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掲示板 石井信也
理科実験を楽しむ会
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物理読み物45     仕事の結果 E-13 No270    2011年3月31日(木)

 対象にしている力を、ここでは外力と呼ぶことにします。外力が他の力とつりあいの状態にありながら、仕事をする場合があります。“外力が他の力にさからって仕事をする例を例を挙げなさい”という問題を出して見ましょう。“さからって”は、正しくは“つりあって”とすべきでしょうが、仕事の積極性(?)を、このように表現してみました。
 答えは (1)重力にさからって (2)電気力にさからって (3)磁石の力にさからって (4)弾性力にさからって (5)浮力にさからって (6)摩擦力にさからって (7)空気の圧力にさからって (8)質量の慣性にさからって、などが出ました。
 重力、電気力、磁力(磁石の力)にさからって仕事をした場合、その結果はポテンシャル・エネルギーとて蓄えられます。弾性力にさからって仕事をした場合も同じくポテンシャル・エネルギーとして蓄えられますが、これは、ひずみのエネルギーといった方が分かりやすいかもしれません。浮力は重力によって起きるのですから、この場合は重力ポテンシャルの変形と考えていいのでしょう。高さが高い方がポテンシャルが小さいというのが面白いことです。摩擦力の場合はどうでしょうか。この場合には、仕事は全部分子の運動エネルギーになってしまって、ものの温度を上げるのに使われてしまいました。いわば、「熱」に変わって、無駄に宇宙を温めました。(1)から(5)までのものは、仕事は有効に無駄なく保存されていますが、(7)の例として、注射器に閉じこめた空気をピストンで押し込むことを考えましょう。外力がピストンを押して仕事をすると、空気の温度が上がります。これを内部エネルギーが増したといいますが、いわば、空気の運動エネルギーが大きくなったということです。しかし、やがて、このエネルギーは熱の形で外部へ出ていってしまいます。この後の状態は初めの状態とエネルギー的には同じです。体積は小さいので、圧力は大きくなっていますが、それはエネルギーには関係ありません。次に、ピストンを押し込んでいる外力を外してやると、中の空気は外の大気に仕事をします。このとき空気の温度は下がります。自分の貯金を使って、外に仕事をするようなものですが、この支出は、すぐに外から熱が入って補填されてしまいます。さっき、外に預けておいたエネルギーが戻ってきたのです。このケースはなされた仕事が、外部にプールされていると見てもいいようです。
 (8)の例はどうでしょうか。この答えを見たときに、私はビックリしました。問題は“…他の力にさからって…”と出したので、答えはみんな<××力>という形ばかりだ思っていたのです。しかし、明らかに物質の慣性は外力に抵抗します。でも、それは外力に打ち負かされて、加速度を貰う結果になるのです。それが、運動の法則の内容だったのです。ここで観点を変えて、この物体と同じ運動をする加速度系からこれを観察するとどうなるでしょう。物体には慣性力がはたらいて、これが、外力とつりあっているので、物体は静止または慣性運動をしていることになります。とすると、この場合には、外力が慣性力にさからって仕事をした、と言ってもよいのでしょうか。結果としては、物体は運動エネルギーを持つことになります。
 生徒の意見は聞いてみるものですネ。