高校生の物理 電磁気 (5)ローレンツ力  E-139 No328   2011年10月20日(木)
 
ローレンツ力
先生 ローレンツ力を習ったんだね。
和美 磁場の中で電流が力を受けるんです。水平に置いたU型磁石の口を右にして、磁極の下をN極、上をS極とすると、磁場Bは下から上へ向きます。その間に導線を夾んで、電流を手前から向こうへ流すと、導線には磁石の外側、つまり右側、へ向いた力がはたらいて、口の方へ動きます。
一平 左手の親指、人差し指、中指の3本をを、互いに直角になるように伸ばします。人指し指が磁場B、中指が電流Iとすると、この導線は親指の方向・向きに力を受けます。これがフレミングの左手の法則です。
和美 中指を電流I、人指し指を磁場B、親指を力Fとして、この関係をIBFとか、電・磁・力とか言って覚えます。力の関する3つの量が、互いに直交しているって、驚きですよね。
一平 このローレンツ力の大きさは、磁場の強さB、電流の大きさI、磁場に存在する導線の長さlに比例するので、その強さFは F=lIBとなります。
先生 はっきりさせておくことがある。磁場はベクトル量で磁石のNからSに向いていて、その強さは磁束の密度で表し磁束密度Bという。lはBに垂直な導線の長さだ。
一平 電流というのは+の電荷の流れのことだから、ロレンツ力は+電荷がBから力を受けているんですね。
先生 プラス電荷が移動する向きを電流の向きと決めたので, そういうことになるがね。−の電荷だってローレンツ力は受けるよ。ただし、−の電荷はイオンになっているので、移動できないから電流にはなれない。それより、ローレンツ力は“走っている電荷が力を受ける”と言わなければいけない。
一平 ああ、そうでした。
先生 先ほど、ローレンツ力の大きさを F=lIB としたが、これをミクロに見たらどうなるだろう。
和美 F∝B は、いいでしょう。I の代わりに電気量Qを考えるとします。そうするとl Iの代わりに vQ ですね。 lI=(l÷t)・(I×t)=v・Q だから…
先生 そうそう、それで…
一平 F=lIB=vQB 電荷qを持つ1個の粒子、例えばプラス電子が受ける力は F∝vqB ですね。
 
 ローレンツ電流
先生 では、ここでクイズだ。今のは、電池で電流を流してその電流が力を受けたのだが、次は、電池を外して検流計を入れ、導線を、それが力を受けた向きに、つまり右手に、手で動かすと、どうなるかな。
和美 回路に電流が流れるんでしょ。
先生 そうだけど、どちらの向きか、というのがクイズだ。
和美 もちろん、ローレンツ力を受けた時の電流と同じ向きです。そっくり同じだもの。
一平 先生が問題を出すんだから、反対かもしれないぞ。
和美 問題をはっきりさせておきましょう。 まづ、初めの状況です。
 水平に置いたU型磁石の開いた方が右側で、磁極は下がN極で、Bは下から上を向いています。電流は手前から向こうへ流しました。そうすると導線が受けるローレンツ力は右向きです。
一平 では、バトンタッチして、問題の方です。導線を右に動かすんですね。Bが上向きであることに変わりはありません。電流は電荷の運動ですから、導線を右へ動かすと電荷も一緒に右に動くので、この「電流」は右向きです。とすると左手を出してチェックすると、導線の電荷にはたらく力はこちら向き、つまり、電流は手前向きで…アレッ
和美 電流は逆になるんだ。
先生 先ほどのは、電流で運動を起こすローレンツ力で、モーターの原理、今度のは、運動で電流を起こす、つまり電磁誘導で、発電の原理だ。この電流をローレンツ電流とでも言っておこうか。フレミング則でいえば、<モーター即運動>は左手、<ダイナモ即電流>は右手、と昔は教えたものだ。メカニカルにね。                     
和美 ローレンツ力は左手、ローレンツ電流は右手としましょう。右手を出して ― 左手ではありませんよ!― 人指し指をBの上向き、親指を導線に力Fが動く向き、つまり、右向きにすると、電流 I は中指のこちら向きです。
一平 右手と左手はちょうど逆になるんだね。IとFが入れ替わっているから…
 
 磁場と電場
先生 vで走っている電荷Qには F=QvB のローレンツ力がはたらくということだったが、この式を F=(Qv)B   と書いたらどうなるかな?
一平 (Qv)は走っている電荷、つまり電流で、それが磁場Bから力を受けたことになります。これはローレンツ力です。
先生 では、f=Q(vB)としたらどうだろう?
和美 (vB) は走っている磁場で、それが電荷Qに力を及ぼしていることになります。
一平 この電荷は止まっているのでしょう。止まっている電荷QがBから力を受けるなんてことあるのかな?
和美 ああ、そうだった!
先生 へへ…。止まっている電気が力を受けるのは何だっけね。
一平 電場Eです。
和美 走った電荷が電流なら、走った磁場は磁流とか…になってしまって…。
一平 つまり、vで走っている磁場Bは電場Eに変身したっていうことですね。
先生 Bがvで右向き走ると、手前向きのEが発生する。Eの向きは静止している電荷qが力を受ける向きで、これで電流が起きることになる。
 
 電荷の正負
和美 ちょっと待ってください。導線を動かして+の電荷が力を受けますね。だけど、−の電荷も力を受けるでしょ?反対向きに…
先生 それはそうさ。しかし、この場合のマイナスの電荷はマイナス・イオンで、金属では固定されていて動けないから、導線の中の電流にはならない。
一平 実際に動けるのは電子で、実際にはマイナスに荷電しているのだから、電気の符号は全部が逆になるのですね。
先生 摩擦電気で、ガラスに溜まった電気を+、樹脂に溜まった電気を−としたのはフランクリン以来なので、初学者にとっては電気の世界が煩わしくなったね。電流になる電気はプラスです。
和美 初めから荷電粒子は+の電子だと考えればいいんでしょ。そうすると、原子の本体は−イオンになります。
一平 頭の中を整理するのに時間がかかりそうだな。BもEも見えないんだから。
和美 上向きのBが右に走ると、つまり、vBになると、手前向きのEに変貌する!マジックだ!
先生 この件に関してはもう一度やることにしようかね。

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