発表4: 寺内克久 「ユーミン楽曲レポートと音楽的クオリアによる作曲の可能性」 副題;日本人の心の情景を変えたシンガーソングライターへの手紙

(発表50分) 15:30-16:20 質疑応答16:20-16:30

“ユーミンの曲は、ヤバい。”ポピュラー音楽作曲をしていれば、一度は耳にするだろう。
しかし具体的に、どうヤバいのか。その正体は意外と知られていないのではないか。
私は2014年3月の研究会で発表したビートルズ(1962-1970)全213曲の和声分析で得た、ポピュラーミュージック和声の分類作業をさらに押し進めるために、今回ユーミンこと松任谷由実(1954-)の分析(対象曲は370曲)に取り組んだ。
ビートルズの商業的成功によって、その音楽性は広く影響を与えることとなった。作曲行為の裾野が広がり、より自由な着想と音楽的クオリアで作曲することが可能になったと私は考えている。「音楽的クオリア」とは「音楽の展開を構築する、作曲者の心象の連鎖・脈絡」の意で私が日頃用いる言葉である。
1972年にデビューし、40年以上第一線のキャリアで37枚のアルバムを発表してきたユーミンの歴史は、ビートルズ以降の日本のポップスの歴史そのものである。アルバム売上首位を保ち続けるその功績は、他の追随を許さない。私はその歌詞と和声の技巧の具体例に対し、拙論である不定調性論を援用し、70年代以降のポピュラー音楽作曲法について、「音楽的クオリア」という語をキーワードに今回分析を進めた。
本発表では、事前のレポート(A4判120ページ分)に基づき、時間の許す限り、その音楽性の正体に迫りたい(紹介楽曲;《COBALT HOUR》《Corvett1954》《Hello, my friend》《ダンスのように抱き寄せたい》他予定)。華やかなステージの舞台裏で行われたユーミンの“常識と楽理への挑戦”にスポットを当て、その歌詞と和声の魅力を発表者なりに分析し、かつその先の作曲技法の可能性についても述べてみたい。
当会では毎回貴重な助言を頂いている。今回もジャンル、分野を問わず多くの参加者のご意見が伺えれば幸いである。