最近筆者はD8の変形などにより、特に高域のコントロールに苦労する状態に陥ってしまったが、一時的にARBを使用する事でしのいでいた。そこでこのゴッツメタルを試してみると、コントロール性はARBと同等以上の性能があり、音色はよりデュコフに近いと感じた。このマウスピースでサンボーン的に演奏すると、デュコフらしい音色はもちろん若干初期のレベルエア的な要素もあり非常に好ましい。筆者としては初期サンボーンのレベルエアサウンドも大好きなのである。
旧D8と比べて見ると、さすがにサブトーンを使用した低音やスローな曲では鉛系素材のもつ特色なのか旧D8は非常に味がある音色で、「さすがデュコフ」と思わせるものがあるのだが、ファンキーに吹く場面ではスムーズな分、逆にゴッツの方がキレ良く感じる面もある。しかしながら全体的なトーンも明るくなりすぎないのが非常に好印象。真鍮素材ではこうは行かなかったと思う。筆者のバンドではラバー的に吹く場面もあるのだが、リードミスなどの心配も無く、音色も柔らかくコントロールできて全く問題が無かった。サブトーンも十分に気持ちよく出せる。なおARBも非常に個性的で良いマウスピースではあるが、ステンレス特有の高周波や音の細さには好みもあり、メインで使うには至らなかった。
全体としては非常に良くできたマウスピースで、上級者はもちろん、初めて使うメタルとして選んでも問題ないと思う。試しに普段あまりサックスを吹かないどちらかというとクラシック系の音色のプレイヤーにも感想を聞いてみたが(普段はマイヤーを使用)吹きやすさはマイヤーよりスムーズだということで、筆者が聞いた所音色も、歯切れよい割に耳障りな部分はなく、リードミスも無く「普通に良い音」であった。このことからも、ジャンルやプレイヤーを選ばない、使いやすいマウスピースだと言える。
価格は安くはないが、近年の高価なハンドメイドマウスピースと比べればクォリティの割にはむしろ割安だとも言える。現行のデュコフも割と高価なので、ブランド名を気にしないならばゴッツの方が気持ちよく吹けると思うし、逆にデュコフを知らない方が先入観無しに選んでも失敗はしないと思う。ちなみにオープニングはデュコフと同じものを選んでも良いが、リードは少し固いものが必要になってくると思う。効率よく鳴るので、リードが柔らかく感じるからだ。ちなみに筆者はデュコフD8+ラヴォーズMSに対して、Gottsu7+ジャズセレ3Mと言う組み合わせを試している。
不満な点は特にないのだが、リガチャーをなるべく後ろに付けたい筆者としてはリガチャーがバレルからはみ出してしまうのだ。なんとか止まるので問題は無いのだが、ちょっとバレルを長くしていただきたかった、とちょっと思うが、竹マウスピースからのデザインの流れで、短めのバレルがゴッツさんのデザインアイデンティティなのかとも思ったりする。リガチャーは割と選ばないマウスピースで何を付けてもそれなりに鳴るが、現在はハリソンやロヴナーED2、バネリガチャなど色々試している。
最後に、デュコフタイプということで古いものとの比較ばかりを考えがちなのだが、先入観なしに楽しく吹ける素晴らしいメタルマウスピースで、プロやコレクターの様に状態のいいデュコフを探し求める余裕の無い筆者などはメインを変える時がやっときたのかなと思っている。
<2009年8月>
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