SAXZ

(David Sanborn Solid Silver)

サクゼト(デヴィッド・サンボーンモデル純銀)

Ballad (New Ver)※追加コメントあり

Ballad

Funk

SAXZという日本のメーカーより、デビッド・サンボーン氏とのやり取りの末に完成した、(もちろん本人が使う為の)サンボーンモデルが登場した。
”SAXZ"は「サクゼト」と読むそうだ。(海外ではサクスズィーと発音する人も多い)


伊東タケシ氏のモデルなども手がけており、そちらは以前にちょっと吹いてみた事があるのだが、今回はサンボーン氏のモデルをSAXZさんのご好意により長期テストさせていただけるようになったので、じっくり吹いた上でのインプレッションを書く事にする。貸して頂いたのは総銀製の非常に贅沢なモデルである。

<サンボーン氏とマウスピース>
デビッド・サンボーン氏と言えば、セルマーのマーク6にデュコフD8とハリソンのリガチャーというセッティングでお馴染みだが、それに落ち着くまではブリルハートのレベルエアや、ヤマハのYAS-62にビーチラーという時期もあったり、はたまたSAXWORKSというブランドでオリジナルサンボーンモデルを開発し、本人も一時期使っていたと記憶している。もちろんその他にも我々の伺い知れないところで、色々なマウスピースを試してこられたことだろう。しかし、自分の名を冠したモデルが市販されるのは、筆者の記憶ではSAXWORKSに次いで二回目である。

※追記

SAXZ社はサンボ−ン氏と正式に契約を結んでるとのことで、これはマウスピースとして世界で始めてだと言う事だ。

<外観・デザイン>
まず、いつものように外観から見ていくと、さすがのスターリングシルバーの質感で、奥深い光沢に貧乏性な筆者は思わず手が震えてしまいそうになる(笑)。全体的にはデュコフのようなフォルムで、バイトプレートは無く(プレート入りも検討されたが、サンボーン氏の意向によりこちらの仕様になったとの事、購入者は好みに応じてプレート付き仕様にもできるそうだ。)、デザインも装飾がなく非常にあっさりしたものだ。"David Sanborn"の刻印が唯一高揚するポイントかもしれない。バレル(胴回り)がデュコフより若干細くデュコフ用ハリソンでは一杯に閉めても完全ではないため、リガチャーについては何か別の物を考えなくてはいけない。

バッフルの形状はデュコフのおなじみ"D"タイプのものと一見同じような感じだが、ティップからはじまったバッフルが折れ曲がって天井に到達する場所にあるはずの、丘がない。逆にえぐれているので、チャンバーの容積を稼いで、息の量を多めに取れる設計にしているのだろう。ここからもデュコフとの方向性の違いが見て取れる。チャンバーは独自の設計になっているようだ。ちなみに内部はブラスト加工されている。これはスモーキーなサウンドに貢献するだろう。

<ファーストインプレッション>
くわえた感じは非常にデュコフに近く、薄めの物が多い昨今デュコフから換えても(特に厚みが)違和感の無い物になっている。筆者にはこれは非常にポイントが高かった。

まず軽く吹いてみての感想であるが、リッチなサウンドとピアニシモでの安定性には舌を巻いたものの、正直手放しで「これはいい!筆者にピッタリ。」という印象は得られなかった。(リードの選定、セッティングなどを進めるにつれて好印象に変わって行ったので、御心配なく。リードの選択は非常に重要だ)短時間での試奏で得られる情報には限りがあるのだが、SAXZのようなマウスピースは奥行きが非常に深く、すぐには全体像が掴みにくい物だ

<デュコフと比べてどうなのか?>
やはり皆さんが気になるのは「オリジナルデュコフと比べてどう違うのか?」と言うことだろうと思うので、とっておきのデュコフを用意して比較してみた。
筆者が常々吹いている古いD8だ。80年代のもので、所謂”黒デュコフ”をサンボーン氏用にボブ・アッカマン氏が加工したものである(最近までサンボーン氏が使用してきたマウスピースにまあまあ近いものだと言えるだろう)。

SAXZは上下、強弱、均等な感じで、高音〜フラジオまで駆け上がって行く。対してデュコフは低域では枯れたような独特のサウンドで、高音〜フラジオ域だとキレたような凶暴な音色に変身する。。。「味」と言う点ではデュコフに変わる物は無い、とも言えるが、色々なシチュエーションの曲をデュコフだけで吹ききるようなことも、これまた非常に骨の折れる作業である。(たとえばジャズコンボでコンファメイションなんかをデュコフで吹くのは非常にキツい!)、なので筆者などはそこで軟弱にもラバーのマウスピースに変えたりしてしまうのだが、SAXZの場合は、何の不安も無くラバーのように譜割の細かい曲でも吹ききれてしまう。
フラジオは笑ってしまうほどラクに吹けてしまう。

さらに大音量のバンドにおいてはパワーを十分に入れて吹きたいところだが、デュコフは高音では特に詰まり気味になるのに対して、SAXZは余裕で息が入り、パワーフラジオも非常に良く抜ける。音量の幅については、銀の素材的なポテンシャルも大きく貢献しているのでは?と直感するのだが、SAXZの渡辺氏からはチャンバー設計によるものが大きいと聞く。銀という素材は、設計を間違うと精細な音量コントロールとはかけ離れたマウスピースになってしまうことがあるということだ。

筆者は当初デュコフと同じような感覚で、このSAXZマウスピースに取り組んでいたのだが、しばらく吹き、また録音を聞き直しているうちに「これは本当にデュコフを復刻したようなものなのだろうか?目指す方向がちょっと違うのでは?」と思うようになって来た。
というのも、デュコフではそれなりに強く吹けば(逆に言えば強く吹かないと)出力が行き止まりを見せて、ややバリバリと凶暴な、しかし安定した「例の」サウンドになる。それ以上吹いても音色はそれほど変わらないし、音量も上がらない。詰まるような感じになり、その苦しい感じが所謂「デュコフの味」とも言えるだろう。(もちろんラバーなどよりははるかにボリュームが大きいが)
それに比べると、SAXZは限界点が非常に高い。デュコフが吹き手のパワーレベル7以上はいくらでも同じように鳴るのに対して、SAXZは7は7なりに、8は8なりに、9は9なりに鳴ってくれる。そうなってくると、フォルテの領域は吹き手が決めなくてはならなくなる。中には「めんどくさい」という人もいるだろうし、逆にその領域で楽器をコントロールできるプレイヤーには(もちろんサンボーン氏を筆頭に)非常に強い味方になるだろう。

メタルをメインに吹くプレイヤーの多く(色んなシチュエーションでも基本的にメタルで対応する人)は、比較的ブライトな音色が欲しいが、テクニカルな曲や難しい譜面にも対応する為に、デュコフよりはバッフルの低めで、安定して吹きやすいメタルを使用する傾向がある。(一般的にはビーチラーメタルや市販品のヤナギサワメタルなど)しかし、あの”D”バッフルでしかあり得ない、スピード感のあるフラジオも吹ける上に、抜群の安定感を持つところがこのSAXZの大きな魅力だと思う。「プロフェッショナルの道具」という雰囲気をひしひしと感じる。

最後に楽器との組み合わせだが、筆者のマーク6は70年代中盤の物で、サンボーン氏のものとはかなり反応も違うだろう。全体の音色は固めで金属的な音色であるのだが、総銀の響きを加えても、耳うるさいというほどでもない。バリバリ鳴るだけのマウスピースでは無い事は強調しておきたいところだ。

<SAXWORKSと比べてどうなのか?>
筆者の手元に現在SAXWORKSが無いので、記憶をたよりに・・・ということになるのだが、SAXWORKSはパワーリミットがデュコフよりも低めで、(もちろんSAXZよりもかなり低い)ピアニシモからの立ち上がりが早いので、すぐにMAXまで到達してしまう。ゆえにパワーサウンド時にまとまりがあるのだが、レンジは広く無い。「元気なサウンド」で一貫する場合はSAXWORKSは良い相棒となるだろうし、ピアニシモでのコントロールももちろんデュコフよりしやすい。「デュコフサウンドを上手く手なずけた」感じだ。


対してSAXZはもっと全体に深く掘り下げた感じで、ピアニシモの音色にもラバーのような深みがあるし、MAXはもっと上にある感じだ。
SAXWORKSがきっちりまとめたデュコフだとしたら、SAXZはカッチリとも吹け、凶暴にもなれるデュコフの範囲を大きく広げるマウスピースだとも言えようか。キャンディー・ダルファーがSAXWORKSからリバイユにチェンジしたのもMAXパワーでの表現力に限界を感じたからではないだろうか?

<キャリアの短い人でも大丈夫か?>
あまり周囲に見せる事は控えていたのだが、筆者がレッスンをしている経験3〜4年のプレイヤーにあえて吹いてみてもらったところ、「こんなにフラジオがきっちり決まったのは初めてで、なにしろ非常に吹きやすい。」との事だった。安い値段ではないのでこの純銀モデルをいきなり手に入れるのもためらいがあると思うが、そういう場合は銀以外にメタル仕様などもあるので検討されたい。吹きにくいマウスピースで無い事は間違いないが、総銀の性能を発揮できるかは本人次第になってくるだろう。

<注意点>
リードは選ぶタイプのようで、リードによってかなり音色も変わってくると思う。しっかりしたリガチャーを用いて、リードのセッティングも慎重にしたいものである。そうでないと試奏時にも最高のパフォーマンスが得られず、このマウスピースの真価が発揮できない。


楽器とのマッチングも慎重に考慮するべきで、筆者の23万番台マーク6も状態も完璧ではないので、非常にヤバイ。フルに吹くとパワー負けしてしまう。現代の楽器でもそこそこ吹き答えのある物と合わせなければマウスピースがもったいない。

伊東タケシ氏のようなセルマーのスターリングシルバーとか、カイルベルスのシャドウとか、ゴールドプレイトの楽器とか、パワーに余裕のある楽器が欲しくなってくる。


最大音量がかなり上がるので、フォルテシモばかりで吹いてると、今度は自分のアンブシャーを支える筋肉や、肺など内蔵系の筋肉の持続力との兼ね合いになってくる。自分を鍛えて上を目指すか「オレには合わない」とするかはその人次第だ。

<どんなシチュエーションで使ってみたい?>
かなり広い範囲で使えるマウスピースなのだが、筆者的にはフルパワーで吹くのではなく、中くらいの音量で(自分の中で)力を込めながらも息を殺して、ソロを吹いてみたい。エレクトリック楽器にももちろん良くマッチするし、マイクを使ったライブ、レコーディングで真価を発揮するだろう。

ケースは現在別のものに変更されています。

<最後に>
筆者の非常に個人的な好みなのだが、メタルマウスピースでもパワーが入るとはいえ、金メッキの仕上げのものは見栄え的にあまり好みではないので、純銀モデルというのもパワーありつつシルバー色なのが意外にウレシいポイントだ。

サンボーンのサウンドを目指す人も、自分のサウンドを作りたい人にもオススメなのだが、特にサンボーンフォロワーにとって、オールドデュコフはますます入手困難になってきたし、SAXWORKSもさらに見つけるのは難しい。現行機種でサンボーンサウンドを狙うには「コレしかない!」的なマウスピースだろう。試奏できるチャンスを見つけて是非一度吹いてみてもらいたい。

2011/11/10

お問い合わせはSAXZまで

<追記>
SAXZのMitsu Watanabe氏より、サンボーンモデルの若干仕様が異なるモデルを送っていただいたので、前回試奏したものと変わった点をレビューしておこうと思う。今後はこのパターンのものが市販モデルのベースとなるようなので・・・

なお、音源の一番上のボタンはこのNewバージョンマウスピースで録音したものである。筆者としても純銀マウスピースへの対応が少しはできるようになったのと、仕様が若干変わっていることもあり、前回よりはパワフルに吹けていると思う。

音色、パワー共にそれほど変わる所はないのだが、パワーコントロールが随分ラクになったような気がする。前回のモノは豪快な吹奏感で、ピアニッシモから一気にレッドゾーンまで吹け上がる感じがあったのだが、今回のモノはその中間部分が使いやすくなっている感じだ。フルパワーの「5割」とか「7割」とかで安定して吹けるようになったのがウレシイポイントだと思う。

もちろん必要な時には他のマウスピースでは得られないハイパワーの強烈なサウンドが出せるし、前モデルと同じくピアニシモでも安定したトーンで、ハイバッフル特有の不安を感じずに吹ける。MAXパワーでも音色が下品になり過ぎない所がサンボーンの好みだあろうと思うし、筆者も大賛成である。

それでも肉体的にはキビシい部分はもちろんあって、パワーもすごく反応も早いので、音程の変化も過敏で、自分のビブラートやベンドのクセなどが、はっきりと出てしまう。自分の弱点も長所も限界もひっくるめてさらけ出してしまうという恐ろしいマウスピースである。ある意味「腹をくくって」吹かないといけないマウスピースであるが、チャレンジするだけの価値のあるサウンドに近付けると思っている。

音色のキャラクターとしては純銀にハイバッフルという仕様なので、もちろんブライトなサウンドのマウスピースと分類されるのはいたしかたないが、筆者としては長期に渡ってなるべくいろんなジャンルでこのマウスピースを試してみたいと思っている。ひと昔前の「ギャンギャン」ハイバッフルとは違って「大人の余裕」を持ってるマウスピースだと思うので・・・・

ライブでも数回使ってみたが、楽器はそれほどいじってないのに、フルパワーでのフラジオが抜けるようになったり、マウスピースの性能を引き出そうとあれこれやってるうちに、音色もとても良くなって来ているように感じられる。

筆者はサンボーンモデルのメタルくらいが自分のパワーに合っていると感じて、メインにしようと思っていたのだが、このスターリングシルバーのパワー感溢れる音色と、艶っぽさ、表現力の広さに完全にノックアウトされてしまい、メインとして使用する事にした。

筆者もメタルマウスピースが大好きで、長年かけて色々と吹いて来たのだが、その中でも文句なくサウンドも性能も「最高」と言い切れる金属製マウスピースだと思う。我がサックス人生をかけて向き合っていきたいマウスピースなのである。

2012/06/11

<追記2>
メインの楽器をマーク6からシリーズ3のブラックラッカーに替えた。

ウソのようにフラジオがコントロールできる。イマイチのマーク6でもほぼカンペキにフラジオが出せるサンボーンモデルもスゴイと思っていたが、楽器が良ければもっとラクなのだ、と痛感。マーク6+デュコフでは「あそこのフラジオがらみのフレイズ、大丈夫だろうか」という心配があったが、シリーズ3+サンボーンモデルの組み合わせでは一切起きない。

以下、シリーズ3ブラックを使用した音源をUPしておきたいと思う。楽器の記事はコチラまで。

Ballad

Funk

2013/02/22

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SAXZ

(David Sanborn Matal)

サクゼト(デヴィッド・サンボーンモデルメタル)

Ballad #8

Funk #8

今回発売されたサンボーンモデルはスターリングシルバーだけではない。メタル素材のマウスピースもラインナップされているのだ。衝撃的な純銀という素材に比べると「なんだメタルか。」と思う人もいるかもしれないが、ちょっと待ってもらいたい。結論から言えば「筆者が経験した中で最高のメタルハイバッフルマウスピース」だったのだ。

もちろん今までもデュコフやいくつかのハイバッフルマウスピースを常用してきた筆者だが、
多くは「飛び道具」として、短いソロや間奏のような(サンボーン氏がボーカル物のレコーディングでソロを吹いてるような)状況で使う事が多かった。つまり、サックスでメロディーを(何曲も)吹いたり、難しいアンサンブルだったりにはラバーに変えていたワケだ。ワンホーンのフュージョンバンドみたいな状況では、演奏時間が長いため口も肺もバテてしまい、シビアなハイバッフルでは音程や音色のコントールがままならなくなることが起こっていた。

しかしこのマウスピースだったらメタルのまますべていける希望が出て来たのだ。

<外観・デザイン>
基本的にはスターリングシルバーと変わりないデザインなのだが、鳴りの追求の結果、純銀が若干細いバレルになっているに対して、メタルはデュコフにほぼ近い太さになっていて、一般的なハリソンでもすんなりフィットさせることができる。

素材についてはさらに「衝撃的な事実」がある。一見すると現行デュコフのような合金のシルバー色に見える。決して真鍮やステンレスのような素材感ではない。配合は詳しく分からないのだが、衝撃的なのは「サンボーン氏が持ち込んだ素材」だと言う事だ。
我々が考えるよりもサンボーン氏はマウスピースに精通しており、素材に関しても相当な研究の結果、このタイプのマウスピースに最適なものを発見したということなのだろう。吹けば分かるが、ハイバッフルに最適な、鳴りすぎない、まとまった音がする最高の素材だ。

各部の仕上げはスターリングシルバ−でも述べたとおり、ハンドフィニッシュの完璧なもので、非常にハイレベルの仕上がりになっている。

<ファーストインプレッション>
純銀ほどの強烈なダイナミクスでは無いので、(それでも普通のデュコフよりもパワフルに鳴るのだが)筆者にとっては違和感無く、扱いやすい。ハイバッフルにありがちな耳障りな感じが無く、存分にパワー入れてもエネルギッシュに鳴ってくれる。良い感じだ。

吹くのに難しさを感じる事はなく(ハイバッフルを全く吹いた事の無い人は判らないが)コントロールに苦労することもない。

くわえた感じもデュコフに近く好みだ。近年のビークが薄く、くわえにくい(ARBなど)マウスピースが多い中で、しっかりと厚みがあって、筆者には違和感が無い。

<ライブで使ってみて>
早速ライブで吹いてみたのだが、会場は30人ほどで一杯の狭いライブハウス。エレクトリックサウンドのJAZZ〜AOR系の女性Voバンドだ。かなり小さい音から、ドラムがフルパワーで鳴ってる大音量まで対応するのは大変なのだが、大音量でもキッチリ音が抜けるし、小さい音でもうるさくない音色で吹く事が出来た。ちなみにリードミスは皆無であった。

ライブでは生音だけのモニターとなるので、ドラムがフルパワーになるとオバーブロウ気味になってしまうのだが、そうなるともう若干開きの大きいものが欲しく思われた。(筆者には8番くらいがベストのようだ)

録音を聞いても、エネルギッシュに鳴っているのに耳うるさくなく、バンドサウンドに心地よく溶け込んでいる。

<総合的な感想>
デュコフと比べても、コントロールの容易さは抜群であるし、パワフルなフラジオは安定感があって気持ちよく吹ける。リードミスも起こりにくいので、マウスピースの事ばかり気にしていないでリラックスして吹く事ができる。あまりに楽器が鳴るので、フラセルのはずの筆者のマーク6がアメセルのいいやつになったような感覚だ。

今までさんざん色々なマウスピースを吹いておきながら、改めていいマウスピースでは楽器を変えたくらいの変化が生じる事を再認識させられた。

話はちょと横道にそれるが、近年筆者はブランドに関係なく、スピード感のあるハイバッフルのサウンドを持ちつつ、ジャジーな曲も柔らかく吹けるマウスピースを探してきた。それらは音楽に広く対応するためのもので、選んだものはちょっと古めの、あまりバッフルが高すぎないものとかが中心だった。

しかしながらSAXZのように、ちゃんとバッフルが高いのに高音も抜けが良く、中低音もピアニシモも柔らかく吹けるマウスピースを知ってしまうと、ハイバッフル独特のフラジオ音が得られるので、これは是非使いたいと思ってしまった次第だ。SAXZのチャンバー設計は非常に高度で巧妙なものだと感心させられる。

素材に関しては前述のとおり、「サンボーン氏が持ち込んだ素材」ということだが、これが実に良く、「ワカッテる」なぁと実に感心させられる。世界最高の奏者に「ワカッテる」というのも失礼な話だが、心底感心してしまったのだからしょうがない。

ここからは持論だが、ハイバッフルのアルトマウスピースは「鳴る素材」で作っても、大抵うるさく鳴ってしまうだけで、やたらパワーだけが欲しかった時代ならいざしらず、現代では良いマッチングだとは思えない。「マウスピースだけが鳴りを主張する」のでは全体には良いサウンドにならないと思う。それでは「銀」はどうなのか?という人もいるかもしれないが、「銀」は設計次第で鳴る素材にも鳴らない素材にもなるようで、素材だけで判断できるものではなさそうだ。とにかく、このサンボーンモデルの合金素材はドンピシャだろう。

<キャリアの短い人でも大丈夫か?>
ハイバッフルとしては非常に吹きやすいマウスピースなので、メタルハイバッフル入門でもオススメだし、そのままキャリアを積んでもずっと使い続けることができるだろう。セルマーのC*からいきなり変えても絶対に大丈夫!とまでは言い切れないが、ハイバッフルの吹きかたのコツだけは当然マスターする必要はあるだろう。

純銀、メタルの他にハードラバーのサンボーンモデルがあるので、そこから入るという手もある。

<注意点>
個性もあって吹いていて楽しいマウスピースなので、筆者的には注意点も見あたらないが、リードのセッティングやリガチャーなどにはやはり気を使った方が良いようだ。

柔らかめのリードで息を多く入れたい筆者としては、今回試奏した7番よりは8番くらいがいいように思う。

それからいくら筆者が良い、といってもハイバッフル自体がキライな人には合わないかな?ハイバッフルは息の軌道が狭いので、スムーズに大量の息を送り込むためにはフォームやアンブシュアを作りなおす必要があるだろう。

ハイバッフルファンには是非オススメ。特に「どいつもこいつも簡単に鳴りやがって、もっとパワーを入れてもうるさいだけじゃないマウスピースは無いのか?」とお嘆きの貴兄に。(貴姉にも)

<どんなシチュエーションで使ってみたい?>
これはもうサンボーンになりきって、バリバリとファンキーに吹いてみたい。耳やかましくないし、フラジオも例のサウンドなので言う事無し。さらにはサックスメインのフュージョンバンドで、メロウにもハードにも。

<最後に>
最近ケースが変更され、写真のような筒状の樹脂の半透明のシンプルなものになっている。ポンゾールのケースでもお馴染みの形状だが、SAXZではより径が細めで中でマウスピースが動きにくいものを採用している。常々筆者はこのタイプのケースが最高に実用的だと思い、日頃愛用しているので今回のこのケースの採用はとてもうれしい。

2012/02

お問い合わせはSAXZまで

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SAXZ

(David Sanborn HR)

サクゼト(デヴィッド・サンボーンモデルハードラバー)

Ballad #7

Funk #7

なんとビックリ!サンボーンモデルのハードラバーである。これはサンボーン氏が使うというよりも、サンボーン氏のサウンドを追求したいが、いきなりメタルに変えるのは・・・・という人の為に開発されたモデルだと言う事だ。


確かに普通のハードラバーマウスピースからデュコフのようなタイプの「メタルハイバッフル」にいきなりチェンジするのはかなり大変なことだと思う。多くの人はバッフルが低めのメタルから入って、慣れて行くことが多いと思うのだが、なるほど、ラバーでハイバッフルという方向も確かにある。

<外観・デザイン>
ハードラバーでハイバッフルのマウスピースだが、胴は細めでメタルに近く、なかなかカッコいいスタイルだと思う。メタルのデュコフ用ハリソンなどもそのまま使える。

このような感じのデザインは今はもう作ってないだろうが、デュコフのラバー(プラスティック?)タイプに近いだろう。筆者は数点所有してるが、デザイン的には結構好きだった。キャンディーダルファーがデビュー当時、このデュコフラバータイプを使っていたのは有名だ。これはデュコフのチャンバーそのままでありながら樹脂の素材が意外なマッチングで面白いコンセプトだったのだが、精度や耐久性を煮詰められる事無く廃版になってしまった残念なマウスピースだった。

一般的にラバーでハイバッフルのタイプは、70年代のブリルハートレベルエア、や90年代のランバーソンやブランチャー、現在でも製造中のバンドレンJumboJAVAなどいくつかがあるが、これらのバレルは一般的なラバーの太さで、セルマーやマイヤーのようなラバータイプ用のリガチャーを使う。遠くから見るとやはり普通のラバーでしかないため、外観上の面白みはイマイチ感じられない。

対してサンボーンモデルはラバーとは言っても、細身のシェイプでサウンドを連想させる所が素晴らしい。

<ファーストインプレッション>
ハードラバーという素材の性格なのか、非常に出だしがラクに吹ける。一般的なラバーから乗り換える場合、メタルの重さを感じない分、ストレス無く吹けるだろう。

SAXZサンボーンメタルと比べても、若干明るく、元気な音の印象だ。ラバーであるが故の抵抗感の軽さはあるが、意外にも息はかなり入るので、パワフルに吹く事に不足は感じない。筆者でも限界近くまで吹き込んでも問題なく息が通り、楽器が豪快に鳴ってくれる。

<ライバルと比べて・・・>
ライバルと言うライバルは存在しない、と言ってもいいのだが、筆者の趣味の世界なので、ムリヤリ比較させていただく(笑)

近年はハンドメイド系のマウスピースメーカーが増えて来ていて、それぞれにハイバッフルのラバーマウスピースも作っていたりするのだが、あまり吹く機会に恵まれないので、一般的に手に入りやすいヴァンドレンのジャンボジャバと比べてみた。

ジャンボジャバは造りのバラつきは多少あるものの、筆者所有の個体はなかなか良い状態で、安価な割に個性的な音色が出せるので、一部で根強い人気がある。バッフルは高くて長く、ラバーとしてはキレのある存在感のある音が出る。コントロールもなかなかしやすく、パワーも入る。音色もラバーらしい低音とハイバッフル特有の高音がブレンドしていいのだが、筆者の好みでは高音が出過ぎではないかと思う。録音を聞くとそれが顕著で、高音成分が目立って細い感じの音色になってしまう。ライブで生音で使う分には面白いマウスピースだろうと思う。SAXZと比べるとデュコフ系というよりは「ドンシャリなマイヤー」といった感じが適当な表現かもしれない。あまりバリバリ鳴らさない方がこのマウスピースの本領を発揮できるかもしれない。

次にもう廃版となってしまっているハズのデュコフのプラスティックと比べてみた。

ずいぶん久しぶりに取り出して吹いてみた所、第一印象は「あれ?こんなに 音よかったっけ?」という良いイメージだったのだが、やはり造りの荒さが響いているのか、思い通りに完璧にコントロールするのは難しく、また素材も耐久性が未知数な部分もあり安心して使い続けるのはやはり難しいようだ。面白いコンセプトとデザインだけに「惜しい!」という感じが否めない。

<ライブで使ってみて>

早速ライブで吹いてみたのだが、会場は30人ほどで一杯の狭いライブハウス。エレクトリックサウンドのJAZZ〜AOR系の女性Voバンドだ。Vo,Key以外は生音で、Gu,Bassはアンプのみ。サックスは一応マイクで拾っているが、ドラムが本気で叩くと非力なPAではなかなか音の通りが良く無い状態だ。マイヤー系のラバーマウスピースなどではほぼ自分の音はモニターできなくなる。SAXZのラバーではほぼメタルと変わり無いパワーを出せ、パワフルにフラジオで叫んでも詰まる事は無かった。

静かな曲ではラバー特有の口当たりの良さが幸いして、音色もまろやかでピアニシモでも扱いやすい。

SAXZメタルのウォームで太いメタルサウンドと、ラバーのキレがありつつもコントロールのしやすさでどちらを使うか悩む所なのだが、やはりこのバンドではパワーに余裕のあるメタルを選びたい。

サックスメインのフュージョンではHRが対応力が広くてよさそうだ。(PAありきのバンドなのでそれほど絶対的パワーは必要無いので。)

<総合的な感想>
筆者の印象では、一般にハードラバー素材のマウスピースをハイバッフルにすると、元気なサウンドではあるのだが、割合下品な鳴り方をしてしまうように思われる。(軽く吹いても元気なサウンドで、それ以上パワーを入れると荒れた感じになるのが一般的だ)「ビャー」というような細くキツい高音も出がちになる。SAXZのラバーはこういうスタイルのマウスピースとしては非常にジェントルで、サンボーンサウンドの「鋭さ」を保ちつつ、「下品」な方向に行かないよう、チューニングされている。(もちろん奏者の吹き方一つで変わるものだが)中低域が太く出て、高音部だけが浮ついたようにはならない。

メタルほど重量が無いため、フルパワー時の「押さえ」が効かないのはラバーの宿命であるが、完璧な仕上げや、優れたチャンバーデザインによってフルパワーでも音がつぶれたり詰まったりする事は無い。

ハードラバーの利点である操作性は非常に良く、ベントや細かい音程変化を非常に付けやすく、ラバー独特の柔らかいニュアンスを表現しやすく出来ている。サンボーン氏だけでなく、フュージョンやジャズのプレイヤーはサックスを「歌わす」ために音符には無いニュアンスを多用している。メタルでこれを操るには初心者にとっては結構アゴの力を必要とするので、サンボーン入門者にはこのハードラバーの存在価値は大きいと思う。

「入門」とばかり言うと、初心者向けのマウスピースだと誤解されかねないので、付け加えると、筆者がフルパワーで吹いても答えてくれる、表現豊かな、プロの使用にも当然耐えうる、質の高いマウスピースである。

近年はダーク系サウンドが流行なのか、吹きこなすのを難しいと思うのか、ハイバッフル系のマウスピースを使う人が昔ほどいなくなっている印象がある。

作りの悪いデュコフで懲りた人もいるかも知れないが、是非SAXZのような良い設計で仕上げの良いマウスピースで、ハイバッフルの良さを知って欲しいものである。

<キャリアの短い人でも大丈夫か?>
これは、例によってキャリアの浅めの人に吹いてもらった所、一番違和感無く、フラジオも非常に出しやすく、サンボーンモデル3兄弟の中でも「ベスト」だという事だった。

もっとパワーを入れて吹きたい人にはメタルか純銀を選ぶ手もある。

<どんなシチュエーションで使ってみたい?>
これ、以外にホーンセクションとかでも良いんじゃないかな?ボリュームも出るし、ソバ鳴りもあってモニターしやすいし、埋もれないサウンドになると思う。作りが良いので早いフレイズも吹きやすいし、ソロの時も大音量のバックに負けないボリュームで吹けると思う。

あとはやはり現在活動中のフュージョンバンドで・・・、基本80年代のカバーが主なのでメイヤー系のプレイヤーとデュコフ系のプレイヤーの曲が混在する。そういうシチュエーションではどちらにも行きやすいんじゃないかと思っている。

<最後に>

最近ケースが変更され、写真のような筒状の樹脂の半透明のシンプルなものになっている。ポンゾールのケースでもお馴染みの形状だが、SAXZではより細めで中でマウスピースが動きにくいものを採用している。常々筆者はこのタイプのケースが最高に実用的だと思い、日頃愛用しているので今回のこのケースの採用はとてもうれしい。

2012/02

お問い合わせはSAXZまで

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筆者とは違う視点の方も多いと思います。広く意見をお寄せください

< SAXZ David sanborn> size(opening&facing・・・)

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