Sxophone Mouthpiece HeavenのTheo氏がオリジナルマウスピースを発売した時はさすがにびっくりした。写真で見るかぎりの仕上げの良さ、それにビックリの値段で気になってしょうがないマウスピースだったのだが、あまり日本には入ってこないため、今まで吹くチャンスが無かった。Theo氏からビンテージマウスピースを買っていたトッププロたちも一斉にこのマウスピースを試しているようだ。筆者の敬愛するヤン・ガルバレク氏も含めて。
現時点で三種類のモデルとウッド製がラインナップされていて、もっともハイバッフルで鋭い音の「KALI」。ミディアムでオールラウンドの「AMMA」、もっともダークな「PARVATI」と別れている。各モデルは別個に記載するが、全モデルを通じての雑感を記しておきたいと思う。
Theo氏のWEBサイトの文章を見る限りビンテージマウスピース(特にオットリンク)の復刻というイメージが強いが、必ずしも100%ビンテージのコピーという訳でもないようだ。全体のデザインもリンクの4スターのようなショートシャンクがベリーオールドな感じだし、60年代、70年代・・・とどんどん簡素化されるシャンクのデザインも立体的で手間がかかっている。最大の特徴は独特なリガチャーだが、凄くオールドな感じにも、先進的な感じにもどちらにも見える。全体にまとまったネオクラシックなデザインで凄くカッコよく、質感そのものが高いので、非常に所有欲をそそられるマウスピースだ。
各モデルを通じて音色は太く、ボリュームが大きく出るが、下品な程のフルパワーというより、リンク的な豪快ながらも品の良さを兼ね備えていると思う。効率が良いぶんハスキーさやダークさはビンテージリンク程では無く、「リンクの代わり」を求める人には若干方向性が違うように感じられる。ビンテージ特有の「息のヌケ」や「微妙なコントロール」などは十分再現されていて、吹いていて本当に気持ちがいい。重ねて言うが「味」を最優先する人には万難を排してビンテージのリンクを選ばれた方が良いと思う。
ガーデラはデュコフのラインを極めて究極のマウスピースに到達したのだが、テオ氏のマウスピースはやはりリンクを追求して現代の最高のマウスピースを造り上げたのだと思う。Theoで最もハイバッフルの「KALI」はほとんどガーデラの「STUDIO」並のバッフルなのだが、ガーデラが「軽快」「キレ」「スピード感」を優先してるとすれば、「KALI」はそれよりも、「太く」「エネルギッシュ」で「豪快」なマウスピースだ。このサウンドは近年のヤンガルバレクのアルバムで聞くことができる、鋭くも優しいサウンドである。
唯一心配なのはガーデラでもあったように、このクオリティがいつまで持続できるのか?ということである。詳しい内状は知らないが、クオリティを保ちながら、さらに研究を重ねていただきたいと願うばかりである。なお、今の所ラインナップはテナーのみである。
Aug/2008
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