女の子には悩みがありました。
一つは、人間ではないこと。
もう一つは、居場所をなくしたこと。

男の子には悩みがありました。
一つは、勇気がないこと。
もう一つは、いじめを受けていること。


放課後は自殺を試みるのが男の子の日課でした。
もはや、死ぬための勇気が欲しいのか、いじめに対抗する勇気が欲しいのか、
自分でもわからずにいました。

男の子は、ひとけのないゴミの不法投棄場を訪れました。
その場で調達したナイフをもち、おなかに刃をあてがいます。
手が震え、足が震え、涙が溢れてきます。

でも、今日は不思議と、勇気をもてる気がしてきました。
そのままナイフを、手前に、進めていきました。

「死なないで」

ゴミ山の中から、女の子の声が聞こえました。

男の子はその場にうずくまり、自分を必要としてくれる"人"の存在に、ただただ泣き崩れました。
この子とならずっと一緒にいられる。ふたりはそう思いました。

*

女の子にはもう一つ、大きな悩みがありました。
それは、恋をしてしまったこと。

女の子の心は激しく揺れ動き、その負担から身体が壊れていきました。
男の子は力いっぱい叫びました。

「死なないで！！」

女の子は、最後の力を振り絞って応えました。


「 －．－．　－－－　．．－　．－．　．－　－－．　． 」