理科実験を楽しむ会
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 

稲葉正さんへの手紙2   E-120  No258    2011217日(木)

 

 稲葉正様             0927日   石井信也                                                    

 No2  電束電流

  マックスエルの方程式の一つ c^2ε0▽×Bj+∂D/t の電束電流 ∂D/t , 電流 j と同じように, その周囲に磁束場 B を作ることを確かめたいと思いました.  キャパシターにたまった電荷を変えることで電束電流を発生させ, これを囲んだ鉄芯の磁束場の変化で生じたコイルの電流を, 3段アンプで増幅してLEDを点灯させる, という装置を考えました.

  直径 90mm のカードリングに 0.4mmφ のエナメル線を 600回 巻いたコイルをCDケースに収めて,3段アンプにつなぎました.  

  CDケースの裏表には 70mm×90mm のアルミホイルを貼りつけて電束用のキャパシターにしました.これに, 耐圧 3500V, 12nF の加圧用のキャパシターを, 高圧に充電してつなぎました. これで装置はできあがりです.

  3段アンプを on にし, キャパシターの電極の片方ずつに指を触れると, その都度, 3段アンプのLEDが点灯しました. (両極に同時に触れると強い電撃を受けます)  ただし, この装置には問題がありました. キャパシターに指を触れるときには, 軽い放電が起きていて(軽い音がします), コイルがつながっていなくても, LEDがつくのです. 放電が起きないように, 指ではなく乾いたティッシュで触れてもLEDは光りました. 音が聞こえないだけなのでしょう. 方法としては姑息です.

  そこで, 3段アンプを使わないことにし, 直にLEDをコイルにつないでみましたが,さすがに, 起電力不足らしく, LEDは点灯しませんでした.

  そこでこの回路に, 1個の単3乾電池を直列に入れました. これでLEDは点灯しました. LED1.5Vでは点灯しないので, 電束電流の効果であるに違いありません.

  しかし, 電池を使うということは, 子どもたちにとっては容認できないことのようです. 「ナンデー! 電池使ってんじゃー」といった具合です.

  そこで, 直径 64mm のカードリングに 0.2mmφ のエナメル線を 4000回 巻いてみました. 電束用アルミ箔キャパシターの容量は 11pF ですが, 片方の電極に指を触れると 20pF , 指で軽く押すと 3040pF に増えました. 電極の面積が増したり, 距離が減ったりしたからでしょう. これによって, 上記の方法でLEDは薄いながらも点灯しました.

  摩擦したプラスチックからは, 静電気による電束線が立ち上がっているので, そこに手の平(或いは金属の缶)を近づけたり離したりすると, 電束電流が変化します.プラスチックの上に,絶縁状態のコイルを置くことで, 同様の実験ができます. ただし, この方式にはアンプを必要とします. この実験では, まだまだ遊べそうです.

 

            

  続 電束電流 

  平行平板キャパシターを高圧で充電します. 

  たまった正負の電荷のペアは,1本ずつの電束線でつながっています.

  つまり, キャパシターの空間は電束で充満(?)しています.

  充電電荷を変えると電束が変わります. これが電束電流です.

  電流がその周囲に磁束場を作るように, この電束電流も周囲に磁束場を作ります.

 円形の鉄芯にコイルを巻いて, その誘導電流でLEDを点灯させます. 

 平行平板キャパシターは, kVで充電した(赤い)キャパシターにつなぎます.

  電極の片方を指で触ると, 容量が変化して,短時間電束電流が流れます.

  このときLEDが点灯するので, 電束電流の存在が確かめられるということです.

 

  写真1 

   左手の赤いのが加圧用キャパシターです.

   方形の銀色のアルミシートが上の電極で, 下の電極を見るには…

  写真2 

   写真1の上のトレイを剥がした状態で, 下の電極が銀色に見えています.

   円い鉄製のカードリングに巻いたコイルは, 右手のLEDにつながっています.

   コイルは絶縁用のプラ袋に入っています.

   加圧用キャパシターは電束用キャパシターにつなげるようにしてあります.

  写真3(注:これらの写真はここには添付してありません)

   これは段階としての実験です. アンプを使うことには問題がありそうなのでやめにしました.後日, もう少し「遊んで」みます. 

   右側の3段アンプは, トランジスタのダーリントン結合を3連にしたものです.

   この場合にはキャパシターは使っていません.

   リングの下には摩擦した発泡スチロールが置いてあります.

   これからは電束が立ち上がっていて, 充電したキャパシターの代用になります.

   電束を変えるには, 電極に当る物体を上から近づけます.

   手に持った缶にこの役割を果させました.  

   これを上下させるとLEDが点滅します.

   回路の中の電流はどこでも同じであることを, 子どもたちには見せたいものです.  クランプ・メーターを使って, 回路の導線の中だけでなく, 例えば赤く熱せられているニクロム線の中でも, 乾電池の中でも, 電流の強さが同じであることを確かめます.

 

 注:HPの実験電束電流,YPC16,を参考に.
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