理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 
高校生の物理 熱と温度 (3)熱膨張・三態変化 T-14 No320 2011年9月22日(木)
 
先生 では、次に熱膨張へいこうか。
一平 温度が上がれば、ものは伸びるっていうこと。
和美 ものは原子でできていて、原子の熱運動が激しくなるんだから、原子と原子の隙間が増えて全体が伸びるのは当然です。
一平 電車の線路の継ぎ目は、熱膨張のための対策なんだよね。
先生 でも、近頃は、あのガタガタといわない区間があるのを知っているかな。
一平 そういわれてみればそうかな?
先生 ロングレールを使って、継ぎ目のところを工夫して継いであるんだ。
和美 あら、知らなかった。
先生 長いレールは3kmもあるんだ。夏と冬のレールの長さの差は3〜4cmしかないというんだ。
一平 へーッ。そんなことってあるんだ。
先生 熱学的なレールの伸びが、力学的な力で縮められているんじゃないのかな。
一平 力関係なんだ。
先生 熱膨張を利用したものを何か知っているかな。
和美 ワインの栓なんかが抜けない時に、ビンを温めると抜けること、とか…
一平 鉄筋コンクリートは、鉄とコンクリートの熱膨張が同じくらいだからできるんですってね。
和美 膨張の大きさを熱膨張率で表すんですね。
一平 熱膨張率は固体より液体の方が大きいんでしょ。
先生 お酒をお燗するとき、とっくりの口からこぼれそうになるんだ。
和美 それで、液体の熱膨張を利用して温度計が作られんですね。
先生 そういうことだね。気体の熱膨張率はもっと大きいんだ。大体、固体、液体、固体の熱膨張率は10倍ぐらいずつ違う。
一平 夏、地表の空気が熱せられて上昇気流になって、雲ができたりするんでしょ。
先生  熱膨張するっていうことは、その膨張を利用して外へ仕事ができるということが大切なんだ。
和美 熱エネルギーが仕事をするんですね。
先生 次は三態変化だ。三態は知っているね。
一平 固体、液体、気体が三態です。
和美 ものを熱していくと、固体、液体、気体の順に状態が変わることでしょ。
先生 では、三態変化をする物質を言ってもらおう。
和美 水とパラジクローベンゼン。
先生 その他には?
和美 中学ではこの二つが出てきたんですよ。
一平 他にはチョット思いつかないナー。
先生 どんなものでもみんな、三態変化するんだよ。
和美 えっ?本当!…、砂糖の気体ってありますか。
先生 夜店で綿飴を作るのを見たことあるかな?
和美 綿飴の甘いにおいがします。
先生 においがしたということは、その物質が気体になった、ということだろ。
和美 ああ、そうですね。固体のザラメが、ザラメの気体になったのだ!
一平 砂糖が気体になるんだ。食塩は液体になりますか。
先生 容易に液体になるさ。やってみようか。試験管に少量の食塩を入れてバーナーで強熱すると…ほらね。
一平 わっ、水みたい。もっと熱すると、沸騰するんですか。
和美 いくら熱しても沸かないのね。
一平 でも、気体になっで出ているかもしれない。
和美 においを嗅いでみれば解るね。何のにおいもしない。でも、匂いがない物質だってあるんでしょ。
先生 匂いがあるかないかは、受け止める側の感覚によるんじゃないかな。食塩をザルに入れて樹にさげておくと、動物が寄ってくると、アフリカではいうけどね。
一平 野生の動物は塩の香を感じるのかな。
和美 生理的に、動物には食塩が必要なんでしょ。海のない内陸では、食塩を得るのは大変なんですね。
先生 食塩の匂いがわかるように進化した動物が、生き残ったのかもしれないし。
和美 すべてのものに匂いがあるって、動物にとっては物資の情報源になりますね。
一平 食塩も三態変化するんだ。
先生 食塩の融点は800℃、沸点は1413℃だ。
和美 先生はさっき、すべての物質が三態変化するっていいましたが、澱粉は焦げてしまって、液体にも気体にもなれませんネ。
先生 分子がばらばらになる前に、分子が壊れてしまう場合がある。そのような場合でも、常温で放置しておけば、分子が飛び出しているに違いない、と思えるようになることが大切だ。 それから、加熱したら分解してしまう分子であることは、分子と分子の結合が弱いということなので、三態変化で、ものの性質が調べられるということにもなる。
一平 澱粉のように、例外のものがあってもいいんですね。
和美 それでいいんじゃ、気が楽だ。例外有ーり、っていうことで。
先生 “すべてのものは何々だ” という表現、ここで言えば “すべてのものに匂いがある” という言い方、が大切なのだ。法則というものは、例外があったら、その例外の窓から次の世界が見えるということを、知っておきたいね。
     

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