高校生の物理 電磁気 (2)静電気  E-136   No325   2011年10月13日(木)
 
一平 摩擦電気の実験は冬にやるものなんですね。
先生 冬は乾燥しているからね。日本の湿度は高いので他のシーズンでは失敗することがあるんだ。
和美 検電器の実験って面白いですね。箔がピコピコ開いたり閉じたりして。
先生 じゃあ、やってみるか。
和美 私がやります。えーと。用意された塩ビの棒をティッシュで擦ってから検電器の電極に近づけると箔は開き、遠ざけると箔が閉じます。何回やってもそうなります。
先生 箔を開きっぱなしにするにはどうするかな。
和美 こすった塩ビ棒を検電器の極板にこすりつければいいでしょ。ではやってみますよ。あれ? あんまりよく開かないなー。
一平 へー。今度は僕の番だ。先ず、極板に手を触れて電気を地球に逃がします。これをアースするっていうんですね。それから、擦った塩ビの棒を検電器の極板に近づけす。
和美 何だ!それじゃあ、私のと同じじゃない。
一平 ここからが違うんだよ。そのままの状態で極板をアースすると…箔は閉じます。
和美 箔を開かせるのよ。
一平 まあ、あわてないで。アースして終わったら塩ビ棒を遠ざけると…
和美 あれ!箔が開いた。そして、開きっぱなしになっている!どうなっているのかしら?
先生 一平先生に説明してもらおう。
一平 えへん。塩ビの棒をチィッシュで擦ると、塩ビ棒が紙から電子を奪って、塩ビ棒は−に帯電します。
和美 帯電って、電気を持つっていうことね。
一平 その通りです。えへん。次に−に帯電した塩ビ棒を極板に近づけると、極板の電子は押し退けられて箔に移動し、その反発力で箔は開きます。箔は−に帯電し、極板は+に帯電し、その両方の電気の量は同じです。ご質問はございませんか。
和美 今のところありません。
一平 この状態で、極板の円盤を指で触ってアースすると、箔に溜まっていた−が地球に逃げて、…
和美 質問、質問、+の所を指で触ったのに、どうして遠いところの−が逃げるの?
一平 円盤の+は塩ビ棒の−に束縛されていて動けないんだ。
和美 ヘーッ!束縛さてれいるの、見たいもんだわ。
先生 +と−は1対1で電気力線でつながっているんだ。
和美 紐付きになっているわけ?
一平 和チャン、今日はなぜかひっかかってくるね。塩ビ棒を離すと円盤の+は箔の方へも移動して反発力で箔は開きます。終わり。
和美 アースされた−はどこへ行くの?
一平 アースさ。地球へ広がるんです。地球全体に広がって!
先生 静電気は高圧なので、地球上の殆ど総てのものが導体なのだ。人体も、机も、床も、塩ビ棒に電子を奪われたティッシュのところへ戻ったと考えてもいい。
和美 ティッシュは手元にあってもアースなんですね。
先生 そうそう。人体がアースされているからね。では次に、この実験で+に帯電したティッシュの方でやったらどうかな。
一平 多分、同じですよ。全体の+と−が反対になるだけで…。やってみましょうか。アレッ!どうもならないや。
先生 紙に溜まった+の電気は手から身体を通してアースされちゃったのだ。
和美 ちょっと待ってよ。それじゃ、さっきの塩ビ棒を使った実験のときには、紙の+は箔の−に引かれて検電器のビンのところへきているんじゃない? 
先生 このガラスびんは導体みたいなものだから、+の電気をアースしたというのは、接ビン―アースのことだよ―したことになるんだね。それを確かめる方法を考えてみよう。
和美 接地しても接ビンされないようにしたらどうかしら。
一平 そうだね。それじゃあ、ビンと机の間に絶縁体を入れればいいや。
和美 じゃ、発泡スチロールのシートの上に検電器を乗せたら。
一平 そうしよう。それでは実験すると…。今度は和チャンやってごらんよ。
和美 ハイハイ。極板をアースして箔を閉じさせる。塩ビ棒をティッシュで擦ってから、それを床に置く。塩ビ棒を極板に近づけると、“開けーゴマ” で箔が開く。極板をアースすると箔は閉じる。箔の−は布の+と一緒になって0になってしまう。塩ビ棒を遠ざけると箔は再び開く。
先生 +と−が一緒になって、なくなることを中和するというね。
一平 箔の開き方が少ないようだけど。
和美 やり方が悪かったかしら。
一平 いやいや、これでビンに指を触れれば、アースされることになって、さっきと同じことになるんじゃないかな。
和美 アア、そうだ。検電器を発泡スチロールの板に乗せた意味がなくなるもんね。じゃあ、やるわよ。ワーッ!箔がピンと開いた。思った通りだ!!
先生 それで、極板をアースしてごらん。
和美 それでは、箔が閉じますね。
一平 そりゃ、そうですよ。アースされてたんだもの。
先生 まあ、やってごらんよ。
和美 じゃあ、触りますよ。ほら!あれっ!!ちょっと下がったけど、箔は開きっぱなしだ!
一平 そんなバカな!
先生 ケンキョに。けんきょに。実験事実の重さを重要視して…。自然のオキテには従わなければナリマセン。
一平 もう一度、慎重にやってみよう。シートを敷かない場合と敷いた場合とではどこが違ったんだろう。
和美 敷かないときは、極板をアースしたときには、塩ビ棒は極板のそばにあった。そして、ビンもアースされていたんですよね。敷いたときには、まず、極板がアースされ、後からビンがアースされた。
一平 アッ、違うよ。極板がアースされたときには、塩ビ棒は極板のそばにあったが、ビンをアースしたときには、塩ビ棒は遠ざけられていたんだよ。
和美 そうすると、どう違うんだろう。
一平 シートを敷いていないときには、箔の+はビンに−だけを引きつけているけど、敷いているときには、ビンの+は逃げ所がなかったのだ。ビンに指を触れた時に、始めて地球に逃げた。つまり、実際にアースされたんだ。
和美 中途半端に箔が開いていたのは、この+が邪魔をしていたのね。
一平 ビンの+がなくなっちゃうと、ビンの−の効果が大きくなって極板の+をも、引きつけて箔の開きを大きくさせた。
和美 いよいよ、次の段階の極板のアースだよ。
一平 シートを敷いていないときには、極板のアースはビンと同じことなので、+と−は中和するけど、敷いてあるときには、極板を接地してもビンは接地されていない。ビンの−に紐つきになった箔の+が残ることになる。
和美 はじめの塩ビ棒の役割を、ここではビンが受け持ったという訳だ。
先生 よくわかりました。接地されていない状態のものを「浮いている」ということにしよう。机の上の検電器の場合には、浮いているのは電極・箔の系だが、発泡スチロールに検電器を乗せた場合には、ビンと極板・箔の二つが別々に浮いていることになる。
一平 浮いている、っていうのは、アースから絶縁されているっていう意味ですね。
和美 こうみてくると+と−は別々にあっても、+と−の電気は、1対1で繋がっていると考えると分かりやすいですね。                            
先生 +と−が電気力線でつながっている、というのはそういうことだね。
一平 コンデンサーが一番考えやすい。極板には同量の+と−の電荷があるので、それらの一つ一つが電気力線で結ばれているとみるjと解りやすい。
和美 検電器の場合も、+と−の電荷を線で結んでみると、状況がわかります。検電器も一種のコンデンサーですね。電荷を考えるときには、電気力線も考えることね。
一平 +と−が1対1でつながっているのなら、宇宙の+と−の数は同じでないといけない。
和美 でも、ちょうど同じなんて変ね。といういよりも、感動しちゃうね。
一平 電気のないところから+と−が分かれて生まれたとしか考えられない。
和美 しかも、すごくたくさんの電子が、みんな同じ電気量をもっているなんて、どこかにオリジナル電子があって、それが、コピーされたとでもしなければ考えにくいわね。
先生 なるほど、なるほど。
和美 はじめにやった、検電器の極板のそばに、−に帯電した塩ビ棒を持ってくるのも一種のコピーですね。
先生 このやり方を何というか知っているかな。
和美 静電誘導でしょ。
先生 静電誘導でできる電気の量が同じであるのを確かめる実験がある。これだがね。ジュースの缶の上蓋を取り去ったものを、検電の電極の上に両面テープでくっつけてある。
ここにあるウールにティッシュと同じ役割をさせる。
一平 やり方、解りますよ!缶にウールを入れておいて、その中に塩ビ棒を差し込んで、ウールでしごいてから抜き出すと、箔は+で開く。塩ビ棒には−の電気がくっついている。棒を再びウールの中に挿し込むと箔は閉じる。
先生 そう、そう。 これで、ウールと塩ビ棒の電気の量が同じであることがわかる。
和美 ウールも缶も箔も一緒に浮いているので、ウールの電気で箔が開くのね。
一平 両面接着テープは絶縁体だと思っていたのに…
先生 前にも触れたが、静電気は高圧なので、たいがいのものは電気を通してしまう。静電気的に絶縁体のものは、塩ビ、スチロール、ゴム、などで、それだって水気や湯気があったら導体になってしまう。
一平 擦って電気が溜まるのは、こんなもので、できているんですね。これ以外のものは、摩擦で発電しても、その電荷はアースされてしまう。
和美 じゃあ、電気が逃げないようにすれば、どんなものにも電気が起きるんですか。
先生 そうだよ。人間だって発泡スチロールの台の上に乗ってウールで擦れば発電する。
和美 発泡スチロールの薄い板でミカンを夾んでおいて、布か紙で擦れば、ミカンでも発電しますか。
先生 当然。だが、静電誘導を利用した電気盆を応用した方が分かりやすい。電気盆を使ったことがあるかな。
一平 ありますよ。金属板に絶縁体の柄がついている。発泡スチロールの盆をウールかティッシュで擦って、その上に金属板を乗せてアースする。絶縁体の柄を持って持ち上げると、金属板に電気が溜まっている。
先生 たまっている電気は?
和美 発泡スチロールは−で帯電するので、静電誘導なら盆の電気は+です。でも、盆と金属板はくっついているんだから、金属へ盆の電気が移って来るじゃないですか。そうすれば−です。
一平 +になったり−になったりするの?
先生 金属板に溜まっている電気は+なんだよ。だからね。発泡スチロール板と金属板はくっつているようにみえるが、接触しているところは少ないんだね。それに、発泡スチロールは絶縁体だから、電気が流れ出ないんだ。さあ、ミカンをこの装置で帯電させるにはどうする。
和美 ミカンを絶縁体で夾んで、この盆に乗せてアースする。あとは離すだけ。これは簡単です。
先生 どんなものでも、みんなこの方式でやれる。
一平 絶縁体ではできませんネ。
先生 そうだった。でも、大概のものが導体になるというのは、少しは自由電子があるということらしい。だから、大概のもので静電誘導が起きるといってもよい。この電気でネオンランプや蛍光灯をつけることができるんだよ。
和美 このやり方だと、元になる電気が少しでもあれば、あとはいくらでも電気がコピーできて、電力事情は忽ち解消してしまいそうです。
先生 そうはいかない。金属板を盆から引き離すのに、エネルギーが要るんだよ。この二つのものは引き合っているんだから。その引力に逆らって仕事をしなければならない。それが、電気を起こすということだから。
和美 そうですよね。ものごとは、そんなにうまくはいかないもんで…
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