《ピアノ・フェイズ》のプロセスと構成

2000/4/27 4年 篠田 大基

スティーヴ・ライヒ Steve Reich (1936-):
《ピアノ・フェイズ Piano Phase》 2 pf. (or 2 mar.). 1967年作曲・初演

発表の順序

(今回の発表について)
1.「緩やかに移りゆくプロセスとしての音楽」
2. 作品分析
2.1.位相ずれプロセス
2.2.全体の形態
2.3.細部の構成
3.まとめ
3.1.結論、ライヒの創作史上での位置付け
3.2.今後の課題

 ライヒは「緩やかに移りゆくプロセスとしての音楽」で、「プロセスそのものが音楽作品である」という主張を展開した。 これは70年代前半までのライヒの創作態度を考える上で重要なものであるが、実際の彼の作品において、その全体の形態や細部の構成は、プロセスとどのような関連性を持っているのだろうか。 今回は、ライヒがプロセスを重視していた時代の作品の中から比較的小編成で初歩的な曲を採り上げ、それについて考えてみたい。

1.「緩やかに移りゆくプロセスとしての音楽」 "Music as a Gradual Process"

初出:
Tucker, Marcia, and Monte, James. Anti-Illusion: Procedures/Materials.
New York: Whitney Museum of American Art, 1969.
スティーヴ・ライヒ「緩やかに移りゆくプロセスとしての音楽」
(近藤譲訳,『エピステーメー』4巻10号,36-39頁)より抜粋。

2.作品分析

2.1.位相ずれプロセス gradual phase shifting process

 Piano Phaseでは、2人のピアニストが反復音型をユニゾンで演奏し始め、何回かの反復の後に第2奏者の奏者が僅かにテンポを上げることによって次第にずれが生じる。 16分音符1個分だけ先行したところで初めのテンポに戻るのだが、この時第1奏者との間に合成された別の音型が生じる。 以後これを繰り返し、周回遅れにした所で次の音型に移る。

2.2.全体の形態

  第1部 第2部 推移部 第3部
位相番号
(位相数)
1-15
(15)
16-26
(11)
26a
(1)
27-32
(6)
パターン
(単位:16分音符)
12 8 2 4
動き 1st 定―――――――― 定―――――溶―休 休―溶―定――
2nd 休―溶―ず―溶―休 休―溶―ず―定―― 定―――ず―定
音型の関係
定: 固定
休: 休止
溶: fade in, fade out(差し込み)
ず: 位相ずれ(加速し [a. v. s. ]、16分音符1個分ずれた所で、テンポを元に戻す [hold tempo 1])

2.3.細部の構成

第1部
1st, 2nd 右手fis - cis16分音符4個の反復上行
左手e - h - d16分音符6個の反復上行

第2部
1st 右手fis - cis16分音符4個の反復上行
左手e - h - d - h16分音符8個の反復波状
2nd 右手e - h16分音符4個の反復下行
左手e - a - d - a16分音符8個の反復波状

第3部
1st, 2nd 右手h - e16分音符4個の反復上行
左手a - d16分音符4個の反復上行

ライヒ作品年表 (1965-1970)
作品名,楽器編成
1965 It's Gonna Rain, tape.
Oh Dem Watermelons, film music, tape, reworked songs of S. Foster.
1966 Come Out, tape.
Melodica, tape.
Reed Phase, soprano sax, tape.
1967 Piano Phase, 2 pf. (or 2 mar.).
Slow Motion Sound, text score, tape.
Violin Phase, vn., tape (or 4 vn.).
My Name Is, text score, tape, 3 or more recorders, performers, audience.
1968 Pendulum Music, 3 or more mikes, amps, speakers, performers.
1969 Four Log Drums, phase-shifting pulse gate, log drums.
Pulse Music, phase-shifting pulse gate.
1970 Four Organs, 4 electric organs, maracas.
Phase Patterns, 4 electric organs.

3.まとめ

3.1.結論、ライヒの創作史上での位置付け

 位相ずれプロセスの特徴である差異と一致の繰り返しが、テンポの変化以外にも、パート毎の反復音型の差異、音の動きにも反映されていることが確認できた。 fade in/outと推移部は位相ずれを緩やかにするための工夫と考えられる。
 Piano Phaseにおいて、ライヒは位相ずれのプロセスを初めて純粋な器楽で(テープなしで)実現した。 また、高音部と低音部の2声に錯覚されることは後にViolin PhasePhase Patternsに登場するresulting patterns(副次的旋律)へと応用される。

3.2.今後の課題

使用楽譜

Reich, Steve. Piano Phase. UE16156. Universal Edition, 1980.

参考文献

ライヒの著作、インタヴュー

ミニマル・ミュージックまたはライヒについて