室内残響。=楽器などで発した音波が空間に残る現象。ホールトーン、エコー、リバーブとも言います。
音波は1秒で約340m進むことが知られていますが、ホールで残響2秒というのは、680m進むまでに吸収されて消えると言えます。
これを一般的な住宅に置き換えると、正対する壁の間が6mあるとして56往復余りで消えるということで、音波は壁に113回撥ね返えり、
一般的な天井高2.7mだと250回も反射する計算です。
したがって壁は音をほぼ完全に反射する素材でなければなりません。
しかし、狭い部屋ではやかましくなって演奏できないという問題があります。
これは、壁が近いため、壁に反射して届く音にタイムラグが少なく、ほとんど減衰していないからです。
これを防いで良好な残響を得るための対策をここで考えてみます。
反射を減らすためには吸音が考えられますが、やりすぎると(デッド)響きがなくなってしまいますので、必要最小限に止めなければなりません。
それはどの程度で、どの位置にすれば良いのでしょうか、、。
音の性質に、光と同じように壁に当たるのと同じ角度で反射するというのがあります。
ということは、壁に鏡を貼り付けて楽器(音源)が見える場所から音が返ってきていると考えることができます。
これを、3DCGを使ってシミュレーションしてみます。
6面鏡で一辺6mの部屋にピアノを置いて、演奏者の位置で捕らえた広角画像です。(画像をクリックで拡大)
a
b
c
d
e
f
g
h
すべての方向から音が返ってくることが良く理解できると思います。一番大きな像は10mほどしか離れていません。
像が小さくなるに従い20m・30m〜〜と遠いところからの音に等しくなります。
20・30m程度はホールで聞く直接音に相当します。
これら大きい像からの音は近すぎるので遮る必要があることがわかります。
ここで、パネルを必要最小限使って大きな像を遮ってみます。
より実際に近づくように天井高を下げています。
i
j
k
l
m
n
o
p
画像を見て分かるとおり、この程度のパネル量で残響の調整ができてしまうことが分かります。
鏡に映る像は大部分パネルになりますから、すべて吸音パネルにするとデッド気味ではないかと考えられます。
今度は、ほとんどのパネルを鏡ににして、傾けて反射させた画像です。
q
r
s
t
u
v
w
x
角度の調整は微妙で、あちらを映らなくすれば別の方向が映るという具合で完全ではありません。
一箇所どんな角度にしても像が写ってしまうので、ここは膨らんだ形のパネルにしています。
ジグザクあるいは波状でもOKです。こうすると、像が極端に小さくなる→音が小さくなります。
これらが残響のチューニングというわけです。
このように、3DCGを使えば、ご自分の部屋と同形状のモデルで、音響パネルの適切な場所を見つけることができます。
上の画像は、ピアノ奏者に聞こえる残響だけをシミュレートしたもので、他の楽器や声楽の人などが加わる場合は、
さらに別の視点からも検証する必要があります。
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さらに、ホールでの残響を視覚化してみます。
y
奥行き20m、高さ10m程度の不等辺5角形とします。
まず観客席側からのイメージです。
z
A
B
C
次に奏者の位置からのイメージです。
D
E
F
G
実は、ここまでの画像は見やすくするために、鏡に反射する回数を10回までにしてあったのですが、
手持ちの3DCGソフトの能力いっぱい32回までをシミュレートすると以下のようなイメージになります。
(鏡の性能も100%反射するように設定しますので、視覚的にはさらに非現実的になります。)
上のホールで、最大20mなので、32回反射すれば640m、1.88秒までの残響音の視覚化ができます。
このように、平行な面が無い空間だと、像が全体に均等に散らばることがわかります。
すりゴマの粒のような最も小さな点は640m離れた楽器から発した音というわけです。
H
Fとほぼ同じアングル
I
Aとほぼ同じアングル
部屋(6x6x4m)の場合。32回反射で186m、0.54秒までの残響音を視覚化。
J
K
L
M
このように、残響の性質が全く異なることがわかります。
一般的な大きさの部屋では、壁をギザギザや波状にした方が良さそうです。