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掲示板 石井信也
理科実験を楽しむ会
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 稲葉正さんへの手紙1   E-119   No257  2011217日(木)

  

  稲葉正様             0917   石井信也

 

  度々のお便りありがとうございます.

  退職してから20年近くが過ぎましたが, このところ,毎日, 自宅で実験を楽しんでいます. 生きてきた証拠として, 本質的な理科実験のいくつかを開拓したいと思っています. 私にできることといえば, その程度のことなのです.

  そんな実験のいくつかを書いてみます.

 

 No1  渦電流

  金属の中に流れる渦電流でLEDを点灯させたくて, 次のような実験をしました.

  金属中に渦電流が流れていても, この電流で直にLEDを点灯させることはできそうもないので, これに向かい合わせたコイルと相互誘導させて, その電流でLEDを点灯させようというものです.

  そこで, コイルの中央に置いた磁石で, 金属に渦電流を発生させます. 磁石を動かしたのでは, それによってコイルに誘導電流が起きてしまうので, 磁石は動かさないで金属の方を動かします.  

  渦電流の大きさも,磁石の強さと, 磁石と金属との相対速度で決まるのでしょう(V dφ/dt)から, 金属の速度を大きくする方法として, 1円硬貨を重ねてブンブンごまにしました. 20個程度が効率的(質量と速度と)ですが, これでも不十分なので, 3段アンプを使いました.

  写真1は多数巻コイルの中央にフェライト磁石を置いてあります. その上で回っているのは1円硬貨のブンブンごまです. 1円硬貨に起きている渦電流との相互誘導でコイルに電流を流し, これを増幅してLEDを点灯させています.

  コイルとしては写真2のように, 小型トランス(鉄芯を抜いたもの)を使うこともでき, フィルムケースに0.2mmのエナメル線を500回程巻いたコイルでもOKです. 磁石はネオジム磁石23個で十分です. (100円ショップで1100円です)

  また, 3段アンプも一般的ではないので, これを使わない方法を考えてみました.最近のLEDは乾電池1本でうすく点灯するので, 使い古した単3乾電池(1.3V程度)をコイルに直列につなぎました. もちろん, このままではLEDは点灯しませんが, 20円ブンブンごまを磁石の上で速く回すとLEDが点灯します.

  金属を激しく運動させるのなら, 金属を鳴らせば(振動させれば)よい訳です. 3段アンプを使えば, 仏さまの<おりん>を強く鳴らすとLEDが点灯します. お寺の梵鐘でLEDを灯けたことなど, HP(http://sound.jp/oze-isihi)に記録してあります.

 

 

 注1:渦電流については,HP実験の渦電流,YPCの3,を参考にし,写真はそちらのものを見てください。

 注2:稲葉正さんは県立千葉高校の物理の先生です。川鉄訴訟のために、停年前に退職して、裁判に専念されたのです。稲葉さんの後を引き継いで、私は千葉高校の教員になりました。ここで、私は物理の本質を学んだような気がします。

 千葉高の物理のカリキュラムは実験を中心に組み立てられた素晴らしいものでした。

川鉄訴訟を有利に和解した後、稲葉さんは身体をこわして入院しています。私は退職後も、理科教育関係の仕事を続けているので、稲葉さんの生活の慰めにでもなれば,と思って、新しく開拓した実験について、毎月一編ずつの報告を手紙で差し上げることにしたのでした。これは、その1年間の手紙です。

 稲葉さんは2010117日、88歳で亡くなられました。