高校生の物理 重さ1  重さと米  M-90      No285        2011年5月26日(木)
 
 一平と和美は、同じ高校の2年生です。中学の担任が理科の先生だったので、休日には、先生を尋ねて、物理の話を伺います。   
 
一平  夏休みに、町はずれの駒形神社へ植物採集にいったら、神社の境内に大きな石がいくつも置いてあってね…
先生 力石っていうんだろう。
一平 あれ、先生、知っていたんですか!
先生 ウン。
和美 それ、なにするものなの?
先生 昔、村の若い衆が集まって、その石を持ち上げて、力くらべをしたんだ。
一平 力持ちコンテストですね。
和美 大きい石なの?
一平 その石には、重さらしい文字が彫ってあってね。
和美 どのくらいの重さ?
一平 えーと、たしか32とか…
先生 貫といって、日本の重さの単位でね、今の単位のkgとの関係は、 4貫=15kg となっている。
一平 それじゃあ、32貫は…。先生、電卓を貸してください。32÷4×15=120  120キロだ。
和美 そういってもピンとこないけど、一平くん、それ動かしてみたの?
一平 ううん、触っただけ。びくともしない。
先生 和チャンはどんな重さのものを持ったことがあるかな。
和美 重いものっていうと… そうそう、お母さんとスーパーへ買い物に行って、お米の袋を持ったのが重かった。
先生 多分、10kgの袋だろう。
和美 あれで10kgなの! それじゃあ、120kgというと、あの袋の12個分もあるの!それを持つなんで、信じられない。
一平 それを、持ったんだ。
先生 持ち上げたんだよ。
和美 持ち上げた?!
一平 昔は、そんなに重いものを持つことなんてあったのかな?
和美 やっぱり、お米かしら。
先生 そうそう。お米は経済の中心だからね。そして、今のようなプラスチックがなかったので、お米は米俵という稲藁で作った容れ物に入れていたんだ。
    その大きさは決まっていて、その一つ分を1俵(イッピョウ)と呼んだ。
一平 俵が一つ分で1俵っていうの、わかりやすいな。
和美 それで、1俵にはお米がどのくらいは入っていたんですか?
先生 60kg。
和美 それじゃ、その力石の重さは2俵分だ。
先生 力持ちの若衆は、片手に1俵ずつ持って運んだのかもしれない。
一平  ウヘー!
和美 信じられない!きっと、手も足も太かったんでしょうね。
先生 昔は、農村の人はほとんどが農業をしていて、力があることが男の大切な能力の一つだったんだろうね。
一平 今では農業機械があるから、農家の人もそんなに力仕事をしなくてもいいのかな。
和美 先生、テレビの時代劇で言う10万石の大名なんていうのは、お米の収入のことなのでしょう?
先生 そうだよ。年収をお米で評価したのだ。1石というのは10斗で、1俵には4斗のお米が入っているのだ。
一平 それでは、1石は2.5俵になるから、10万石の大名は25万俵のお米の収入があることになる。
和美 それ何人分の食糧になるのかな。人は1日にどのくらいご飯を食べるの?
先生 1人1日に2.5合から3合と見積もれば十分だろう。10合で1升、10升で1斗だよ。
和美 では、1日で3合として計算すると、1人1年では 3×365 で約1000合=100升=10斗=1石 1人1年で1石だ。
一平  うまくできているな。10万石の大名は10万人の人を養うことができるんだ。食べるだけで考えれば…。
先生 金額を出してみようか。現在では、お米は10kgで4000〜5000円くらいだから、
和美 エート、そうすると、1石は10斗で2.5俵。これは60kg×2.5=150kg 1kgを4000円とすると60万円、1石は60万円だ。
一平 だけど、先生。合とか升とか斗とはいうのは、体積の単位なのでしょう。1俵というのは重さの単位でしょう。60kg入っているというんだから。でも、1石なんていうと、それはど 
     っちかといえば、収入、つまりお金の単位を表しているように思われますが。
先生  そうだね。経済の中心がお米だったから、お米を重さや体積で表して、お金の多寡としたんだね。重さと体積は、両方ともものを秤る量だから、使っている人の頭の中では       それが分離していなかったのかもしれないね。
和美 固まっているものは重さで測って、粉や粒や液は体積で測ったんですね。お米はどっちでもいいんだ。
先生 体積は升(ます)で測るんだが “油は朝買え”という諺がある。意味がわかるかな。
和美 重さで買うものはいつ測っても同じだけど、体積で買う油は、朝のうちは温度が低いからしまっていて、朝買う方が得するということでしょ。
一平 和チャン、しまっているな。
先生 正しくいうと、密度が大きくなっている、ということだが、これはまた、いつか話をすることにしよう。
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