理科実験を楽しむ会
(図p26)
(図p25)
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 

55. 電気をためておくに.は―――ライデン瓶
 
 [授業のねらい]
 電気はためておきにくいものですが,すこしならためることができます。
一般にそのような装置をコンデンサー(または,キャパシター)といいますが,ライデン瓶ははじめてつくられたコンデンサーです。ライデン大学でつくられたので(1746年)この名があります。
   
 [授業の展開]
 実験1 ファン・デ・グラフ起電機で発電したあと,起電機をとめて,しばらく放置しておくとどうなるでしょうか。
 電気はしばらくすると放電してしまって,起電機の電極からなくなってしまいます。空気中にはほこりや煙などのような電気泥棒がたくさんいて,よってたかって,すこしずつ奪っていくことをみてきました。なかには,電極に捕まってしまうものもあります(線香の灰は電極に飛びついて付着していました)。このことを利用すると,空気中のほこりや煙などを集めることができます。電気集塵器です。
 実験2 瓶の中に針金を張ってその一端をファン・デ・グラフ起電機の電極につなぎます。瓶の中に線香の煙を充満させてから,起電機を作動させます。
 さて,それでは,電気をためておくには,どうしたらよいでしょうか。
 実験3 実験室に用意されているライデン瓶の電極にファン・デ・クラフ起電機の本体をつないで発電すると,ライデン瓶は充電されます。これに手を触れるとかなりの電撃を受けます。放電するときには放電叉を使います。
 ライデン瓶はガラス瓶(絶縁体)のガラスを境にして,その内側と外側に2枚の金属箔を貼りつけたものです。この金属にプラス・マイナスの電荷を与えると,電荷は電気引力で引きあって逃げることがないのです。
 実際には,内側にだけ電荷を与えてれば,外側の金属は静電誘導で正負の電荷が分離し,内側と同種の電荷は,瓶が置かれている場所の物体を通して地球に広がってしまいます。
 実験4 ライデン瓶を電気盆で充電してみましょう。ネオン球を使って放電してみましょう。
 ネオン球で放電するときには,ネオン球の電極のうち,マイナス側につながれたほうが光ります。注意して見るとどちらが光っているのかがわかります。
 ファソ・デ・グラフ起電機の電極が正負のどちらで帯電しているかを確かめておきましょう。ファソ・デ・クラフ起電機には正で帯電するものと,負で帯電するものとの2種類があります。ウィムズハースト起電機の電極の正負は偶然に決まりますが,いちど決まると「癖になる」ようです。
 実験5 いろいろなライテン瓶を作ってみましょう。    (図p25)
1)同じ形のアクリルのコップを二つ用意します。一つのコップには外側にアルミホイルを貼ります(コップ1とします)。もう一つのコップには内側にアルミホイルを貼ります(コップ2とします)。
 1)コップ1を外に,コップ2を内にして重ねるとライデン瓶ができます。  
 2)コップ1に水を入れてもライデン瓶ができます。この場合には,内側の水がアルミホイルの役を果たしています。
 31)の場合の二つのコップのあいだに少量の水を入れると(周囲を濡らさないように注意),容量が大きくなります。
2)料理用のアルミのボール(半球状の容器)とアクリルのボールを重ねます。外側がアルミ製,中間がアクリル製,内側がアルミ製の順に重ねます。内側のアルミ製ボールの代わりに「中間の」アクリル製ボールに水を入れてもよいのです。
3)天球儀用の大型のアクリルの半球2個を使います。その一つの内側にアルミホイルを貼り,その内側にもう一つの半球を押し込みます。内側の球に水を入れ,ファン・デ・グラフ起電機で充電します。これはすごいぞ!
 実験6 ショッキング・ウォータを飲んでみよう。
1)の2)のライテン瓶で実験しましょう。柄の途中に発泡スチロ−ルのつまみをつけたアルミホイルのスプーン(さじの形だけしていればよい。あるいは,本物のさじに発泡スチロールのつまみをつけてもよい)を,コップに投げ込みます。大型の電気盆に電気をためて,電気盆をスプーンの先に触れればライテン瓶は充電します。
 
アクリルのコップが絶縁体(誘電体)となって,内側の水と外側のアルミホイルがコンデンサーを形成します。内側の水に電気が与えられると,外側のアルミホイルは静電誘導で電気が分離され,束縛されていないほうの電気は地球へ逃げてしまいます。電気を与えたら,発泡スチロールのつまみを持ってアルミホイルのさじをコップから抜きだします。あとは,だれかにコップを手に持って水を飲んでもらうだけです。水を飲む瞬間ピリッときます。
 起電機で充電すると,ショックが大きいので「覚悟」がいります。コップを落とすこと必定です。この簡易ライデン瓶を<電気コップ>と呼ぶことにします。この水を<ショッキング・ウオータ>とします。
 広口の金属の缶(粉ミルク用の缶がよい)を発泡スチロールの台の上に接着剤で貼りつけ,缶をアースから絶縁した状態にしておきます。これを<電気缶>と呼びます。薄いアルミ箔で包んだ発泡スチロール球に絶縁体の柄をつけたものを<電気スプーン>と呼びます。電気缶にたまった電気をすくって他の入れ物に移す道具です。                           (p26)
 実験7 電気盆にたまった電気を電気スプーンで電気缶に移してみましょう。移ったかどうかはネオン球で調べます。
 電気缶を起電気で充電しておいてから,電気スプーンで電気をくみだしてみましょう。スプーンでくみだした電気は箔検電器で調べます。缶の外側からくみだしてみましょう。缶の内側からくみだしてみましょう。
 電気缶の外側から電気をくみだすことはできますが,電気缶の内側からは電気をくみだすことはできないことがわかるでしょう。逆に考えれば,電気缶の内側から与えれば,電気缶にはいくらでも電気を与えることができるはずです。電気は中からくれて,外からもらうのです。
 ファン・デ・グラフ起電機の電極には,その内側から電荷を与えているので,「いくらでも」電気がたまるのです。                   (p27)
 問1 電気缶の内側から,電気スプーンで電荷を与えるときの状態を考えてみましょう。電荷は,つながっている導体ではお互いに最も遠くに配置します。そのことから,電気缶の内側から電気スプーンで電荷をくみたせないことを考えなさい。
 電気が金属容器の外側に分布しているとすると,容器の中には電気的雰囲気がないことが考えられます。実際にもそうなっているので,金属で周りを囲って,その内部の空間に電気的な影響がないようにすることを静電遮蔽するといいます。
 静電気に弱いICはアルミホイルに包んで売られています。 または,伝導性のよいシートにピン(脚)を剌してある場合もあります。
 電気缶はコンデンサーではないので,やがて電荷は放電されてしまいます。
 
 [まとめ]
1
 たくさんの電気をためておくことはできません。
2
 少量の電気をためる道具をコンデンサーといいます。
3
 ライデソ瓶は耐圧性の高いコンデンサーです。
4
 金属容器の内部からは,電荷を汲み出すことはできませんが,与えることはできます。                        
5
 金属で囲まれた空間の内部には,外からの電気的影響が及びません。
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(図p27)
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