マイクの種類と録音結果

同じ音を同じ条件で、ダイナミック型、エレクトレットコンデンサー型、直流バイアス式コンデンサー型の3種類のマイクを使って、理想的に録音するとします。
マイクのすぐ右側の図表は、マイクが送り出す信号すなわち、マイクのコードを流れる信号の様子と考えてください。図表はややオーバーに表記していますが、私なりに多種類のマイクを使ってみて得られた平均的な感触を反映しています。


録音する場合には、それぞれのマイクから出力される信号について、音の一番大きな部分が録音可能な最大レベルになるよう録音レベルを調節します。

グラフの間のボリュームフェーダーの絵の通り、出力の低いダイナミック型、エレクトレットコンデンサー型では高い増幅率(録音レベルを高く設定する状態)、出力の大きな直流バイアス式コンデンサー型ではさほど録音レベルを上げることなく(低い増幅率)、信号は最大レベルに達します。

いずれの場合も録音レベル調整の結果、信号は理想的なレベル(音の一番大きな部分が録音可能な最大レベル)に引き上げられますが、マイクアンプ(録音レベル調整回路)は固有のノイズを持っており、増幅率を上げるとそのノイズは顕著に増加します。従って度合いの多少はありますがノイズが付加される(ダイナミックレンジが狭まる)ということについては変わりません。

つまりダイナミックマイクは出力が低く、アンプのノイズも加わって結果として低レベルの音声が雑音に埋もれてしまいます。この条件では、いいことはひとつもありません。エレクトレットコンデンサー型マイクは、ダイナミック型に比べ心持ちましかなという程度です。

直流バイアス式コンデンサー型は、もともと出力が大きいことを幸に、マイクアンプの増幅率も低く、マイクアンプのノイズが付加される度合いも少ないため、結果として損失なく録音されます。

したがって、良い音で、クリヤーに録るために最も効果的なのは、何よりもマイクの出力を上げ、ノイズを減らすことにほかなりません。ダイナミック型のマイクから直流バイアス式コンデンサー型マイクに変えると、音は劇的に情報量を増し、プロの録音になった!感じがします。

結論としては、レコーダーにMDのSPモード(相当)以上の録再品質を確保できているならば、あとは音の入り口、マイクの性能を良くすることが最も如実に録音結果に反映する。ということです。

●まとめ
出力 ノイズ 感度 おおざっぱな、音質概要 扱い 値段
ダイナミック型 エレクトレットコンデンサー型にくらべると低い(ものが多い) 標準的 低い ボーカル用.あまり繊細でない大音量の収録に向く。 頑丈、いきおい、手荒に扱われる。 1000円台から。プロ用でも1万円くらい。高価なものは少ない。
エレクトレットコンデンサー型 標準的。(機種/仕様により幅が有る) 標準的 標準的 ほぼ万能。繊細だか、直流バイアス式に比べると微小レベルの音が拾えてない感じ。 電池、電子回路がある分繊細か。電池の入れっぱなしによる液漏れ事故が懸念される。 1000円台から5万円くらいまでが中心。DPAは特別に高価。
直流バイアス式コンデンサー型 高い。より口径の大きいものの方が高い(ような気がする) 少ない 高い 力強く繊細、滑らか。微小レベルの情報が豊富。低音は耳で感じるよりも高レベルで収録される感じ。 高温多湿に注意。精密光学機器、カメラ、フィルム相当。 最近では1万円しないものもある。高価なものは天井なし

一般的な生録に適しているのはエレクトレットコンデンサー型ですが、直流バイアス式コンデンサー型で収録できる微小レベルの音を聞いてしまうと、格段の差を感じます。音質よりも扱いがお手軽なことを選ぶか、音質を追求するかが問われるところです。

●直流バイアス式コンデンサーマイクの使用に関する注意点。
1)低音のノイズーありがちなのは、エアコンの風、人の通過、ドアの開閉、床の振動(冷蔵庫や人の歩行)、自動車や鉄道(地下鉄)の通過音、ボイラー、コンプレッサー等の音です。これらはいづれも録音している現場では気付きにくいものですが、マイクは確実に拾っています。
大きな音はしていないのに、レベルメーターが(比較的緩い動きで)大きく振れるような場合、エアコン等の風等が疑われます。
2)微小レベルのノイズー高感度であるがために、他のマイクでの収録ではノイズに埋もれて気が付かなかったような低レベルのノイズが顕在化します。上記の低音のノイズのうち、ボイラーのような常時鳴っているものは、現場でのモニターでも特に気付きにくいようです。
3)ヘッドホンでのモニターがあてにならない場合ー直流バイアス式コンデンサー型に限らないことですが、録音現場では実際に空間で鳴っている音と、モニターしているヘッドホンから聞こえている音が判然としないことがあります。低音が大音量で鳴っている場合にほとんど区別がつきません。特に直流バイアス式コンデンサー型は低い音をよく拾うので注意が必要です。
音響的に遮断されている別室で録音するか、周りが静かになった時にプレイバックして確認する必要があります。