短編小説 強盗でございます。
店長様はひどく萎縮なさいまして
一向に現金をご用意してくださらないものですから
わたくし銃口を改めて近づけさせていただき
「ぐずぐずするな 撃ち殺すぞ」と申し上げました。
ところが店長様はなおさら萎縮なさいまして
ガタガタとお震えになり、まるで捨て犬のような目で
こちらをご覧になるものですから、本当に撃ち殺して
さしあげようかと一考させていただきましたが
わたくしの目的はあくまで現金でしたので
ここはひとつ速やかにレジを開けていただくよう
具体的に申し上げさせていただいたところ
店長様は何をお思いになられたのか「命だけは」と
命乞いなさるものですから、流石のわたくしも
いよいよ歯がゆく存じ上げまして
不覚にも引き金を引ひかせていただきました。

店長様には大変ご迷惑をおかけしまして
誠に申し訳なく思っております。
おわり
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