理科実験を楽しむ会

乗り物の中の実験(その4) M-22  No53   0775()

 

(0) 帆かけ船で、 作用反作用

(1) 風のない日には、 帆かけ船は動きません。

   そこで、 この船に、 大きな扇風機をつみこんで、これで帆に風を当てて進ませようというのです。

  これは、 曾て、 <科学クイズ>の本に載っていた典型的な問題の一つでした。 正解は

    "作用反作用で釣合ってしまうので、前には進まない”という解説つきの答えです。

    これには二つの誤りがあります。

(2) 帆と扇風機が及ぼし合う力は作用反作用ではありません。   

    作用反作用の関係にある2力には、 扇風機と空気、 空気と帆の二組があります。

    この二組の力の大きさは異なるので、 船を前にも、 後にも動かすことができます。

    その境目で、 船が移動しない位置もあります。

(3) もう一つは、 作用反作用の2力は釣合うことはない、 ということです。

    作用反作用の2力は釣合いとは全く無関係な力なのですから。

(4) このモデル実験をしてみました。 発泡スチロールのトレイを、両面テープで貼りつけて、船と帆にします。

    小型の扇風機は100円ショップで手に入ります。 これの位置を加減して船を動かします。

    実験結果は次の通りでした。 帆と扇風機の距離が10cmの時には、 船は前にも後にも移動しませんでした。

    この間隔が10cmも短いときには船は前に、 10cmより長いときには船は後に動きました。

 

[蛇足]

[1] 船の後から観察します。 このとき、 プロペラは時計回りに回っているので、 モーターの台(ステイター)には、

    反時計回りのトルクがはたらいて、 船には進行方向左手に回るムードが起きます。

    <作用反作用ごま>の項目を参照してください。 

[2] 船に乗っている人が船の一部を押しても船は動きません。 このとき、船に乗っている人は船の一部なのです。

    押し合っている力は内力で、上の帆かけ船とは別問題です。

[3] 千葉の物理サークルでは、 昔、 この実験をいろいろやってみました。 

     朝生邦夫さんは、 模型飛行機のプロペラを力学台車にセットして、 ダイナミックな実験をしたものです。
もっぱら ものから まなぶ石井信也と赤城の仲間たち 
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プロペラ船1 プロペラ船2