理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 
物理読み物29  終速度 M-65   No226   2010年7月29日(木)
 
 静止していた物体に一定の外力を加え続けると、その物体は質量にみあった加速度を得て、速さが増し続けます。しかし、物体には、その速さに比例した摩擦力がはたらいて、ついには、外力と摩擦力がつり合って、物体には実質的に力がはたらかないのと同じ状態になります。物体には力がはたらいていないのですから、物体はそのときの速さで慣性運動をします。これを終速度とか終端速度とかいいます。
 自転車を力いっぱいこいだことがありますか。だんだん空気の「重さ」が感じられるようになって、一定以上の速さには達することは困難です。自転車競技はこの空気との戦いともいわれます。
 新幹線の速さもこの空気との戦いがありますが、同時に、レイルや架線の摩擦もブレイキとしてはたらきます。機械的摩擦を減らすように車体を磁気浮上させるリニアーモーターカーをご存知のことでしょう。摩擦はモーター自身の中にもあります。この種の高速車両では、空気の摩擦を減らすために,車体の断面積は小さく造られています。
 自転車や電車を動かすパワー、人力や、電気力が大きくはたらくときには、この終速度は大きくなります。アリストテレスが<速さは力に比例する>と考えた意味がわかるような気がします。
 物体に一定の力を働かせ続ける例として、地球上での重力があります(重力も高さによってわずかに変化しますが、ここでは一定とします)重力によって物体が落下運動を始めると速さが増し、空気の抵抗も増して、やがて、終速度に達します。
 物体に働く重力はその質量に、従って、同じ種類(質も形も)のものならその体積に比例するので、空気抵抗がその断面積に比例すると仮定すると、落下終速度は物体の質量が大きい方が大きくなるでしょう。例えば、雨の終速度は雨粒の半径の関数になりそうです。ネットでデータを見つけてみてください。
 スカイダイビングというスポーツがあります。飛行機から飛び降りて、終速度を楽しもうというものです。ダイバーは、ゆったりした服を着て、手足を広く拡げて「飛ぶ」姿をTVでみることができます。終速度は250[km/h]とあります。
 地球の外からきた隕石は、地球の大気圏に入ると、空気の摩擦で大きなブレイキがかかって、その摩擦熱で燃えてしまいます。高飛び込みで水中に突入するのに似ています。競技者が温度の上昇を感じるかを、尋ねてみたいものです。小形の温度計を身につけて跳び込んだらどうなるでしょう。
 導線の中の電流について考えてみましょう。直流回路では、どこでもいつでも電流の強さは同じです。しかし、回路が閉じられた後の短い時間に、電子は加速して“アッという間に終速度”に達することになるのでしょう。
 ビールの中を運動する気泡も終速度で上昇します。等速度運動のよい例です。スキーのスピード競技では、体重の大きい選手は有利だろうな、などと、TVの放映を鑑賞しながら…,ビールを飲むのは如何でしょうか!
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