レクチャー:「ムジカ・フィクタ」について 発表概要


2015.10.4日本音楽理論研究会第27回例会


発表者 小川 伊作

 

17世紀以前(中世、ルネサンス、そして初期バロック時代)の音楽作品の現代譜(オリジナルではなく今日通用している五線譜に書き改められた楽譜)を見ると

、音符の直前の臨時記号とは別に、五線の外・音符の真上に(あるいは[ ]に囲まれて、あるいは少し小さく等々)♭や♯が記されていることがある。

もとの楽譜には記されていないが、その楽譜の(現代の)校訂者が、演奏に際しその♭や♯を付けて演奏することを提案している、というもの。

このように本来楽譜に記されていないが、演奏に際し演奏者の判断で(現代では楽譜の校訂者の判断が一段階入る)臨時に♭や♯を付ける演奏習慣

を「ムジカ・フィクタ」と呼ぶ(後出譜例6参照)。本発表では前半ではニコラス・ルートリー著/東川清一訳「「ムジカ・フィクタ」への実践的な手引」に基づき、

ムジカ・フィクタの語義、中世の音組織、諸規則について講義し、後半では見上さんからの質問に答える形で、実作品の分析をおこなう。