発表2. 隼田義博 「マリア・シュナイダーの音楽とモーダルハーモニー」 

発表(30分) 14:30-15:00  質疑応答 15:00-15:10

 近年のジャズシーンにおいて、最も最先端をいくビッグバンドとしてその名を馳せるマリア・シュナイダー・オーケストラと、そのリーダーのマリア・シュナイダー。ビッグバンドという伝統的なラージ・ジャズアンサンブルの形態を踏襲しつつも、繊細かつ色彩豊かな旋律とハーモニー、そして緻密なオーケストレーションによって紡ぎだされる彼女独特のサウンドはもはやジャズに収まらない。自身のジャズアルバムが過去2度にわたりグラミー賞に輝くだけでなく、昨年発表したアルバムWinter Morning Walkがクラシック部門でのグラミー受賞という快挙に至った事をみてもそれを物語るのではないだろうか(アルバムは室内楽オーケストラとソプラノをフィーチャーした作品で、本年2月、ベスト・コンテンポラリー・クラシカル・コンポジション部門でのグラミー受賞)。
ジャンルを超えた多くのリスナーを魅了し、まさにジャンルの垣根を越えたサウンドを創造する現代ジャズの作曲家としてその名を不動のものとしているが、日本における知名度はビッグバンド愛好家にこそ浸透しているものの、一般のジャズ愛好家にさえも知らない人はまだ多く、当然クラシック界においては知る人も少ないと思われる。本発表では、まずマリア・シュナイダーという作曲家をクラシックを専門とする方々に紹介することを主眼にしつつも、彼女の作品をハーモニー、オーケストレーション、そして楽式の視点から分析し、いかにクラシックとの接点があるかを探ってみたい。また、モーダルな旋律と和音を多用したハーモニーを特徴とするその作風から、発表者自身の研究テーマでもある「モーダルハーモニー」、とりわけモードの響きを表す和音「モーダルコード」についても紹介すると同時に、クラシックの立場からご意見を伺えれば幸いである。