私的に・・・・ヤナギサワのカーブドソプラノがようやく音程が取れるようになって来て、そろそろキチンとメンテをしてメインソプラノとして使用しようと思った今日この頃。ひょんなことから学生時代に使用していたセルマーメタルのソプラノマウスピースのことが思い起こされた。盗難されたYSS-62R(ウエインショーターモデル)と一緒に手許から消えてから20年以上経つが、それ以来所有したことが無かったのだ。もうとっくに生産中止になってるものとばかり思っていたのだが、実はまだカタログに載っているのだった。なくなってしまう前に是非とも手許に置いておかねば!と入手の運びと相成った。(別にセルマーがヤメル!と聞いたワケではないんですが・・・)
近年では超高級マウスピースも増えて来たためそれほどの高価格とは言えないかも知れないが、一般的にはソプラノ用マウスピースとしては依然高級な価格帯のモノだと言える。
テナーにおけるオットリンクやアルトのマイヤーのように、基本的にデザインが変わらず60年代から作り続けているマウスピースとしては非常に貴重な存在だ。その上リンクやマイヤーの製作レベルの低下を考えると、このセルマーのメタルは当時のモノと比較したわけでは無いが、現在のモノもかなり良い出来栄を保っているように思う。もちろんアルト用やテナー用もあるのだがジャズでは使ってるヒトをあまり見かけない(アルトのパキートくらいか?)。「ザ・ソプラノ」のマウスピースと言っても良いんじゃないだろうか?
さて、外観からであるが、セルマーならではのクラシックなディティールで、ソロイスト時代のシャンク部分のふくらみに唐草模様が踏襲されていて、なんともクラシカルないい雰囲気だ。デザインの見どころはそれだけではなくて、マイケルブレッカーがガーデラに流用したことでお馴染みの「王」の字のリガチャー。質感もメッキもキレイなのでリガチャーだけ見ても美しいのだ。最後に独特な発想のキャップ?がまた素晴らしい。全体的なキャップと言うよりリードとマウスピースの先端を保護するガードの様なもので、似たようなものが他に無いわけでは無いが、ことセルマーにおいては全体の雰囲気にマッチしてとてもいい。やっぱりデザイン的にはマーク6やビンテージスタイルの楽器にマッチするような気がする。
内部のデザインはセルマー伝統の円形スロートでマイルドかつ息の通りが良い。コルトレーンの使用であまりに有名であるが、別にジャズ用として作られたわけではなく、ベーシックなクラシック用のマウスピースなので、これといって個性のあるタイプではないし、いわゆるラバーのセルマーの(昔のタイプ)サウンドに近いものだ。ただメタルであるぶんパワーが入るので若干ハードなサウンドにも対応できるメリットがある。基本的には上品にまとまるサウンドなので、より「キレ」の良いサウンドやもっとゴリゴリしたパワーが欲しい人は別のモノを選んだ方が良い。逆にソプラノにはコントロールと柔らかいニュアンスが付け易いラバーが好みの人も多いと思う。「中間派はツラいよ」と言ったところか?
最近は楽器屋でもあまり見かけることがないので、それほど売れないのか?とも思ったりするが、ビンテージの雰囲気を残すマウスピースとして見直しても良いものだと思う。
<2008年5月>
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