理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 
高校生の物理 運動(5)  加速度      M-108    No303     2011年7月28日(木)
 
和美  この前に学習したことをいいます。物質の本姓は運動です。静止は速さ 0 の運動と考えます。
一平 ほとんどのものが、申し合わせたように静止しているのは、特別な地球上でのことで、これは、摩擦力という特別な力のなせる技です。
先生 よくできました。それでは、その速さが変わるのはどういう時だと思う?
一平 物体同士が衝突したときです。
先生 万有引力で引き合うときもあるし、電磁気的な力を及ぼし合う場合もある。これらも広い意味で「衝突」なのだ。ものとものとは接触しなくても、衝突したと考えておこうということで…
和美 要するに、衝突を、力の及ぼし合いとして考える、のでしょう。
先生 そうだね。そうすると、物体が速度を変えるのは、衝突によって、何かから力を受けたときといえるね。
一平 走っているものが、後から追突されれば速さが大きくなり、前から衝突されれば速さが小さくなり、横からぶつけられれば速さが変わらないこともある。
和美 それでは、力を受けたからといって、いつでも速さが変わるということではない!
先生 物体に横方向の速さを加えられ、その結果として速さが増しも減りもしないことだってあるのだ。そこで、ある方向の速さと、異なる方向の速さとは、別の量と考えて、方向も考えた速さを速度ということにしたのだ。東西方向の1の速さと、南北方向の1の速さは、共に速さは1だが、速度は違うとするのだ。
和美 そうすれば、物体に力を加えれば、速度が変わるといえます。速さが変わったり、方向が変わったりするんです。
一平 “物体に力を加えれば速度が変わる”
先生 しかも、その場合、速度変化の大きさは力が加えられた時間にも関係する。
和美 時間が長ければ、大きな速度が加えられるし、時間が短ければ、小さい速度が加えられる。
一平 それじゃ、“速度変化は、その物体に与えられた力に比例し、その力が加えられた時間に比例する”という法則が得られます。
先生 力に比例し、時間に比例すれば、力と時間の積に比例するので、この積を新し概念として力積と名づけるのだ。
和美 大きい力積で、物体には大きい速度変化が与えられる、ということですね。だけど、物体の質量にはどう関係するのかしら。
一平 同じ力積を与えても、質量が大きいと速度変化は小さく、質量が小さいと速度変化は大きいのだから…
和美 速度変化を考える時には、力積の効果は、加えられた物質の質量に反比例するといえそうです。
先生 物体の運動の大きさは、速度の大きさと、質量の大きさで決まるので、この二つの積、質量×速度 はものの運動の大きさを表すといってよさそうだね。そこで、この積を運動量という新しい概念とする。運動量はものの運動の大きさを表す概念です。
一平 運動量の変化を大きくしよう思ったら、大きな力積を与えればいいんですね。
和美 “物体の運動量の変化は力積に比例する” うんと簡単になったね。
一平 言葉の上では簡単になったけど、内容は少しも変わらない。それから、ここでいう質量とは慣性質量のことですね。
先生 そういうことだ。この関係は
   力×時間=慣性質量×速度変化       @
  力積    =運動量の変化               A
となります。ところで、速度変化を時間で割ったらどうなるかな?
一平 速度変化を時間で割るということは、1秒間にどれだけ速度が変化するかということです。
和美 単位時間における速度の変化ということです。
先生 こ概念を加速度といいます。またまた、新しい概念です。そうすると、
  力×時間=慣性質量×速度変化
  力=慣性質量×速度変化÷時間
  力=慣性質量×加速度                  B
となります。@とAとBは同じことを云っています。
和美 式で書かれるとイメージしにくくなります。
先生 ここで大切なことは、力の方向・向きに速度が付け加わること。力の方向・向きがどんどん変化するときには、短い時間ごとに、こまめに、分けて考えながら速度を加えなければならないということです。この考え方を積分するといいます。
一平 具体的な例でお願いします。
先生 そうしよう。スキーヤーの回転について考えてみよう。A点におけるスキーヤーの速度をa 、 B点における速度をb  とします。この間の速度の変化はどうなるのかな。
一平 速度bから、速度aを引くんですね。
和美 速度bに、速度aの逆ベクトルを足すんでしょ。
先生 そういうことだね。実際にはどのように作図するのかな。
和美 速度b の矢印の先から、速度a の逆向きの矢印を描き加えて3角形をつくる。これが速度の変化に相当する。
一平 もしこのAとBの間の時間が1秒なら、この速度変化が加速度に相当する。
和美 時間が△t秒なら、速度変化を△tで割ればいいんですね。
一平 AとBの間で、スキーヤーに加わる平均の力ということだね。
先生 ここでは、量的な関係を述べることは難しいので、次のことだけは使えるようにしておきたいものだ。
  1 速度が変化する物体の運動をみたら
  2  速度の変化を作図する
  3  物体には、その速度の変化の方向・向きに外力がはたらいている
  4  この関係はできるだけ短時間について考える
 それでは、二人で問題を出し合ってごらん。
一平 例えば、ピッチャーが投げた直球をバッターが打ち返したとき、球にはたらく力。
和美 時速60キロで北上していた自動車が、減速しないまま急カーブをして東北に方向を変えた時、この自動車にはたらいた力について、とか…
先生 力の矢印を描いて考えるんだよ。

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