ごう音が出そうなデザインなのであるが、意外に細部の造りはちゃんとしてて、バリのラバー愛好者は意外と多いのもうなずける。吹いてみると、しっかりとした抵抗感の割に出てくる音は素直でダークなJAZZサウンドで、メタルのような「鋭いサウンド」のイメージではない。聞いてる人はマイヤーのラバーだと思ってしまうかもしれない。このマウスピースを「ラバーとメタルの中間」と評してしまうのは簡単だが、筆者にとしてはむしろ「ターボチャージャーのついたラバーマウスピース」と評したい。「マイヤーマウスピース+レガート君」という表現もいいかもしれない。気をてらったようにも見えるが至極真っ当な設計のマウスピースだと思う。ジョディなんかと比べてもさらにダークな音がする。大アバレを期待する変わりもの好きの方からすれば拍子抜けかもしれない。
さて、もう少しパワーを入れて吹いてみると、ここからがこのマウスピースの本領が発揮される部分である。軽い楽器なんかではラバーでは詰まりぎみになる、ハイノートのフォルテシモでも余裕で大量の息を受け入れてくれる。アメリカンなハードブロアーには嬉しい設計だ。メタルみたいな固い音が欲しいんじゃなくて、ラバーなのにしっかり抵抗感があってハードに息を入れたい人にはうってつけで、筆者もノってくると結構ハードにブロウしてしまいたくなるので、非常に頼もしい存在だ。ソフトな領域とハードブロウな領域の境目が極端ではない所が、このマウスピースの使い易い所かもしれない。
近年は「吹き易い」マウスピースが多く出回っているが、軽めの楽器(マーク6やヤマハ他・・・)なんかで、サウンドではなく吹き心地にちょっと重さが欲しい人にはお薦めだろう。
気になるのは金属部分が耳障りな鳴り方をするかどうかだが、筆者のマーク6との取り合わせでは、耳に付くような金属音はあまり感じなかった。楽器との相性もあるだろうから、そのへんは各人確認していただきたい。欠点という程のものではないが、とにかく軽く吹き易いマウスピースや音量を求めない人などには向かないと思う。金属の部分が、息をたくさん入れていくほど金属的に鳴ってくるため、ラバーの部分の設計は普通のものよりかなりダークに設計されているからだ。(フィルバロンのNYくらいはダークである)
<2010年4月>
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