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掲示板 石井信也
理科実験を楽しむ会
物理読み物47  復元力  M-83      No272       2011年4月7日(木)
 
 弾性変形の所で述べたように、つるまきばねにはたらく力(外力)をf 、つるまきばねの伸びをx、その比例定数を kとすると f=kx という関係がありました。つるまきばねの他端はスタンドに固定しておき、ここでの力の関係には触れずにおきます。
 今度はこのつるまきばねにおもりを下げ、おもりにはたらく力を考えてみましょう。おもりにはたらく力は重力と、つるまきばねから引かれる力の2つです。この2つの力はつりあっていて、おもりは静止しています。この状態では、重力が積極的に関係して少し面倒なので、装置を簡単にするために、このセットを摩擦のない水平な机の上に横たえます。こうすると、重力と机からの垂直抗力は打ち消し合って、いわば「無重力」の状態になります。おもりにはたらく力は0です。
 おもりが静止しているときには、おもりには、実効的にはなんの力もはたらいていません。おもりに外力がはたらいて(例えば、手で引っ張る)、少し右に変位させると、おもりにはつるまきばねから、左向きの力がはたらきます。ニュートラルの位置から見て、右向きの力と変位をプラス、左向きの力と変位をマイナスとすると(勿論その逆でもよいのですが)、つるまきばねが伸びて、おもりの変位xが正になれば、つるまきばねからおもりにはたらく力fは負になります。おもりに外力を加えて、つるまきばねを縮めると、その変位はx負になって、つるまきばねからおもりにはたらく力fは正になります。f と xはいつでも逆符号なので、この関係はf=−kx と書けます。 つるまきばねからは、おもりをいつでも元の位置に戻すような力がはたらくのです。これを復元力といい、弾性体がものに及ぼす力の特徴です。その力の大きさは変位が小さい範囲では、変位に正比例しています。
 糸をつけたパチンコ玉を、磁石で宙づりにする実験があります。宙づりにされたパチンコ玉にはたらく力は、地球からの引かれる力(重力)、磁石から引かれる力(磁力)、糸から引かれる力(張力=弾性力)の三つです。この3力はつりあっています。でも、上手に位置を調節すれば、糸がなくても、他の2力でつりあわせることが、できそうに思われますが、それはできません。磁力が鉄を引く力は、その距離が小さくなれば大きくなり、距離が大きくなれば小さくなるので、くっつくか、落ちるかしてしまうのです。いわば、状況はカタストロッフ的です。
 パチンコ玉にはたらく3力がその位置によって、どのように変化するかもう一度考えてみましょう。  
 このパチンコ玉の安定性を、机の上の物体の安定性と比較してみましょう。パチンコ玉の装置を机の上で水平にした場合はどうでしょうか。
 ドーナッツ磁石を2個、棒に挿して、上の磁石を浮かせる<浮き磁石>の微妙な力関係を観察してみましょう。
  地球上の物体が、安定して「座り続けている」のは、みんな、この弾性力の調節作用のおかげです。
 
 
 
 
 
 
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち