理科実験を楽しむ会

物理読み物13   糸の切れ方  M-54 No210 2010527日(木)

 

  本を読んでいると, 図のように糸でおもりを吊るして(図略), 急に勢いよ引いたときと, ゆっくり引いたときには, 糸の切れ方がどう違うかが書いてあった. 本当か, どうか実験してみた.

  実験

(1) 天井から糸を吊るし, おもりの代わりにメトロノームを吊るし, その下に糸をつけた.

(2) 勢いよく「えイ」と糸を引っ張ると, 糸はメトロノームの下3cmの所で見事に切れ, メトロノームの上の糸はびくともしなかった. 3回やって, 3回ともそうであった.

(3) こんどは, ゆっくり糸を引いてみた.すると, 糸はメトロノームの下の所で見事に切れ, メトロノームはボクの手をめがけて落下した. 3回やって3回ともそうであった.

  考察

(1) 省略

(2) 勢いよく引いたとき, メトロノームの上の糸はピクリとも動かなかった. メトロノームの質量は684gあった.

  学校で質量の大きいものは慣性も大きいと習った. メトロノームの質量が大きいとなると, 糸を急に勢いよく引っぱるという急激な変化に対して, メトロノームはその慣性によって, 依然としてその空間に止まろうとしているために, 下の糸だけに大きな力が加わり, 下の糸が切れたのだろう. つまり, メトロノームの慣性質量を利用した糸の切り方である.

(3) この回はゆっくり引っ張ったため, メトロノームの質量が重力となり, 人の引っぱる力とともに, 上の糸にかかり(もちろん, 人の引っ張る力は下の糸にもかかっている)上の糸が切れるのだろう. つまり, メトロノームの重量を利用した糸の切り方である. 

  こうなると, 人の痛めつけ方も, 楽しくなる. 憎らしい慎重な男Aをやっつけるのに打って付けだ. 同じような装置を置き, 3kgのおもりをしかけて, Aを呼んでくる. ぼくが「えイ」と糸を引っ張っても, おもりは頭に落ちて来ない.「どうだ,すごいだろ」とAに言ってやる.  Aもすかさず「オレにだってできる」と言い, 糸を引っ張る.Aは慎重な男だから, ゆっくり引く. すると, おもりはAの頭に落ちてきて…

  このレポートで, 質量を違った風に利用できることが, しみじみわかった.  

 

 評

 解説がみごとです.

  (2)を慣性質量, (3)を重力質量と見抜いたところは立派です.

  3回ずつのトライアルも, 実験のやり方として好ましい.

  最後のショート・ショートもいいね. ケガをさせないでくださいよ.

 

 夏休みに<Do it yourself>という物理の実験課題を出しました. 生徒のおのおのは,いろいろなことをやってきましたが、これは ST君 のリポートと, 私の評です.
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