11.同じ月を見ている

今日は月が出ている−路地の木屋町から
わだちのついた みちを丸太町へ
あなたやわたしへ あらゆる形へ
白く 丸い 光を落として

「今日はひとつ、つめのようなつきが出た」

とあなたはいうのでした…それで高い夜に月が
ふちがくっきりとした
真白に引掻いた瑕みたいにしているのに
私は気づいた

大人になっても真っ黒になって遊ぶので
私は太陽の匂いがするってゆうてたなぁ
でも今は夜とタバコの匂いしかせぇへんわ
哀愁の匂いは意外とこんなもんかも知れへんなぁ

嘗て月をともに眺めたひとは
今となっては心の通う事もないヒト
でもあなたは空を見上げるのでしょう?
私はここから 同じ月を見ている

新宿の南口は、夜も人が途絶えず
ウカーッとしているとどこかへ行ってしまうので
あなたの様な人と待合わせるには
少し場違いであった。と私は道を急いでいました

背広とネクタイでもって
街の景色の中にとけ
行方を少しくらましてはいたので
まさか、あなたの方から見つけようなどとは
思ってもいませんでした
そして、そらを見上げいうのでした

「今夜のつきはみかんのふさのような月」

わたしはこの街で初めて月を見たような気がしました
そしてこの広い洸い世界の中で
上を向いているのが私達だけ
ということなのでした。

あなたの背中はとても白いのですね
とても、あなたの声は、まぁるいのですね
ささやかな光で照らすのですね
私達は今日もここで、同じ月を見ている

今日は薄く濡れた雲を刺し貫くような
真白な満月が空に上っていました
ふと気づけば、
私は今日も、明日も
独りで
歩かなければならないということなのでした

あなたはもういない
無条件に信じたいと思うものごとほど
危ういものはない

平等院の月でさえかけない夜はない
ここは静か過ぎて…
       すこしうるさいわ    

そして とても さみしいのです
すくなくともこんな
月の出るような夜は

こころがひとりでにたちもどってしまうので
どこかやさしいきもちでくるしいのですね

もしあなたが空を見上げるなら、
私はここから、同じ月を見ている。
光が 呼びかけ 問いかけ 語りかけるから
私はここから、同じ月を見ている。

今日は月が出ている−路地の木屋町から
轍のついた 道を丸太町へ
あなたやわたしへ、あらゆる形へ
白く 丸い 光を落として

「今日はひとつ、つめのようなつきが出た」

とあなたはいうのでした、それで高い夜に月が
ふちがくっきりとした
真白に引掻いた傷みたいにしているのに
私は気づいた

大人になっても真っ黒になって遊ぶので
私は太陽の匂いがするってゆうてたなぁ
でも今は夜とタバコの匂いしかせぇへんわ
哀愁の匂いは意外とこんなもんかも知れへんなぁ

嘗て月をともに眺めたひとは
今となっては心の通う事もないヒト
でもあなたは空を見上げるのでしょう?
私はここから

同じ月を見ている