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掲示板 石井信也
理科実験を楽しむ会
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物理読み物52        平衡       C-9   No277        2011年4月28日(木)
 
 
 化学平衡では、よく水素と窒素からアンモニアを合成する例があげられ、化学式 3H2+N2 ⇔ 2NH3   と表されます。この矢印はそのときの条件によって、反応が右にも左にも移動するという意味です。と同時に、マクロにはスタチックみ見えても、ミクロにはダイナミックであることを表しています。外見では、反応は止まっているように思われるのですが、原子の運動は止まることなく、合成という右向きの反応と、分解という左向きの反応が、同じ速さで進んでいるということです。これを平衡い達したといいます。条件が変わって、右向きの反応が速くなり、合成されるアンモニアの量が多くなると、分解するアンモニアの量も多くなって、また、別の「位置」で平衡が成立します。このような反応は、分子や原子の衝突で起きるので、その量が多くなって密度が増すと反応の速さが大きくなるのです。これを質量作用の法則といいます。
 ビーカーの水に砂糖を溶かします。砂糖の量を多くしていくと、やがた、飽和に達して、それ以上砂糖は溶けなくなります。溶解平衡に達したのです。飽和状態であっても、砂糖の溶出は続いていて、その析出とバランスしているということです。もっとも、飽和に達していなくても、溶質の析出は起きていて、溶出の方が速いというだけのことです。
 水はいつでも H2O ⇔ H++OH-  のように電離平衡に達しています。電池反応でも電離平衡が考えられます。
 物質が三態変化するときにも平衡がいえます。融解・凝固・気化・液化・昇華のいずれの場合にもいえます。これを相平衡といいます。
 温度平衡を熱力学の第0法則といいます。“同じところに置かれたものはみな同じ温度になる”というものです。高温のものから低温のものへ、熱が移動していって同じ温度になります。この場合でも、熱運動エネルギーのやりとりは相互的ですが、その量は一方の向きに圧倒的です。このような平衡の例は他にも考えられます。同化・異化の体重平衡、収入・支出の収支平衡、自然界における生物の固体数の平衡、地球上のエネルギー平衡…
 平衡というのは、一方の向きに変化や運動が起きると、それとは、反対の向きの変化や運動が増して、変化や運動を制御するようにはたらくという、いわば、自己制御機構なのです。これが、それとは逆に、変化の向きに加速さえるように働けば、事態はカタストロッフに達してしまいます。結果が原因を抑制するか、促進するかの相違で、前者をネガチヴ・フィードバック、後者をポジチヴ・フィードバックといいます。 
 自然界ではネガチヴ・フィードバックがかかっている事象が多いのです。オートメイションはこれを応用したシステムです。ポジチヴ・フィードバックはいわば、“調子がでてきた”とか、“益々落ち込む”とかいう、人間臭い行動様式のように思われます。