理科実験を楽しむ会
作用反作用 1
英国の物理教科書
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 

作用反作用 その7  M-46      No191        2010225()

 

0 元に戻ろうとして押し戻す。

1 以前, イギリスへ旅行したことがありましたこのとき, ロンドンの書店で, 物理の教科書を数点買ってきました

  日本の高校・高専相当の物理教科書と思われます。A5版で, およそ1000ページものもので, 日本のそれに比べると, 程度の相違に驚かされました

2 しかし, 作用反作用に関しては,日本のそれと同じような問題がありました。反作用の押し返す,引き返す,という表現です。

  Physics(CAMBRIDGE COORDINATED SCIENCE)p45ではこうなっています。

  Newton's Third Law state that if one body pushes on a second body, the second body pushes back on the first with the same force. 

3 この pushes back という表現です

  念のため,仲間の英語の教師に訳してもらいました

  “ニュートンの第3法則によれば ひとつの物体がもうひとつの物体を押すと, 2番目の物体は同じ力で最初の物体を押しもどす”

  英国でも反作用は押し戻すということになるようです

  back は空間を指すのか, 時間を指すのか, というところが問題なのです作用と反作用との間に time lag があてはいけないのです 

4 別の教科書です。

 Physics (HEINEMANN ADVANCED SCIENCE)

    Forces come in pairs

  Our everyday experience tells us that forces come in pairs.

  Push a laden supermarket trolley and you can feel it pushing backwards against you. Lift a heavy bag and you can feel it pulling down on you. 

  Newton realized this, and stated it in his third law of motion. Newton's third law is probably the most widely known and quoted of this lawsand it is also the most widely misunderstood!

  ここで使用している pushing backwards は空間を指しているように思われますすぐ後に pulling down もあることですし. 

  “最も間違い易い”という注は, 面白いですネ

5 また別の教科書です。

   PHYSICS HECHT

  Newton provided the final link in the credo of the Three Laws. In his own words:

 

  To every action there is always opposed an equal reaction: or the mutual actions of two bodies upon each other are always equal, and directed to contrary parts.

 

  The interaction of two bodies always occurs via a force and an equal magnitude oppositely directed counterforce. There is no such thing as a single force exerted by some active entity on a passive one; there is only interaction. A hand cannot simply push on a chair―the chair must always push back on the hand. Entities interact, one upon the other: force is a thing of pairs. Whenever we see some object deviate from the Law of Inertia, we must be able to find another interacting with it.

  ここでの back は空間, 時間のどちらともとれますが,どちらなのでしょうか

  ニュートン自身の言葉による表現は使えそうです. action なのですネ

 

蛇足

1 現在使われている実教の物理Tの教科書(平成143月検定済)ではこうなっています。

 

作用反作用の法則

 人がばねを引くとき,同時に変形したばねも人を引き返す。力は必ず物体どうしで及ぼし合う相互作用である。このとき,一方の力を作用とよべば,もう一方を反作用とよぶ.どちらの力を作用とよんでもかまわない。

 

<同時に>と<引き返す>という表現には矛盾があります。

 人がばねを引いた作用で,ばねは変形して,人を引き返す, つまり作用の結果として反作用を起こしたという構図になります。 

 それだけではなく,引き返すとう表現には擬人的なにおいを感じます。

2 物理Tでこのような表現をしているもう1例は啓林館のものです

  あとの教科書からはこの種の表現はなくなりました

3 中学校の理科の教科書では, 学校図書, 教育出版, 啓林館にこの表現が残っています

  ガスを噴出すると, ガスがロケットを押し返すという例が共通していますロケットでは目的的にガスを噴出させるのですが, 科学の法則を云々するときには,  契機も, 意図も, 目的もありませ。. ものとものとの因果関係だけで, 唯物的なのです芸術的, 経済的, 宗教的側面は, 時には「教育的」側面も捨象します

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掲示板 石井信也