理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 
  高校生の物理 運動1  速さ  M-104  No299      2011 年7月14日(木)
 
先生 一平くんと和チャンが競走したらどっちが速いかな。
和美 当然、一平くんですよ。
一平 短距離ではね。でも、長距離ではわからないよ。
先生 速さを比べるときにはどうするんだっけ?
和美 一緒にスタートすれば、先にゴールした人が速いってことでしょ。
先生 先にゴールするというのはどういうこと。
和美 えーと。先にゴ−ルするというのは、同じ距離を走るのに短い時間ですむということです。
一平 例えば、マラソンでは、距離がきまっているので、掛かった時間で勝負が決まる。速さをいわなくても、速さを問題にしている。
和美 スポーツは大概そうなんでしょ。
先生 同じ距離のタイムレースだ。
一平 それじゃあ、同じタイムの距離レースもありですね。でも、そういう競技ってあるかな。
先生 では、二人が異なった距離を、異なった時間で走ったとしたら、どっちが速いかわかるかな。
和美 走った距離をかかった時間で割れば、1秒で走った距離が出て、速さがわかります。
一平 逆に、かかった時間を走った距離で割れば、1mを走る時間がわかって、速さがわかるよね。
先生 そうだね。普通には、和チャンがいうように、単位時間の移動距離で表すんだね。
和美 速さ=距離÷時間   ということになります。小学校の算数で出てきた。
一平 距離と時間の両方がわかれば、速さがわかることになります。
先生 ついでにいうと、単位はメートル毎秒となる。式で書くときには m/s 。オリンピックの100m競走で、選手が100mを10sで走ったとしたら、この選手の速さはどうなるかな。
和美 100m÷10s=10m/s となります。
先生 この場合、この選手が 100m がを 10s で走ったのは事実だけど、その速さを 10m/s とするのは、選手がこの距離を同じ速さで走り続けたと仮定したことになる。
 こんな話はどうだろう。スピード違反で捕まったドライバーにパトカーの警官が言いました。“時速100キロ出ていました。スピード違反です”すると、そのドライバーが言いました。“まだ、スタートしてから10分も走っていません” ファインマン物理学に出ている話だけど…
和美 走った距離と速さは関係ないんでしょ。
一平 時速100キロというのは、その時の速さで1時間走り続けると100キロ走るということで、1時間走らなくてもいいんですね。
和美 時速100キロなんていうから、面倒なことになってしまうんだと思うよ。時速100キロは (1000×100)÷(60×60)=28m/s だから、“秒速28メーターでスピード違反です”といえば、“走り出したまだ1秒もたっていません” なんていう言い訳はなくなるでしょう。
一平 スピードメーターも秒速にすればいいんだ。
和美 こういう言い訳はどうですか。その時には 28m/s のスピードを出していたけど、少し前にはもっとゆっくり走っていたので、平均すれば、違反スピードにはなりません。
先生 規則ではそうはならないんだよ。走っているうちの、どんな短い時間であっても 28m/s で走ったら、もうそれで違反になるのだ。
和美 どんな瞬間にも速さがあって、どんな短い時間でも、決められた速さを越えてはいけない、と言うのが規則なんですね。100m競走でも、本当は、10m/s より速く走っている時もあり、それより遅く走っている時もあるんです。
一平 実際に、選手がスタートラインにいて、スタートのガン鳴ったが時には、選手はまだ走っていないので、そのときの速さは0m/sということになるし…。
先生 ものの速さというのは、刻々変わるのが普通なのだ。その速さを見えるようにする方法があるんだよ。
和美 刻々の速さがわかる?
先生 そう。それは、速さをグラフにすることだ。グラフの縦軸に速さをとり、横軸に時間をとってグラフを描くとよい。このグラフを 速さ-時間 のグラフ、または v-t グラフということにする。v と t は velocity と time の頭文字だ。それでは100m走の v-t グラフを描いてごらん。
一平 こんなものかな。                                     (グラフ1)
和美 こういうグラフかしら。                                (グラフ2)
先生 一平くんのは100m走っていないね。
一平 どうして、そんなことがわかるのですか。
先生 このグラフの下の面積は走った距離を表している。
一平 アー、そういうことか!
和美 私のは100m走っていますね。
先生 高校の陸上の選手が100メーター走の練習をするときに、次のような方法がある。選手はスタートラインのかなり前からスタートする。 スタートラインを通過するときには、もうトップスピードにのっているが、そこで先生はガンを鳴らしてストップウォチを押す。これで、選手は100mを10sフラットで走れる。オリンピック選手並だ。
一平 なるほど!
和美 あれ!私のグラフはこれなんだ。グラフの形は長方形で、その面積は 100m/s×10s=100m ということになる。
一平 そうか、それでは、もう一度、オリンピック選手の v-t グラフを描いてみます。
先生 大体そんな具合かな。             (グラフ3)
和美  横線の左下の三角の面積と、右上の台形のような形の面積は同じなんですね。
先生 そういうことだね。ところで、タクシーにはタコグラフというメーターが備えてあって、この器械が車の v-t グラフを描くことになっている。
一平 ヘーッ。運転手が何時どのくらいの速さで走ったかがわかるんだ。
和美 走っていなかった時間もわかることになる。食事をしているときとか…
先生 これからは、速さをいうときには、平均の速さか、最高の速さか、それとも、瞬間の速さか、などを、はっきりさせなければいけないね。
和美 例えば、新幹線の速さが時速何キロなんていうときには、トップスピードのことをいうんですね。



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