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夢と破滅と 第1話 【TEXT TOP】

マサシは、ひときわ奇妙な夢の中にいた。
 
 
何もない暗闇の中に、一人たたずんでいる。
否、その闇の中には地面も空も存在するかどうかすら分からず、たたずんでいるという表現が果たして適切であるのか。
あまりに気の遠くなる闇の深さにどこまでが自分の肉体でどこからが闇なのか理解する事すら叶わず、
空間に身体が触れているという感覚や概念が闇によってことごとく吸い取られているようだった。
 
 
奇妙でない夢など存在しない…そう思うやマサシは、この暗闇の中に存在しているのは自分の意志のみである事を直感的に理解した。
意思のみ故見る事も聞く事も、触る事も出来ない。意思を敢えて生命と呼ぶのならば考える事が出来るかどうかが
自分は生きているのか単に暗闇の一部でしかないのかの唯一の判断材料となるが、その二者の識別を試みる時点でマサシは明らかに
「暗闇の中に生きていた」。
 
 
どれぐらい時間が経ったかは分からない。
意思という主観が存在している時点でこの暗闇の中で時間という客観性概念が蠢いている事は確かだが、
とにかくマサシが闇と自分自身の意思の存在理念を認識してからしばらく経った時、自分以外の複数の意志の存在をそばに感じた。
 
 
自分以外の複数の意思は、何やらマサシにとって良からぬ事をお互いに伝え合っている事が感じ取れた。
マサシはその内容をどうにか理解しようと集中を試みた。
すると。
 
 
“意思の集団”はマサシの意思の存在に気付いたかのように、その気配を跡形もなく消した。
 
 
 
 
マサシは目を覚ました。外は既に朝だ。
意思として自分が暗闇に放り出されていた夢は恐ろしいほど鮮明に覚えている。
意思の集団は数人の老若男女さまざまであった事、そしてそれらが気配を消す直前に
「この世界を破滅に導く者が、やがて現れる」
と伝え合っていた事も。
 
 
 
 
 
 
まばゆい冬の朝日を浴びてマサシは一人、虚ろに思いを張り巡らせる。
 
 
 
 
 
続く

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