理科実験を楽しむ会
(図p34)
(図p32)
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 

57 電荷が力を受ける空間がある―――電場

 [授業のねらい]
 質量が力を受ける重力揚があるように,電荷が力を受ける電気力の揚(電場)があることを発見します。
 
 [授業の展開]
 実験1 平行平板コンデンサーで一様な電場をつくり,そこに置かれた電荷がどのような力を受けるかを測定しなさい。
 <装置の説明>
 コンデンサーは 210×280×1(単位mm)の鉄板を2枚,間隔を20mmにして平行で鉛直に,アクリルの板に立ててあります。コンデンサーの電極の正負が変えられるように,切り替えスイッチがついています。コンデンサーの「底」のアクリルの板には5mm間隔で平行線が引いてあって,振り子の変位が読めるようにしてあります。電気振り子は直径5mm程度の発泡スチロ−ルの球を薄いアルミ箔で包んで,これがコンデンサー空間のほぼ中央にくるように,0.2号のナイロンテグスで吊ってあります。    (図p32
 <操作>
 手順は(1)(2)の番号で,注意事項は1)2),の番号で述べておきます。
1500Vで充電した4μFのオイルコンデンサーを,切り替えスイッチを介して平行平板コンデンサーにつなぎます。
 スイッチを入れると,平行平板コンデンサーが充電されて,この空間に一様な電場ができます。スイッチを反対に入れると,平行平板コンデンサーは逆に充電されて,電場の向きが反対になります。
 1)平行平板コンデンサーの容量は数十ピコファラド(pF)程度なので,4μFのコンデンサーでは,何度,充放電を繰り返しても,電場の強さが変わることはありません。
 24μF500Vで充電した静電エネルギーは,手で触れると相当の電撃を受けるので注意します。
 この実験に先立って,充電したコンデンサーを金属の面で放電して見せます。生徒にもやらせます。
 平行平板コンデンサーを充電したあとはスイッチを切っておきます。スイ
ッチを切ったあとでは,平行平板コンデンサーに手を触れても大丈夫です。
容量が小さいからです。
2)電気振り子には,電気盆で電荷を与えておきます。電荷は正負のいずれでもかまいません。電気振り子に電荷を与えてから,平行平板コンデンサーを充電すると,振り子は電場から力を受けて,中心から一方へ変位します。スイッチを反対に入れると,振り子は反対に変位します。この変位の大きさを測定します。数回測定して平均値をだします。
 3)コンデンサーの面積が十分に大きく,それにくらべて間隔が小さいときには,コンデンサーの空間は一様電場とみなせるという仮定で実験します。ただし,極板の近くでは,電場がいくらか強いことが,振り子の運動からわかります。
3)変位の測定が終わったら,平行平板コンデンサーを斜めにして,電気振り子を電場の外へだして,クーロンメーターに触れさせて,電気量を測定します。
 <目的>
 電荷qが電場の強さEから受ける力fの大きさについて
    Eが一定のとき  f ∝ q  (実験1)
    qが一定のとき  f ∝ E  (実験2
を確かめます。
 このことから,f ∝ qE  f kqE (kは比例定数) の k1 になるように単位系がつくられていることがわかります。
 
 <理論>
 電気振り子の糸の長さを lm,振り子の質量を mkg, その電気量を qC,電場の強さを E/C,変位の平均値を xm,コンデンサーの電圧をVV,平行平板コンデンサーの極板の間隔を dmとすると, 振り子にはたらく力学的な力 f は,
    fmg(x/l) ただし,g m/s^2 は重力加速度
 電気的な力Fは, FEg
 電気力のする仕事は, FdEqdVq で,これは重力場の mgh に相当しています。
    FV/dq                                              (p34)
この2力 F と f がつりあいの状態にあるので,
    mgx/lV/dq
これを確かめます。まず,実験データをあげておきます。
    m0.012×10^(−3(kg)
 化学天秤で測定して,装置に振り子の質量を記録しておきます。
    l55×10^(2)(m)  x2.5×10^(2)(m)  V500(V)
 真空管用電源装置を使用して,コンデンサーを電源に接続したままの状態で測定します。
    d10×10^(−2(m)  q1.0(nC)
 実験のまえにヘアドライヤーで振り子の糸の一部をブロ−しておきます。
この実験のポイントはここです。よほど条件のよい日でないと,電荷がリーク
 
するようです。n(ナノ)10^(−9)の意味です。
   mgx/l0.012×10^(−3×9.8×2.5/555.3(μN)
   V/dq500/0.1×1.0×10^(−9)=5.0(μN)
 力学的な力を生徒がどう書いたかを調べてみたところ,あるクラス46人中
       mg
tanθ30人)  mgsinθ(7人)  mgθ(2人)
なかなか,mgθとは書けないようです。生徒の感想として,θの単位が「rad」であることをみんなが忘れていたようです,とありました。 (図p35
 <単位の関係>
 平行平板コンデンサーのつくる電場 E から電荷 q が受ける力 F は,
    FEq
 この力に抗して,この電荷 q をコンデンサーの負極から正極まで d の距離を運ぶ仕事 W は,                                                               
    WFd(qE)dq(Ed)qV
 この式からわかるように,Eの単位は
   EF/q で,単位は N/C  あるいは EV/d で,単位は V/m
 後のほうの単位 V/m は,電場 E が電位 V の勾配を表すことを意味しています。
 電場はベクトルで,電荷が力を受ける方向が電場の方向で,正電荷が力を受ける向きが電場の向きです。
 電場 E の高さ, V  Ed に 電圧 という概念があるように、
 重力場の高さ,(U=)gh   に「重圧」とでもいう概念があってもよさそうです。
 
 [まとめ]
1 電荷が力を受ける電場という空間があります。
2 電場の強さは電位の勾配で表わされます。

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掲示板 石井信也
(図p35)