理科実験を楽しむ会

 山梨高教組 第56次教研集会        09年11月15日

             

 

  小林さんの<動物園へ行ってきました>も,井上さんの<クマムシ>も,優れたリポートでした.県内の教師にはもちろんのこと,全国教研を通して,より多くの人たちに, 知って欲しい内容でした. 

 

  小林リポートは, 生徒各人が,担当した種の固体識別ができるようになってから観察した, 動物の行動記録です.動物の小さいふるまい,例えば, 耳の動きなどから, 動物の何がわかるのか,動物の仲間同士の情報が,どのような<しぐさ>によってなされているのか,など, 人間の言葉に相当する「動物言語」を翻訳しようというダイナミックな試みです. 

 

 井上さんのクマムシは,私も曾て採集しようとして, できなかった種だったので,その採集の仕方を知り得て,個人的には嬉しいリポートでした.生徒たちが, その産卵を検鏡下に発見するなど,学問的にも貴重な学習活動であったと思われます. 

 

  自然科学はもっぱらものから学ぶ, というのが私の考え方です.

 子どもが実験をしながら,そこで,未知の事柄に出合うことは,自然科学者が新事実を発見するのと同じで,子どもにとっては新発見になります.科学は論文からではなく,ものから学ぶのです.未知の分野には論文などはないのですから.

 受験生たちは,もっぱら教科書や「先生」から学んで,試験の場で吐き出した後は,外連味なく捨て去ってしまいます.自分の頭で,ではなく,他人(ヒト)の頭で,考える(他人が述べたことを覚える)ことが, 身についてしまっていて, これが学習だと,思いこんでいるようです.

 

 千葉高での学習の一齣を紹介します. コンデンサーを一定の電流で充電・放電させる<定電流装置>(電流の立ち上がり部分などがないように作られている)での実験です.

 例えば, コンデンサーを,5mAの電流で充電させるのに8秒かかったとします. これをそのまま放電するには8秒かかります. 放電電流を4mAに替えると10秒かかります. 2mAで充電するには20, そして,それを10mAで放電すると…. 次には, 容量の異ったコンデンサーに替えて, 同じように実験します.

 こんなことで, ゆっくり遊んだ(遊ぶということは主体になるということ)後での,生徒の感想は

  "電気ってなんて義理堅いんでしょう. なんどやっても同じ結果がでてきます"  "コンデンサーには電気がたまっているという実感がもてました" ということになります.

  「世界」には二つの実体があります.質量と電荷です.この実験では,電荷が存在するということを,教師から教えられるのではなく,自分で遊びながら実感し,"電流[アンペア]×時間[] で電気の量を決めてもよさそうだ" ということを, 操作しながら学びとるのです.電気量の単位を[クーロン]とするということは, 教科書に書かれています.

 生徒ー特に受験生ーたちには, 試験に課される計算問題のバックグラウンドが見えるようになるだけでなく,物理量は人間が決めたものだということが理解でき,更に,ものの世界は, 単純で,「義理堅」く,美しいものだ,という自然観が身につく縁(ヨスガ)になること,を期待しながら, 理科の授業はなされるのです.

 

 宮島先生の<生徒たちの追跡調査>は,このような意味で,私にとっては興味深い話でした."自然科学はものから学び, 社会科学はひとから学ぶ" というのが,私の世界観の基礎だからです.    

 

  このところ, 毎年, 実験工作をしています.

  今回は, プラスティックのストローを使って, 高電圧の発生装置を作りました.玉振り発電機といいます.

  中学生以上ならば,50分の授業で十分作れて, 材料費も格安です. 静電誘導を応用した原理も簡単で, 容易に1万ボルト級の電圧を発生させられるこの装置は, A・D・ムーアの傑作です. 生徒の一人一人に作らせて, 遊ばせて, ものから学ぶということを実感させたいものです.
 
 
 
  これは、教研終了後、高教組に提出した、感想です。
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掲示板 石井信也
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