理科実験を楽しむ会
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掲示板 石井信也
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 

 作用反作用Part2  その4 タッチすること M-79   No254   2011年1月27(木)      
 
 You cannot touch without being touched.  触れられることなしに触れることはできない。
 アメリカの教科書にこのような記述があります。touch には、触れるという意味の他に、押すという意味もあります。二つのものが力を及ぼし合うときには、触れあうことが必要十分条件になります。
  万有引力について、このことを述べてみます。
@ りんごの実が落ちるのは、地面が、りんごにとって、本来の居場所だからです。このように、ものは、自ずから備わっている本姓で行動する、というのはアリストテレスの論理です。
A りんごには地球の重力がはたらいて落下する、地球上のすべての物体には地球からの重力(万有引力)がはたらいて落下する、と、力でものの運動を解説したのはニュートンです。
B しかし、りんごと地球は離れているので、これが力を及ぼし合うのは不合理ではないか。りんごの周囲には重力の場があって、りんごは、この場から力を受けて落下するのだ。場の情報は空間を介して伝わっていくのだ。これがアインシュタインの方式です。
C 量子力学になると、地球とりんごの間をグラビトンという量子が行き来して、両者の間の力を取り持つことになります。
  重力がはたらくメカニズムはこのように変化していきます。そして、前の発案者は、多分、後の発案者の理論を理解できなかったでしょう。
@→A ものの本姓ではなく、力というはたらきがりんごを落下させる、というニュートンの理論を、もし、アリストテレスがその時代まで生きていたとしたら、どう感じたでしょうか。
A→B 仮説を作らないというニュートンには、場という観察不可能なサムシングが力を媒介するとう論議を、理解しようとはしなかったかもしれません。
B→C そのアインシュタインは、自然現象が確率的に起きるという、量子力学的論理を理解できなかったようです。彼はマックス・ボルンへの手紙に“神がサイコロを振ることはない”と書いています。
 量子論で、基本的な力を媒介する伝達子をゲージ粒子といいます。4種の基本的な力には,それぞれ、それを媒介するゲージ粒子があります。強い力にはグルオン、電磁力にはフォトン(光子)、弱い力にはウイーク・ボゾン、万有引力にはグラビトン(重力子)です。
 弾性体では、力の作用はその物体を伝わる音の速さで伝達されます。量子論的に見れば、この準粒子の伝達子を音子(フォノン)といいます。基本粒子は4種ですが、準粒子も数種類あって、そえぞれに伝達子があります。
 アインシュタインは6歳のとき、父から与えられた羅針盤が、何にも触れていないのに動くのを不思議に思ったといいます。これは、寺田寅彦の随筆<アインシュタイン>に書かれています。そしてつまり、万有引力を媒介する重力場のアイデアに達したのでした。現在は、このはたらきをゲージ粒子のグラビトンが受け持ってるのです。しかし、突然、このように言われると、不快感を持たざるを得ませんネ。 
 大マゼラン星雲に超新星が発見されました。直接には目は見えませんが、超新星で起きた電磁場の変化がフォトンを励起させ、それが、16万光年離れた地球上の人間の目の電磁場を(増幅器を介して)作動させたのです。超新星をつくる素粒子とフォトンとの相互作用、そのフォトンと目の神経をつくる素粒子との作用反作用で、私たちは超新星を「見る」ことになるのです。
 いずれにしても、このように、ものとものとは、直に触れあうことで作用反作用を起こす、ということを確認したいものです。
 しかし、初等中等学校の現場では、重力と電磁気力が離れていても作用反作用を起こすのを、例外として扱うのが一般です。
 “例外が例外でなくなるのを学習する日まで、お楽しみに!” とでもしておきましょうか。