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掲示板 石井信也
理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 
高校生の物理  運動の種類(3) 円運動 M-111 No306  2011年8月4日(木)
 
先生 糸の先におもりをつけて…
和美 先生、その実験は前回やりましたよ。
先生 いやいや、今日は単振子ではない。糸でおもりをぐるぐる回すのだ。
一平 小さいハンマー投げみたいだ。
先生 おもりの運動を表現してごらん。
和美 おもりは同じ速さで、円運動をしています。
先生 それを等速円運動という。それから…
一平 それで終わりです。
先生 いやまだある。
和美 ああ、糸があった。糸は…
先生 気がつけばいいが、これは、今回は省略しておく。
和美 思い出させておいて、省略するの?
先生 気がつかないのはミスだよ。それで、円運動をしているおもりにはたらいている力を言ってごらん。
和美 糸がおもりを引く力が、おもりが飛び出そうとする遠心力とつりあって、おもりは飛んで行かない。
先生 なるほど。円運動をする物体にをその中心へ引く力を向心力という。一平くんはどう表現するのかな。
一平 和チャンのでいいんでしょ。言い直すと、おもりにはたらく向心力と遠心力がつりあって、中心から同じ距離に止まっている。
先生 おもりの速度について言ってごらん。
和美 糸を離せば、円の接線方向へ飛んで行ってしまうので、速度ベクトルは糸と直角方向で、おもりの運動方向と一致します。
一平 ?! イケネーッ。そうすると、速度がだんだん変わっていくんだから、おもりにはたらく力がつりあっていることはないんだ。
和美 “いつまでたっても遠くへ行かない”っていうのは、長い時間についての平均的なことをいっているので、それではいけないのでした。
一平 運動を記述するときには、刻々について言わなければいけないんでした。
先生 その通りだ。
一平 短い時間についての速度の差というのは…
和美 図で考えるのでしょ。
一平 短い時間の速度の差を描けば、その方向・向きは向心力の方向・向きと一致しているね。
和美 だけどやっぱり変だな。
先生 どこにひっかかっているんだろう。
和美 向心力の方向が、円運動の半径方向だとしたら、おもりは円の中心へ落ちていってしまうでしょう。
先生 止まっている物体に力がはたらくときには、物体はその方向・向きに運動が起きて移動していくけど、別の方向に速度を持っていたんだから、そうはいかない。
一平 上へ投げ上げられた物体は、真上に向かって運動していても、落ち続けているんだった。円運動をしていうる物体は、円の中心に近づかないが、円の中心に向かって落ちているんだ。
和美 そうか。中心向きの力がはたらいているので、近づかないとすると、力がはたらかないときには、離れて行ってしまうんだ。
先生 第一、円運動をしている物体が、飛び去ろうとする遠心力というのは、何から物体にはたらいているんだろう。力を加えているものの名前を言うのが、力を言うときのエチケットだった筈だ。
和美 おもりを外に引っぱるものは何もないんだ。よく使われる遠心力っていう言葉を、つい使ってしまいましたが…
先生 遠心力なんていう力は存在しない。ニュートン力学ではネ。
一平  ? 世間では広く通用するけど…
先生 いい加減に妥協していると、物理でなくなっちゃうぞ!
一平 はいはい。でも、力は難しいですね。
和美 納得するには時間がかかりそうです。
先生 それでは、円運動の例として人工衛星について考えてみよう。人工衛星を見たことがあるかな。
一平 よく見ますよ。日が暮れたばかりの空の中心辺りをじっと見ていると、飛んでいくのが見えますね。
先生 その人工衛星の向心力は何がその役割を果たしていることになるかな。
和美 万有引力でしょ。
先生 そうだね。重力と言ってもいい。地球の重力に引かれて落ちているので、衛星の中は無重力的だ。
一平 無重力<的>というのは?
先生 人工衛星は重力で円運動をしているので、そこには重力がはたらいている。しかし、衛星中のすべての物体は、勿論、乗船している飛行士も、みんな一緒に落ち続けているので、重力は感じられない、つまり、無重力的なのだ。
一平 ニュートンはリンゴが落ちてくるのに、月はどうして落ちてこないんだろう、と考えたと言う逸話を聞いたことがあったが、月もリンゴと同じように落ちていたことに気がついたんですね。
和美 人工衛星もリンゴのように落ちているんだ!
先生 逆に、そのことが、万有引力の発見につながったのだね。
一平 ただものでは、ないね。  ニュートンさんは!
先生 それでは、ニュートンを記念して、リンゴでお茶にしようかね。