理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 
物理読み物53    場   M-85  No278      2011年4月28日(木)
 
 “距離”の2乗に反比例”という法則を見たか聞いたかした記憶がありませんか。万有引力の法則、電気力、及び、磁気力に関するクーロンの法則などがそれです。
 質量M,m の物体がrの距離にあって引き合う力(万有引力または重力)Fは F=G・Mm/r^2=(GM/r^2)・m     ただし、 Gは比例定数です。
  点電荷Q,qの物体がrの距離にあって及ぼし合う力(電気力)Fは               F=k・Qq/r^2=(kQ/r^2)・q         ただし、 kは比例定数です。
  磁気量(磁荷)N,nの磁石がrの距離にあって及ぼしあう力(磁気力)Fは      F=μ・Nn/r^2=(μN/r^2)・n     ただし、 μは比例定数です。
 このことを万有引力についてみてみましょう。地球上にはもちろんのこと、宇宙空間には、多くの物体が存在しますが、その中のどの二つをとっても、お互いに引き合っています。これを万有引力といいます。
 あなたは、見えない塵と、そばにある時計と、離れている<あの子>と、地球と、太陽と、オリオン星雲と、もっと、いろいろなものと引き合っています。一つの物体は全宇宙の総ての物体と引き合っています。
 しかし、みんな同じ大きさで引き合っているのではりません。相手を引く能力の大きさを質量といいます。正しくは、重力質量といいます。重力質量の大きいものは大きい力で相手を引きます。小さいものは小さい力で、相手を引きます。でも、それは相手の質量によります。万有引力の大きさは、自分と相手の質量の積に比例します。
 万有引力の大きさを決めるもう一つの要因があります。それは二つの物体の距離です。その大きさは距離の二乗に反比例します。このことは、離れると力は急激に減るということです。万有引力の場合、地球のように質量の大きいものは、その重心に質量が凝縮していると考えていいことがわかっています。だから、地球と地球上の物体が引き合うときの相互の距離は、ほぼ、地球の半径に相当します。もちろん、任意の二つの物体が引き合う場合にも、その距離は重心間の距離です。重心とはそういう点をいうのです。
 以上のことを数式で表現すると F=G・Mm/r^2 となります。比例定数Gの値はキャベンディッシュが実験で測定して決定しました。G=6.67×10^(-11)[Nm^2/kg^2]で、万有引力定数といいます。万有引力定数はとても小さいので、質量の大きい地球を相手にしたとき以外は、日常生活にその影響は現れません。万有引力は宇宙規模の物質界では支配的にはたらきます。距離に対して質量が強く効いてくるからです。例えば、半径1の二つの球体が10の距離にあったとしましょう。これがこのまま10倍に拡大された、半径10の二つの球体が100の距離にある場合と比較してみます。前者の万有引力は 1×1/10^2=1/100    後者のそれは 10^3×10^3/100^2=100 となります。物体の質量は体積に、その体積は半径の3乗に比例するので、このような計算になります。1万倍も大きくなっているのがわかります。もちろん、これは一つのモデルですが、およその感じはつかめると思います。
 これに対して、地球上では、地球の重力の他に、電気力が大きな力を発揮します。弾性力や摩擦力などは変形した電気力です。
 空間の一点が決まれば、そこに一定の物理量が決まるとき、その空間を場といいます。上の三つの例も場で、それぞれ万有引力の場(または重力場)、電場、磁場といいます。電場、磁場はそれぞれ電界、磁界とも呼ばれますが、場の理論という言い方があるくらいなので、電場、磁場と言っておきます。ちなみに、重力界という言い方はあまり聞きません。
 重力場について、説明してみます。地球上では総ての物体が重力を受けます。地球上のどこか一カ所に物体を置くと、その物体は大きさの決まった力を受け、場所が変われば受ける力も変わります。場所が決まれば受ける力の大きさが決まります。だから、地球上は重力の場です。重力場とも呼ばれます。
 従来、二つの質量は対等なのですが、そのうちの一方の量が場をつくり、もう一方の量が力(影響)を受けると考えることもできます。地球がその周りに重力場を作り、物体はこれから重力を受けることになります。電気や磁気の場合も同じです。
  そもそもの初めは、質量mの物体が、地球から力を受けて落下するときの加速度が g だったのですが、場の考え方からすると、地球がつくった重力場 g があって、それから質量 m の物体が mg の力を受けることになります。電場 E から電荷 q は Eq の電気力を受けます。磁場 H から磁荷 n は Hn の磁気力を受けることになりす。
 ニュートンが発見した万有引力の法則は、二つの質量が引き合う量的関係を述べている―質量の相乗積に比例し、距離の2乗に反比例する―だけで、その構造にについては述べていません。ニュートンは仮定をつくらない主義だったからでしょうか。でも、二つの m が、空間を隔てて力を及ぼし合うなんていうのは、全く不自然で、不可思議なことです。場の考え方だと、二つのものが場を媒介にして、力を及ぼし合うことになります。しかし、それだけではなく、場はそれをつくったものとは、独立に存在することになります。
  何億光年かの遠い星を、私たちは地球上で見ていますが、それは、何億年も前に発せられた光で、現在、その星が存在しているかどうかはわかりません。星からの光(電磁場)は星とは関係なく独立に存在していて、私たちの目の中の電子を動かして、星を見せてくれたのです。場(電磁場)は物(光)と対等に存在することになります。
 真空には、何もないと思われていましたが、そこには、ゆたかな場が存在しました。質量を引っ張る、電荷に力を及ぼす、電磁波を通す、素粒子を作り出す、などなどです。ものに静止状態のものと運動状態のものがあるように、場にも静止状態の場と、運動状態の場があります。電場でいえば、前者はクーロン電場で、後者は誘導電場です。磁場でいえば、静磁場及び振動磁場です。電場及び磁場の運動状態は電磁波で、重力場の運動状態は重力波です。
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