Gottsuさんから全く新しい竹製マウスピースのサンプルが届いた。煤竹を使った2ndモデルである。今までのものと異なるのは、節がシャンクの部分に来ていることで、より「竹」を強調したデザインになっていることと、コーティングの樹脂の厚みを増したため、一般的なラバー用のリガチャーが使用可能になっていることである。
さて、大き変わったデザインは好みもあるとは思うが、インパクトと言う点では成功していて、シャンクの終わりに「ふし」が来るため、他では全くあり得ない、竹ならではの風合いを出すことに成功している。好むと好まざるに関わらず、プレイヤーから注目を浴びるのは必至だろう。また、肝心の仕上げは非常に美しく、工芸品のレベルに十分達していると思う。
サウンドは一言で言えば「ふくよか」で非常に太いサウンドだ。音量もかなり出るのだが、ラバー的な「軽さ」とも違うし、メタル的な「鋭さ」とも違うなんとも形容しがたい響きを持っている。ジャズプレイヤーにとってはバズノイズというか、サブトーンの割り合いが気になるところだとは思うが、そこはGottsuさんがジャズプレイヤーでもあるため、そういうジャジーな味付けは忘れていない。当然ビバップに使ってもなんの違和感も無い。
アコースティックなバンドにこそうってつけのサウンドだと筆者は思うが、エレクトリックでもサウンドが負けるわけでない。
最近懐かしのフュージョンを演奏する機会があって、(スパイロジャイラや渡辺貞夫など・・・)使用するマウスピースを選んだのだが、やはり定番のマイヤー、筆者のお気に入りのトナレックス、ちょっと鋭めのランバーソン、それからこの煤竹が候補に残った。
マイヤーはなるほどの音色なのだが、高域がちょっと細く、トナレックスは吹きやすいものの、フラジオに物足りなさを感じて今回はパス。ランバーソンはこれはこれでいいのだが、もう少し柔らかが欲しいという感もあり、結局この煤竹に落ち着いた。
一般的なラバーよりも結構エッジがあってマイク乗りも良く、フュージョンくらいのエレクトリックでも全然音負けしないことが良く分かった。リードやリガチヤーのセッティングに少し時間がかかったが、決まってからは非常に吹きやすい状態が続いている。結構硬めのリードでも軽く鳴らせてしまうのだ。
ラバーのサウンドでもっとバリバリ吹きたいが、音量は欲しいけど音質はあまり硬くしたくないし、メタルはいやだという人には最適で、音程はとりやすく、非常に良くできたマウスピースで、全然奇をてらったモノで無いことだけはハッキリ言っておきたいと思う。どちらかというとパワーブロウタイプのプレイヤーには好まれるタイプだと思う。
弱々しくサックスを鳴らすタイプのプレイヤーには「何がいいの?」と思われるかもしれないが、そういう人はマイヤーくらいまでで留めておけばよいだろう。逆に「とにかく攻撃的なパワーを・・・」となればレイキーかはたまたメタルに行かれてもよいと思う。
柔らかさも持っていて、パワーや若干の下品さまで出せるとなると、他にはなかなか無いもので、微妙なサジ加減というか、「Gottsuさんなかなか良い趣味してるな・・・・」などと筆者は感じてしまうのである。ピアニッシモでは若干コントロールの柔軟性が無い感じがするのだが、これは中〜大音量ではリードが軽く感じてしまうため、硬めのリードをつけてしまうせいかもしれない。
サウンドにメタルのような分かりやすい個性は無いため、ちょっとの試奏で「良い!」とは感じにくいかもしれないが、様々なシチュエーションで吹く度に良さがじわじわと認識できてくる、「スルメ」のようなマウスピースだ(煤竹は色もちょっとスルメっぽい?)
ビンテージのマウスピースほど「ドライ」さを追求するのではなく、ウエットな色気もあってそこが良い。ルックスからもサウンドからも「日本」を感じさせる、超個性的なマウスピースの誕生である。
<2007年5月>
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