理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 

高校生の物理  運動4  慣性質量   M-107   No302      2011年7月21日(木)
 
先生 摩擦力の復習をしておこう。摩擦力については、はどんなことがいえるんだったかな?
和美 面の上に静止している物体に、面の方向の外力がはたらくと、この外力を打ち消すように、面から物体に摩擦力がはたらいて、物体が動き出すのを妨げる。外力が大きくなると、摩擦力もそれにつきあいながら大きくなっていくが、外力がある値以上になると、もう摩擦力はそれについていけなくなって、ものは動き出す。
一平 その摩擦力の最大値を最大摩擦力という。
和美 運動している物体には、その運動方向で逆向きの摩擦力がはたらいて、物体のスピードを遅らせ、やがて物体を静止させてしまう。
先生 いずれにしても、摩擦力はものを静止させるようにはたらくということだね。
和美 だから、どんなものでも、特にそれを、積極的に動かそうとするはたらきがなければ、ものは止まったままの状態が続く。
先生 では、水平な机の上の物体について考えることにして、摩擦がなければ物体はどうなるかな。
和美 摩擦がなくても動かないでしょう。
先生 摩擦があるから動かなかったのではないかな。
一平 摩擦がはたらくから、動いているものは止まってしまうんだけど、始めから止まっているものは、摩擦力がはたらいていなくても止まっているんでしょ。
先生 なるほど。では、運動しているものは、摩擦力がはたらかなければ、どうなるかな。
一平 動いているものに摩擦がはたらかないってこと、あるかな。
和美 例えばのハナシとして、摩擦力がはたらかなければ、ものは静止することはないけれど…、だけど、おかしいな、それじゃ、いつまでも動きっぱなしになっちゃう!
先生 それでは具合が悪いかな。
和美 動きっぱなしでは、しまいには……、例えば、草臥れちゃう!
先生 草臥れるというのは人間的だね。
一平 動いているものは摩擦力で止まるんだけど、摩擦がなくても、しまいには止まるんでしょ。                  
和美 ものは止まっているのが本来の姿なんだから。
先生 地球上では物質はみんな止まってしまうけど、それが、物質本来の姿だとはいえないね。
一平 でも、動いているものは、餌を食べる動物だとか、ガソリンを燃やしているエンジンだとか、電気で動くモーターだとか、動く原因になる何かをその中へ取り入れているんじゃないですか。
先生 それも、摩擦力が支配的な地球上でのことだね。
和美 それでは、摩擦力のない世界があったら、物体を止めるようにはたらく力がないんだから、動いているものはいつまでも動いている?
先生 そういうことだね。
和美 それじゃあ、地球上で止まっているものは、止まっていたくて止まっているのではなくて、止まりたくないのに、止まらせられているんですか?
先生 擬人的な言い回しだけど、そういうことだね。
和美 でも、物体は、始めは何かに動かされたのでしょう。
先生 その言い方には、まだ、“物体は本来は止まっている”という考えが根底にある。
一平 では、物体は始めから動いていたというのですか?
先生 物体の誕生の話をしよう。物質が原子でできているのを知っているね。その原子を作ってい電子の別名は陰電子で、陽電子とペアで生まれてくる。電子たちは真空から生まれてくるのだが、この時、光速度で生まれてくるのだよ。
一平 生まれたときから走っている!? 走るのが電子の性質なのだ。
先生 電子だけでなく、原子を造っている他の粒子たち、素粒子というんだけど、それらも同様にして生まれてくる。
和美 それらでできているのが原子だから、止まっている原子があってもいいけど、みんな一斉に止まっているなんてことは異常なことなんだ。
先生 そういうこと。
和美 大部分のものが止まっている地球上は、特殊な環境なんですね。
一平 将来、人間が宇宙空間に棲むようになったら、この辺の理解はもっと容易になるに違いないナ。
先生 このように、物体が同一の運動を続ける性質を慣性といいます。
和美 静止を続ける性質も慣性でしょう。
一平 摩擦のないところでも静止を続ける性質…と言わないといけないね。
先生 静止も運動の一形態だと見ればいい。
一平 そうか。今まで、ものは静止しているのが本来で、運動しているのは特殊だと思っていたんだけど、本当は、ものは運動しているのが本来で、静止しているのは特殊なんだ。
和美 静止は速度0の運動で、特殊な状態ではないということなんでしょ。
先生 “すべての物質は運動していて、その運動を継続する”これを慣性の法則といいます。
一平 静止は運動の中の一つの状態なのだ。
和美 そういうことなら、物体の速さには、大きさが1の速さ、2の速さ、3.14の,4.672の,5.…の速さなんかいろいろあって、その中に0.00…の速さ、つまり、止まっているとう状態もあるんだから、これは、全く一般的な一つの状態に過ぎないということになるんですね。
一平 気体の分子が互いに衝突しながら、みんな勝手な運動をしている映像をTVで見たことがあります。物体は運動しているのが本来の姿なんですね。
先生 そうそう、物体はそのように、みんな固有の運動をしていて、衝突すると力を与えあって、その速さや方向を変えるのだ。速さと方向を重ねた運動の変化を速度変化といいます。
一平 重い物体は、そのとき、速度変化が小さいんでしたね。
先生 そう。質量の大きいものは、慣性も大きいのだ。つまり、運動の変化が起きにくいことになる。慣性の大きさを質量というのだ。
和美 待ってください!!前に“質量の大きいものを地球は大きい力で引っ張る、つまり、重力の原因になる量を質量という”としたんじゃなかった、のでしたか。
先生 その質量を重力質量、今度の質量を慣性質量といいます。
一平 質量に2種類あるなんて、知らなかった!
和美 話がだんだん、ややこしくなってくるナー。こういうところからは、何か問題が出てきそうな気がします。
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