1970.9.28〜1971.7.6(全196回)


一は一匹野郎の怪獣渡世
にっこり笑って相手を倒し
三は散々やっつけられて
死んだふりして相手を倒し
ごろりごろ寝の怪獣渡世
ろくでなしの我が身を恥じて
七転八起の心意気
八は蜂の巣この面下げて
苦労知らずの怪獣渡世
とうに忘れた浮世の情け
とかくこの世はみな殺し

                   (by みな殺しのかぞえ唄)
1970年夕方の飯時、それは突如始まった。
数多くの人間にトラウマを残す円谷プロの怪番組「ウルトラファイト」である。
「支出がゼロのテレビ番組を作ろう!」との錬金術的なコンセプトから
始められた同作品は最初の内はウルトラマン、セブンの本放送のダイジェスト版という感じなのであったが、
本編からの抜き焼きダイジェストではやっぱり間が持たないので、
急遽新作が作られたのだが、その出来は恐ろしいものであった。

最初の内は怪獣が見られるということで子供の時分の筆者はよろこんで見ていたのだが、子供心にも「やっぱり何か違う!」と思ってしまったのは事実である。

オープニング音楽とタイトルの雄叫びが何か気が抜けるというか、ナメられているというか独特の雰囲気を醸し出しているのだ。
ナレーターは山田二郎氏。TBSの番組でボクシングとかスポーツ物のアナウンスをやってらした方で、このナレーションが聞けば聞く程アシッドな妙味を醸し出しているのだ。

抜き焼き物でも最終の文句は「ウルトラマンは宇宙へ帰っていきます」とか
本編の番組設定を知っていれば「えっ!?」てな物で、多分この人本編を見ないでアドリブでその場でセリフを決めていたのではなかろうかと思える節が
見えかくれする。

またこの番組の基本設定は「ウルトラマンと怪獣とのプロレスもどき?」なので
ウルトラマンが直に手を下さなかった怪獣の最後は「自壊作用」の一言で片付けられてしまったので、怪獣博士と呼ばれていて、本編タイトルから内容まで
丸暗記していたような私のような子供は面喰らうしかなかったのである。
(当時怪獣博士は各地に大勢いて、卒業できなかった人が今でも高価なLD-BOX
を買い集めているのは衆知の事実である。ちなみに筆者は何回か卒業と
ハマリ直しをくり返した結果こうなってしまったのである。だから、視点がひねくれていたりたまに持っていない作品も多いのである。)

自壊作用のいい例としてはペスターのようにウルトラマンが登場してきた時には裏返って倒れているのでこう言うしかなかったろうがどうみてもナレーションが入るとへんてこな漫才みたいにコミカルになってしまうのである。

ところが何故かこれが第2次怪獣ブームの牽引車になったのである。
怪獣ブームから怪奇・妖怪ブーム、スポ根ブームとひと回りしたとは言え
実に変な話ではある。

ただやっぱり独特の路線を確立したのはやっぱりオリジナル編であり、
多くの人にトラウマを残してしまった伝説はここに存在するのである。

基本的に出てくる怪獣はすべてアトラクションのヨレヨレの着ぐるみ
(オリジナルとは似ても似つかない代物。たまに本編使用の着ぐるみであっても変型していて原形が変わってしまっている)

やってることはただ単に欲望の赴くまま、「譲り合いの精神」「博愛の精神」
「話し合い」という考えが欠落した着ぐるみが気の抜けたバイオレンスを、
海岸で!雪山で!河原の堤防で!単なる原っぱで!海辺の洞窟で!
円谷プロの怪獣倉庫で!ひたすら無意味にぶつけ合うという
設定があってないようなイージーかつシュールな物語でした。

ただやっているほうも悪ノリしているのが丸見えで、監督でもある熊谷健氏の
絶妙なタイトルの付け方が面白く、別に一覧にしてあるので見ていただくと
面白いが、この熊谷氏は前年、「恐怖劇場アンバランス」のプロデュースを
行い、小劇場系、もしくは70年代アングラ系の影響大の特撮番組を作った人
なので、ひょっとしてこのケッタイなタイトルは狙って付けたのかもと思える。
このタイトルの気が抜けるような作為的な作り方とコケるタイミング、
そこはかとない無常感は非常にナスカ・カーに影響を与えているのは
言うまでも無い。

でこれにトラウマを受けた人は数多い。現バッファロードーターの山本ムーグ氏もこれに変なトラウマを受けたと語っていた。
自分にとって思い入れのある衝撃映像(ちなみに他にはクレクレタコラ、
空飛ぶゆうれい船、クライマックスパート)だそうで
クライマックス以外は全てダビングしてお渡ししたのだが
「子供に見せたらつまんなさそうにしていた」と仰言っていた。
それもそうだろう。
イイ大人にならないと分からないこともいろいろあるわけである。

だが一回こんなことをやってみたいと思わせるパワーが存在するのである。
ヘタに凝り過ぎると考えただけで1日が終わってしまう内容をパワーと勢いのみで表現し、人数を集めたらパーッと撮影して夕方には酒を飲みながら見てられるというのは自主制作の鏡というべきでしょう。
いってみれば高校の学祭でドラゴンの映画を作るのと同レベルである。
そこに在るのは圧倒的な存在とスピードとパワーなのである。

というわけで全作ストーリー紹介してもどうにもならんので
気に入った作品を何点かピックアップしておきますので
今回はこれで御了承下さい。

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