理科実験を楽しむ会
(図p67)
(図p64)

65 .100 V の電源でパイロットランプをつける―――電圧分割
 
 [授業のねらい]
 100Vの電源から1Vの電源を得るにはどうしたらよいでしょうか。 100Vの交流電源を上手に使いこなすことを考えてみましょう。
 
 [授業の展開]
 実験1
 任意の抵抗を2本直列につないで合成抵抗の値を調べましょう。 ……@
 任意の抵抗を2本並列につないで合成抵抗の値を調べましょう。 ‥‥A
 いくらになるか計算してから,テスターで測ってみましょう。
 実験2 
 @の抵抗を使って回路をつくり,
  (1)電源と各抵抗の両端の電圧を調べなさい。
  (2)各点における電流を調べなさい。
 Aの抵抗を使って回路をつくり,
  (3)電源と各抵抗の両端の電圧を調べなさい。
  (4)各点における電流を調べなさい。
 電源と計器はどのようなものを使うか班で相談して決めなさい。計算してから測定しなさい。
 実験3 発光ダイオードは2V弱の電圧で点灯します。 50個の同じ発光ダイオードを直列につないで100Vの交流でつけてみましょう。  (p64)
 
これをもっとたくさんつけると,単色光源として光の学習に使えます。
 実験4 1.5V用のパイロットランプを直列につないで,100Vの交流でつけてみましょう。
 実験5 教室の黒板を往復するようにニクロム線を張って,100Vの交流電源につなぎます。ニクロム線の2点間の電圧を測ってみましょう。任意の2点から電圧を取りだして,いろいろな電気器具を作動させてみましょう。
 直流を使いたいときには,回路の一部に整流器を入れます。
パイロットランプ,発光ダイオード,モーター,フザー,ラジオ,発電機(ジェネコン),……,を作動させてみましょう。
 ニクロム線の2箇所(鉛直線上の同じ位置)を両手の指でつまむと,軽いしびれを感じます。電源に近いほうが大きい電圧に触れていることになります。そのときの位置を黒板の上に記録しましょう。「自然発生的」に,クラスの<電圧ギネス>を競うことになりました。
 その電圧と,指のあいだの抵抗を測ってみましょう。身体に流れた電流を計算してみましょう。それを電流計で測ってみましょう。
 実験6 発泡スチロールのとろ箱(魚屋で使う入れ物)に食塩水を入れて,箱の両側にアルミホイルの電極を立て,100Vの交流電源につなぎます。
水の2箇所から電圧を取りだして電気器具を作動させてみましょう。
 直流として使うときには一方の電極の前に整流器を入れておきます。
 発光タイオードの足を広げて,水の底に沈めてみましょう。足の方向で,どのように変わりますか。直流ではどうでしょうか。          (p65)
 圧電ブザー(直流使用)で同じことをしてみましょう。リード線を広くするとどうなりますか。方向を変えるとどうなりますか。向きを変えるとどうなるでしょうか。
 水の2箇所に手の指を広げて入れてみましょう。指の方向でどのように変わりますか。しびれの強さに比例した声をだしてみましょう(自然にでると思いますが)。声の大きさで電圧がわかります。<キャーキャーテスター>という名はどうでしょうか。
 これは一種の電圧分割器です。電極で化学変化が起きるので,アルミホイルが腐食していきます。ステンレスの極板を用意しておくとよいでしょう。
 カップラーメンに小さい電極を入れて,100Vの交流で調理ができます。
むかし,戦中・戦後にこのような方法でパンを焼いて食べたものです。しかし,電極の化学変化を考えると<おすすめ>の方法ではありません。
 この実験(?)をやるときに,回路に交流電流計を入れておきます。水の温度が上がると抵抗が小さくなって,大きな電流が流れるのがわかります。
金属の抵抗とは逆です。パン焼きの場合には,水分が蒸発して抵抗が大きくなり,電流が「自動制御」されるのです。
 R1, R2, R3, R4,‥‥の抵抗を直列につないで電圧がVである電源につなぐと,全抵抗Rは  RR1R2R3R4…… となるので,流れる電流をIとすると,

 VIR1R2R3R4……)  =V1V2V3V4+となって,各抵抗の両端には抵抗に比例した大きさの電圧が現れることがわかります。
したがってこれは,電源として利用できるというものです。
ただし,ここに負荷をつなぐと,電圧が変化することは考慮に入れておかなければなりません。もっとも,ふつうの乾電池のような電源でも,負荷によって端子電圧が変わることは同じです。
 問1 起電力E,内部抵抗rの電源に外部抵抗Rをつないで回路をつくると,端子電圧はいくらになるでしょうか。
 流れる電流をIとすると, EI(Rr)IRIr  VEIrIR
 外部の抵抗を小さくして,大きな電流を流そうとしても,内部抵抗による電圧降下が起きてしまって,大きな電流を取りだせないことがあります。
 006pは起電力が9Vもありますが,内部抵抗が大きいので,多くの電流を取りだすのには適しません。
 これに対してバッテリーは内部抵抗が小さいので,r≒0 とすると,VEIrEIR ここで R≒0 とすると I→∞ ということになります。しかし,このような使い方をするとバッテリーを傷めます。
鉛筆の芯の両端をバッテリーにつなぐと,その発熱で鉛筆が燃えだします。
 問2 カラー抵抗の読み方を覚えましょう。
 抵抗には4本のカラーバンドがあって,抵抗の端に接している(近い)方から順に読みます。はじめの2本は2桁の数値を表し,3本目は10の累乗の指数を表します。最後のものは誤差を表しています。
 たとえば,3本のカラーが茶赤橙なら,はじめの茶赤で123番目の橙が10^3で, 12×10^3Ω12kΩ を表します。              (p67)
 抵抗に電流が流れると発熟し,抵抗のワット数が適当でないと,焼き切れることがあります。の抵抗にIAの電流を流した電源は, そこでI^2RWの仕事率で仕事をします。仕事率は工率ともいいパワーともいってPで表します。 PI^2RIVV^2/R
 問3 カラー抵抗を1本選んで,交流の100Vで発光ダイオードを点灯させましょう。 発光タイオードは110mAも流れれば点灯するので,回路には10100kΩ程度の抵抗があればよさそうです。とすると3番目のカラーがオレンジのものを選べばよいことになります。 10kΩの抵抗を100 V につないだとすると,消費される電力は,
V^2/R100^2÷(10×10^3)1W
 これでは小さいカラー抵抗ではとてももちません。

 それでは,50kΩではどうでしょうか。
 V^2/R100^2÷(50×10^3)0.2W  これなら使えそうです。
 これに発光タイオードをつないだとき,回路の電流は変わらないとしてもよさそうです。
 カラー抵抗は円筒形をしていて,ワット数はほぼ大きさに比例するようです。
そこで,カラー抵抗の大きさを,かりに大型・中型・小型に分けて,長さ・直径(単位mm)で表せば,        長さ(mm)   直径(mm)     仕事率(W)
  大    16          5                   11/2
  中    10          4             1/21/4
            12          3
  小     6             2               1/41/8
               8             2
程度と考えてよさそうです。
 中型のカラー抵抗 22kΩ27kΩ32kΩのもので実験してみました。発光ダイオードは点灯しました。抵抗にさわってみても熱くはなりませんでした。

 [まとめ]
1
 抵抗による電圧降下を利用して,電圧を分割できます。
2
 電池の中でも電圧降下を起こします。
3
 電圧降下に使う抵抗は適当なワット数のものを選びます。
4
 カラー抵抗の大きさと強さがわかるようになりましょう。

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掲示板 石井信也
(図p65)
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち