の自分の状況もあるし。今は毎日レコーディングだから、まだやることがあって気は晴れてるけど、けっこう悩むこともあるわけよ。いろいろとムシャクシャしたりとかさ。けっこう感情の波も激しいんだけど、そういう部分はもう、今は忘れたくてね。やっぱりデビュー・アルバムだからさ、何度目かの(笑)。だから、これからもっと明るく……、あっけらかんにっていうんじゃないけど、もっと前しか向かないでいきたいなっていうのがあって、そういう曲は今回ハズした。そういや、ライヴでも約束したとおり、6月にはお届けできるね。今回こそは(苦笑)。
──先のヴィジョンっていうのは見えてる?
慎一郎 アルバム作って、ライヴをやりたいね。地方も……行きたいけどね。そこはバンドじゃないジレンマが大きいね。ホントは、俺の気持ち的には地方はもちろん絶対行きたいし、自分の車で行きたいけどさ。いかんせん、他のメンバーの(スケジュール調整の)こととか、宿泊とかさ、いろいろあるわけじゃない? そこをどう折り合いつけられるかによるだろうし、まだそれは見えないけど……。やっぱりね、ツアーのことはつねに考えてはいるよ。俺の中ではね、アルバムを出すじゃん? で、ライヴをやって、そこで終わりじゃないわけよ、今回は。今まで、そういう区切り区切りの考えがあって、アルバム作りました。ツアーを何箇所か回る。そこでいちおう完結されてきたんだよね。自分の中でだけど。それで次はどうしようか? っていう感じでずっとやってきたんだけどさ、今回は何だかわかんないんだけど、アルバム出して何本かライヴをやって、そこでそのアルバムが終わりでもなければライヴも終わりではないって思えてるから。逆に、例えばライヴが2〜3本しかできなかったとしても、次にまた何も予期せぬところでさ、ライヴをやったりイベントをやったりしていきたいって思ってる。だから、アルバムのためのライヴだけじゃないよっていうところがすごいある。言い方のニュアンスがすごく難しいんだけどさ、もっと長いタームで先を見て、地に足付けてやっていこう、と。
──音源にしたって、CRAZE時代の楽曲も5曲ある。DEAL時代も4曲あって、ライヴでやってたのはそれだけじゃないでしょ? それに今回の曲もある。慎一郎くんとして考えれば、どこから何が出てきてもおかしくないっていう感じはあるけどね。
慎一郎 そうなんだよね。ま、昔のソロ時代の曲はさすがにやらないだろうけど(苦笑)。
「今作ってる今度のアルバムが、
俺の本当のデビューだと思ってるから」
──前のことになるんだけど、2月の久々のライヴのことについても聞きたいんだけど。最初はちょっと硬かったんじゃない?
慎一郎 うん。オーディエンスもね。正直なところ、ステージに立ってみて、何かしらを感じられなかったらね、“これはやっても意味がないんじゃないかな?”とかさ、そのライヴの前にすごくいろいろ考えてて。さんざん今まで、取材とかでも言ってきたけども、実際にステージに立ってさ、2年ぶりぐらいだったわけじゃない? それで“俺、ダメかも”って、もし思っちゃったら、もうその時点でライヴ止めて帰るか、ぐらいな意識で挑んだんだよね。そんなの初めてだったけど。でもね、体力的なところの問題もすごく大きかったね(苦笑)。
──かなりジムに通ってたのにねぇ(笑)。
慎一郎 そうなのよ(笑)。事前にジムとか通って、ボクシングとかやってたんだけど、やっぱり違うね。体力の使いどころが。いかんせん、それだけブランクがあるからさ、ライヴってどれだけクタクタになるものかも自分でわかってるじゃない? だから、体力をつけるべく、ジムとか通ったりしたけど、何かジムで鍛えたところとは違うところが疲れるんだよね。それはやってる最中にすごく感じた。例えば、首だったりとか、背中だったりとかさ(苦笑)。あと、モニターに足をかける足だったり。“あっ! なんだ、俺、ヤバいぞ”って思ったところは、2曲目からもうずっと(爆笑)。“えっ? こんな壮絶な場に、俺って今まで立ってたんだ”っていうのは再認識した。
──やっぱりライヴやってないとダメだよ。
慎一郎 そう。だから、よく、ヴォーカリストに限らずさ、タバコは止めたほうがいいとかね。喉に悪いからってさ、そういうことっていろいろあるじゃない?
──定説みたいなものね。
慎一郎 うん。もう関係ないね。やっぱり普通にコンスタントにライヴをやって、鍛えられていくところがあるし。あとはカンとかもあるし。それは感じたね。モニターに足かけるじゃない? かけらんなくなってくるのよ、途中から。かけても、コンッと転びそうになったりとか。あと、何かこらえ切れずに頭を振るじゃない? そしたらさ、グルグル回るんだよね、世界が(笑)。んで、倒れないように必死になったりとか。それはやっぱりすごいブランクを感じたね。だから、今まではある部分で自信があって、ステージに立ったら前と同じようにカッコよくできるっていう自信があったけど、あの時のライヴをやって、すごい謙虚になった(笑)。頑張んなきゃ、みたいな(苦笑)。
──久しぶりに人前に出るっていうことに対してはどうだった?
慎一郎 いやぁ、すごいビビったよ。お客さんの顔を見るまではね。でも、男の子とか多くてね、嬉しかったよ。
──DEALの曲(「Tropical Drug」)は、みんなが知っててビックリしたけど(笑)。
慎一郎 ね!? 何でだろうね? DEALの時は(あそこにいた人達は)ほとんどライヴに来てないよ。でも、嬉しいよね、それって。俺がDEALでやってたことは間違ってなかったって思えるからさ。
──何らかの形では音を入手してたのかなぁ?
慎一郎 そうなのかな? 俺でさえもCDは持ってないのに(爆笑)。話は脱線しちゃうけどさ、そういう部分では性格的にどうでもよくなっちゃうのかね? (音源を)産み落とした瞬間に、次に向いちゃう。あんまり自分のものを愛聴しないほうだしさ。レコーディングでは何百回も聴くじゃない? それが出来上がった直後は嬉しくて、ずっと聴いてるんだけど……。
──いつの間にか、自分のCDがなくなってしまうんでしょ?(笑) 家の中でさ。
慎一郎 そうなんだよね(笑)。それで、すぐに曲を作っちゃうんだよ、また次の。で、すぐやりたくなっちゃう。俺、自分でもたいしたもんだなって思うんだけど、こんだけレコーディングしてて忙しいのに、合間に曲を作っちゃって(爆笑)。3曲、すごいカッコいいのができたのね。それでアルバムに入れらんないかな? って思って相談したんだけど、さすがにダメって言われた。今からじゃ、そりゃそうだよね(笑)。
──ま、その曲達もいずれ日の目を見せてあげてください(笑)。
慎一郎 今はけっこう創作きぼーんで(笑)。さっきのヴィジョンの話じゃないけど、年内にもう一枚アルバムを出したいね。それはミニ・アルバムでもしょうがないけど。まぁ、その前に今作ってるアルバムだね。それを聴けば、納得してもらえると思うよ。もちろん、今まで聴いてきてくれている人達には当たり前に聴いてほしいじゃん? 今現在の気持ちとしてはさ、もっと広いところを見てるよ。例えば、恵比寿GUILTYでライヴをやって、もちろんそれまではGUILTYを見てるわけだけどさ、気持ちはもっと別のところへ行ってたのね。ここに集まってくれる人達をもっともっと増やしていきたいなって思った。もっともっと規模を大きくして。自分も大きくなりたいしさ、みんなもさ、胸を張って“俺はBLOOD、鈴木慎一郎のファンだぜ”って言えるようにしたいよね、やっぱり。だから、新しくファンになってライヴに来てくれるような人達も大事だし、今、ライヴに来てくれる人達も大事なわけじゃん?
──来る者は拒まずでね。それで、みんなで一緒にいい眺め見ようぜ! みたいな。
慎一郎 うん。デビューという意味では新人だから(笑)。ちょっと納得行かない感じのシングル・デビューだったけど、それはそれで。今作ってる今度のアルバムが、俺の本当のデビューだって思ってるから。ここまで自分で歌うっていうことに対して、自分で責任持ってやったことって、今までで初めてだしさ。あと、けっこう今までと違った一面もあるかもしれないね。自然と歌い方も微妙に変わってきてるし。だから、反応も楽しみだよ。
■ end ■
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